依田日向さんのこと
甲子園が決まった翌日にしてはいろいろありすぎる。
千種の妊娠疑惑から、御地デート、そしてこのお披露目会での日向さんとの邂逅。
全部、千種だ。
ふむ。
「なあ、浮気したい」
右の千種に告げる。
はっ?と目を見開く千種…と玲先生。
「それが千種のためだ」
おまえ、もしかして馬鹿なのか?と日向さんが口にした。わかるけどよぉ…、と。
揉めだした日向夫妻。
んで、千種。
こっちは…平然としてるぞ?
「他の子にたつの?」
日向さんとの密談が聞こえていた上でこの余裕。
また今度な。
「何を今度なのかしら?」
貸し一つで頼む。
「一度くらいは試さないと分からないことなの?」
…まあ一応は。
「二度目はないわよ?」
一回きりの浮気チャンスはいいんだよね?
「ほんとにしたら…」
人生かかってそうだから、な。
・・・
「ところでアキラの弟」
いとこからジョブチェンジをしたようだ。
「あれ、ジャージくんだろ?」
ジャージくん?
日向さんの視線の向こうは光太郎。
ジャージくんかは知りませんけど、やつは大杉光太郎です。
「ふーん…」
光太郎の横には橋本結菜がいて、その話の中には結菜の母薫さんと…。
なぜか監督がいた。本人曰く、真面目な大人の交際…とか言うことで今日この席に?
あー、会場が薫さんの店だものな。
それなら交際相手が来ても不思議はないか。
俺からしたら信頼できるリハビリ主治医であり、我がチームのズボラな監督でもあるんだけど。
「あれ?大前先生がなんでここに?」
日向さんが不思議そうに言う。
それより、なぜ日向さんが監督を?
「なぜってか?」
そりゃまあ。そもそもシーズン真ん中の今、ここにいていいんですか?
「弟よ。俺のことを知らんのか?」
また扱いがジョブチェンジした上に、知らないことを質問された。
ぶっちゃけ野球の予選やらなんやらで世の中のこと知らないんですよ。何かありました?
「大ニュースだろうが。あの賢くて、顔が良くて日本中の野球ファンから愛されてる依田日向さんが」
「ちょっと多すぎない?」
玲先生が甘えた声ながらさすがに突っ込む。
「いいだろ、別に」
その先が気になるんですけど。
「引退、だ」
え…。




