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高良フェノミナン2nd  作者: カラー
第7章:野球の日々

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85/120

流星

 我が校きっての駿足。

 170cm台の身体で温和な性格。田所と同じ中学から進学して、野球部創設の一員。

 父親がかつて社会人野球選手であり、ロゼ太郎らの父に誘われて縁のなかったこの地で、キイロバナの運送が家業で。

 夢は進学か就職からプロ野球入りだと公言している。ぶっちゃけ堅実なのか破天荒なのか微妙だなと思う。

 とりあえず放浪癖はなく(田所)、歪んだ性癖持ちでもなく(沢村…と俺もか?)、ドSな幼馴染もおらず(山形)、おしゃべり好きな主婦でもなく(川上)…要するに作者にキャラ付けを忘れられたようなモブ属性の可哀想な立場な奴。


 その人の人生においては誰もが主人公…と言うある種の詭弁は必要がない。

 場外ホームランで凹んだ家業の自動車に怒る家族思い。その常識人ぶりが、実は非常に貴重なものだと、俺は知っている。


 大事な決勝でその思いは幾許(いくばく)か。

 左投げ左打ちが果たして彼の夢にはプラスなのかどうか。


 瞬間、そんな考えが俺によぎった。


 ・・・

「黄田くん?」

 交代制マネージャーの本日の担当者、千種が代打に向かう黄田に声をかけた。

 いつもはなかよし水泳会のマネージャーをしていて、黄田と千種は同じクラスでありながらあまり接点はないはずだ。2人だけで会話しているシーンの記憶がない。


「女神様」からの声がけに黄田はちらっと俺に視線を合わせてきた。どうやら今は傍観者に徹するべきのようだ。


 仕方なしに黄田は千種に応える。

「おうっ」

 室賀組の児島訓ならひっくり返りそうな無骨な返事をする。

「分岐点よ」

 およそ鼓舞とも違う場違いな言葉を、千種は黄田に放った。


 戸惑いの色をわずかに瞳に宿して、黄田は直接千種に返事をせず、俺に向き

「なんて言うんだ?こういうの」

 と質問してきた。


 分かるわけないけど。

 適当に返しとくか。

「ご託宣だ」


「なんだそりゃ?聞いたことない」


 素振りの真似をしながら打席に向かう黄田。

 相手のエースは初回こそ大量得点を許したものの、その後は完全に立ち直った気配だ。

 なんせ俺も三振したしな。


「傲慢は失敗のもとよ」

 だから考えを読むな、千種。


 数種類のキレのあるスライダーを持つ相手エースが、初球にその中のもっとも本日キレがいいため選んだ球を、黄田はいつものミート重視でない淀みないスイングをした。


 打球は右中間を割り…地方球場のわりにだだっ広いフェンスまで転がった。


 湧くスタンド。

 早くも2塁を回り3塁打…だと誰もが思う当たりで。


 3塁コーチャーの児島が腕を回していた。


 加速のついた黄田はまるで流星のように。

 本塁にヘッドスライディング。

 わずかに黄田の手はベースをかすめ。


 後に「流星」の異名を持つ黄田はこの時誕生した。


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