ワニの国
荒野に睥睨する武者のように大杉美樹は仁王立ちしていた。
まあ、長身だし。
俺たち4人は美樹の部屋で各自正座させられていた。
いきなり寝込みを襲われて、そいつらがいかにも事後でござい…みたいな雰囲気をしていたら、そりゃなんのつもりだと怒るのは当たり前の話で。
「なんでわたしのところ?」
もっともな詰問。3人が結菜を見る。
「だってあたしの部屋…」
結菜と光太郎が項垂れる。
ほほ~、そういうことか。
「だって千種がいやらしい姿だから…」
「どうして…かな?千種」
いつもは優しい美樹が千種を呼び捨てにする。
「だって幸平が…」
「反省することない?」
はい…と千種と俺は項垂れた。
「幸平くんも光太郎も男子高校生よ?」
「「はい…」」
おとなしく拝聴する結菜と千種。
「猿」
「「はい…」」
間違っちゃいない。
ほらっと自らのパーカーを千種に渡す。慌てて着る千種。
明らかにオーバーサイズなのだが…なんだか可愛い。
「猿1号!嫁に惚れ直すのは後」
ええ…俺?
「御奉行様、せめて言い訳を…」
決死の覚悟で申開きを申状する。
「ふざけてんの?」
まだマイブームの名奉行シリーズが続いてるんですってば。
「わたしと光太郎はただ走りたかっただけにございます。なのにこの女どもが許しも得ずに勝手に付いてきて…」
あたしたちを売る気かと、女性陣2人は俺を見据える。
「そもそもこのお部屋に案内したのは、この金髪でございまして…」
「もう金髪じゃないもん」
「寝櫛も直さずのこのこ付いてきてのは、この鬼でございまして…」
「嫁を鬼って言う方が鬼だもん」
「光太郎、肉親ゆえ御奉行様に申すことがあるだろう?」
光太郎は無言だった。姉に怒られる経験だってないわけじゃないだろうに…。
あ…。
だからこその無言か。
ってことは…。俺の言葉は悪手!
「主犯を早名幸平と認定する」
冤罪が確定した。
・・・
「ごめんなさい」
俺たちは素直に謝った。どう考えても悪いのは俺たちだ。
「ゆうべ、ね」
美樹は口調を柔らかく変えて話しかけてきた。こんな時は…千種にまず語りかける。間違いなく大杉美樹は…愚かではない。
「留学しないかって先生が」
えっ?と反応したのは弟。どこへと問う。
「ワニの国」
「オーストラリア…」
呟いたのは千種。美樹とおまえの中でオーストラリアはワニの国なのか?
「光太郎をお願いね」
結菜に語りかける美樹。
「野放しにすると危険だよ、千種」
え、危ないのは俺だよね?
「黙りなさい、主犯」
…まだ許されてなかった。




