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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第8章:なくしちゃいけない

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小松先生の長いおしゃべり1

 この人は元来頑固なはずだ。

 到着して目の前で鼻歌を口ずさむ玲先生を見てそう思う。


 そして待合室は違和感に満ち溢れていた。

 …そりゃそうだ。

 なんせ俺たちしかいないからね。


 産婦人科医はこの町にほとんどなかったはず。まして今日は月曜日だ。

 本来医者の待合室なんぞはちょっとした井戸端であると俺は認識していたのに。


 あまりに足軽な先生と無人な待合室。

 千種はこの異変に気が付いてないのか?


「幸平、なにきょろきょろしてんの?」

 千種が無邪気に尋ねる。いつの間にか機嫌は急上昇したようだ。


 …人がいないよな。

「ああ。今日は午後から診察なんだって」

 え…。じゃあ今なんでここに。

「なんか特別だって受付てくれたよ?」


 違和感マシマシじゃん。


「先生、急にすみません」

 玲先生にお礼を言うと

「千紗さんから必ずいいことあるからって聞いたもの」

 と不思議な答えが返ってきた。

 千紗さんと玲先生の関係性も俺にはまだ見えてきていない。


 そして、すぐに千種は診察室に呼ばれた。

 玲先生と共に。

 俺、用無しの身分。

 仕方ないので以前行朝さんから借りた本を読み出したのだった。


 ・・・

 いつの間に夢中になり、現実に戻されたのは2時間後。

 もうこんなに経ってたのか。

 本当に久しぶりに本の世界に没入していた。

 千種と出会ってからはこういう機会がなかったように思う。


 千種を心配しないわけじゃないけど、診察室に玲先生と入って行く時の落ち着きなら、無闇な取り越し苦労はいらないと判断したんだ。

 まず現状把握。


 タイミングよく千種と玲先生も戻ってきた。

 お疲れ。そしてお疲れ様でした。

「結果は後日だって」

 朝とは雰囲気も変わり、すっかりいつもの千種だ。


「だいぶ問診が長かったけど」

 と、玲先生。

 一緒に聞いていたってことか。

「幸平くん」

 え…なにこのマジトーン。

「あなた、浮気したらダメよ」

 なんで担任の先生から…。


 なんか錯誤とか誤解とかありませんかね?

 見に覚えがまるっきりないんですけど。


「不順なのはね」

 ふじゅん?不純、不順と頭の中で漢字に直し、どうやら不順と当たりをつける。

「あなたが心配だったからみたい」


 先生によれば生理がこなくなったのはあの出頭要請以来らしい。

 死にかけたもんな、俺。

 あまりに納得できる理由だった。


 でも浮気となんの関係が…。

「あなたを見てるといつか刺されるんじゃないかって心配になるのよ」

 …だから悪いことはなんにも…。

「他人のものを攫いたくなる女なんていくらでもいるの」

 それにしても俺にそんな価値があるわけ…。

「無自覚系主人公にはむいてないわ」

 …ああ、そりゃあどうも。


 ・・・

 その時千種がまた呼ばれた。

 なぜか今度は俺も一緒に、とのこと。


 まさか医者からも浮気するなとか言われたりしないよな?

 冤罪は御免被る、ってことだ。


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