短いデートでも人生が決まる
御地でのミコさんとの会話は短いものであった。俺の高2の夏は野球漬けになりそうで、そしてまた将来を考えなければいけない時期に差し掛かっていることも事実だ。
母も姉も巫女から逃げ出した。
唯一の候補である千種をサナメに絡め取られる前に、姉はこの地から千種を連れ出すべくあれこれ画策してきた。
俺が卒業するまでにあと一年半。たったこれだけの期間で、少なくても1000年以上続いてきた仕組みをなんとかできるものなのだろうか。
そう思うのは俺が死にかけたことが関係するから?
それだけか?
自分一人(千種には関係させたくない)で何が為せるか、などと思うのは傲慢なんだろうか。
御地は暑く静かだ。
横にいて沈黙したままの千種は今どっちの人格なんだろう。
「適当な大学でも行ってから将来のことを決めるのは悪いことかな」
そう千種に問う。
どこにいてもいいと彼女は答えた。
どちらかがどちらかを支える…そんな関係性でなくてもいいはずだ。
だが思索するほどに迷いの森を深く分け入っていく気分になる。
やはり先達はほしい…。
あ…、一人いたな。
「なあ、千種。一人だけの助言で人生決めていいものかな?」
船頭多くして船山に…。
「一族を率いてきたときも一人だったのか?」
馬鹿者、と千種の中のミコさんは答えた。
あの茶番結納の女将の話、実話だったのだろうか。
ままごとのような夫婦とか、世間的な恋人とか、見る人によって俺と千種の仲をどう表すか変わることだろう。
実感としては千種と二人で運命共同体…。
そんな脆弱なイメージでしか、俺は表現できない。
そこに立脚した道標を求めてみる気になった。
この夏休みのどこかで…マリー先生に会おう。
「馬鹿者。遅い」
この古代史のヒロインだって迷うのだ。
サナメを作り出すほどに。
それほどに愛なんてやつはめんどくさいものらしい。
そして…結局のところこの御地でのデートが、俺と千種の人生を決めるものとなった。
・・・
とにかく今夜はお披露目会とも言うべき内々の集まりである。
千種一家に大杉一家。橋本家に…えっと、依田家?と言うか和田家?
姉葉は大事をとって欠席。
新築のビルの1階に「割烹 京」の看板が控えめにあった。
店内に入ると
「勝手にあたしの名前を使わないで!」
と美也子。
「そない言われてもなあ。千年も前からみやこやさかい、あんたん名前ごとき知らんかったわ」
エセ京都弁で煽る橋本薫さん。
騒がしい店内で気になる人たちを見つけた。
大柄なカップルの女性は玲先生。
男性は…依田…日向さん?




