決勝決着
知ってはいたけど…。
光太郎の球は速く、そして美しかった。
投球ごとにもちろん守備動作には入るのだけど、思わず球筋を追ってしまうのは緊張感が足りないと言われても仕方ないだろう。
6連続三振でボールが飛んでこなかったから暇だったし。
光太郎が降板する5回の裏にファーストからベンチに戻る田所が涙目だったのは、俺と同じでファン目線だったからじゃないだろうか。
一二塁間に打球が来なくてほんと良かった。
・・・
ずいぶんと点差が開き、この後一条が3イニングで失点2でまとめ最終回となる。俺たちも4点を加え8回が終了して16対2。
「堅実にアウトを一つずつ」
新主将の指示は的確だった。だいたいエラーしたら交代なんてふざけた話が試合前に監督からあったけど、ほんとにやりかねないからな…あの監督。
そして俺たちの9回表の攻撃が終わると、なにやら黄田と沢村が話しこんでいた。
なんだろう…とは思うものの、この状況で難しいことは考えたくない。そういうのは主将のお仕事だ。
まあ、川上を最後登板させるかどうか相談してるんだろう。
「幸平。出番だ」
へ?
・・・
投球のウォーミングアップすらしてないんだぞ、なんだそれ。
「川上!セカンドに入れ」
どうやら暑さで沢村も黄田も頭が沸騰したらしい。左利きのセカンド…おまけに練習でも川上がセカンドに入ることなんて…。
……割とあったな。うち部員少ないし。
おまけに田所がまた捕手に戻って、児島訓はファースト。無茶苦茶だろ。
マウンドにいたら、沢村と黄田が来たので抗議を黄田にしようとしたら、隣にいた沢村が
「圧」
とこの世で一番短い一言。そして視線はベンチへ。
釣られて俺も追う。
千種が俺を見ていた。
「…なんだろうな。俺も見たくなった」
沢村の言葉に黄田も追従。
「センターに打たせろ。全部捕ってやる」
「…だとさ、田所」
マウンドに来た田所にボヤく。
「任せな」
おまえも頭が沸いてるだろ。
・・・
右中間に左中間。おまけにフェンス間近。このクソ暑さの中でセンターを思う存分使い倒し、俺たちは創部1年目で甲子園への出場券を手にした。
表彰式のあと俺たちは千種に向かって礼をした。監督は…拗ねてなかったと思う。大人だし。
特に何かをしたわけではないのだけど、この後千種は圧倒的に部内で存在感を増していく。
そしてこの後の甲子園のお話をする前に…俺と千種の周りの変化に触れていこう。
この章の最終話です




