義兄が増えた
呆気にとられる夫妻。
かたや固まる俺。
俺が絡むと見境のなくなる千種の悪癖がここで出たか。
はっとしたように気が付き、バツが悪いのか千種は横を向いた。
どうすんだ、この場。
…ようし、ここは1000個ある鉄板ジョークの中から取っておきのやつを…。
「それだけはやめてくれ」
日向さんから懇願された。日向さんにジョークを披露したことがあっただろうか?
「アキラから、義弟のジョークだけは止めろと固く言われててな」
…解せぬ。
・・・
それでも何かの役にたったのか、
「あなたのジョークを受け止めるのはあたしだけよ」
妻アピールしたところで、おまえも俺から発せられる前に止めるくせに。
「おまえの嫁さん、葉さんの愛弟子だろ」
洗脳されてただけらしいですが。それが何か?
「同族嫌悪ってやつか?」
ん?あー姉ちゃんと日向さんは確かに似たところあるな。他人を読むところ。
そういうこと?
「だからたぶん美也子と葉さんには相性良くないだろうし、愛弟子も美也子と俺にはあんまり良くないんじゃないの?」
当たってるような、そんなに単純でもないぞと言うような気もするし。
「とりあえず、いとこ」
俺?
「なんか他人行儀だな…。なんて呼んでほしい?」
モテモテの大スターとでもぜひ。
「幸平!」
過去最速のツッコミをありがとう、千種。
「この人なんか幸平で充分です」
え、なんか普通。
「んで、幸平の嫁はなんて呼べば?」
今度は玲先生に尋ねる。
「わたしは師匠って呼んでるけど」
最大級の発言が飛び出した。
俺の巨星がこいつを師匠?
目を丸くした日向さんだけど直後に笑い出した。
「天下の北玲が師匠か」
そいつはいいや、と。
「よし、俺も師匠って呼ばせてもらうわ」
姉ちゃん怒らないよな…?
・・・
「よく分かんねえけど、玲がこんだけ心を許してるの珍しいよな」
ええ…と玲先生は頷く。
「身内認定してやろう」
えー、俺は遊佐晶の義弟ですよ。
「んじゃ幸平は俺にも義弟、だな」
理屈が分からないし、そんなに簡単なものですか?
「師匠もいいよな?」
珍しく千種はめんどくさそうに
「なんでもいいです」
と答えた。
「玲がいるから俺に惚れるなよ」
「幸平の方が何千倍も素敵です」
ちょっと信じられないことではあるが…どうやら人間の相性と言うのは千種にもあるらしい。
どこに起因するかもさっぱり分からないが、たぶん世の中はそういう風にできているのだろう。
めでたくま畏くも俺はまた一人義兄が増えたのだった。一つ救いなのは…玲先生が幸せそうな表情をしていたことだろう。




