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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第8章:なくしちゃいけない

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先生が付き添い

「アパートができたじゃない?」

 おー二棟な。千種邸と俺の祖母の家だった敷地に冬から工事が入り、建物が建った。

 かたや橋本薫さんの小料理屋を1階に持ち、もう一つは1階に「なかよし水泳会」などの事務所が入ると聞いている。


 建設会社当初こそ進捗を見に行ったりしてたけど…。文字通り死にかけたり、野球の予選があったりして、足が遠のいていた。予定通りなら既に完成しているはずだ。


「それで?」

 促すと結菜はこう告げた。

「今晩お母さんの店でささやかなお祝いあるからね」


 千種に知ってた?と問うと、肯定の首肯。

 そっか。

「おめでとう…だな」

「将来のあたしの城なんて、お母さん言ってるけど…引退すると思う?」

 あのパワフルな薫さんなら生涯現役だろう。


「幸平にはあたしから連絡してってお母さんから言われてさ。千種って朝少し機嫌悪いから」

 そんな情報初耳なんだが。


 当の千種は俺の右腕を抱きしめている。

 珍しく不安定な彼女をこの朝初めて認識した。


「分かった。今日ちょっと遅刻する。千種も一緒だ」

「どうしたの?」

「後遺症の有無の診断」

 あーお大事に、と結菜はすぐに電話を終えた。


 俺は嘘を躊躇わない人間のようだ。


 ・・・

 それから千紗さんに連絡をすると、すぐに出てくれた。

 衒いなく千種の状況を伝える。

「今晩にはそっちに行くけどこれからすぐは無理ね」

 どうする、千種?と千紗さんは電話越しに千種に尋ねる。

 この母娘は存外に仲が良く、互いの信頼が厚い。

「どうしよう」

 母の前では本当に娘らしく、無邪気にその本来の性格を現す。


 そして千種が保護者として母に依頼したのは…。


 北玲さんだった。


 ・・・

 担任を午前休ませてまで召喚していいものだろうか。

 ましてや日本のトップアスリートに。


「すぐ行くわ」

 そしてそれを簡単に受ける日本の巨星。

 ずいぶん贅沢な日本一の使い方だこと。


 まっどうやら新妻の絆とか言う、よく分からない仲間意識がお互いにあるらしく、当人同士に口を挟めない小物の俺は、ただ付き添う他に術がない。


 と言う経緯で…。

 俺と千種は産婦人科の近くで玲先生を待つことになった。

 さすがに去年の経験があるから恥ずかしくなんかないんだからね。


 待っていた間に同級生が数人通りかかったけど、千種に挨拶をする割に俺に視線を合わせなかったのは…理由を先生に聞いてみよう。


 教師ならうまいこと誤魔化して…くれるよね?



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