表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地獄耳のジャスティーナ 〜音量調節魔法は意外と結構、強いです!?〜  作者: 彩紋銅


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/33

22護衛任務【ミキャエラ視点】

 ◇◆◇


「いいですか? アラーナお嬢様、悪い男について行ってはいけません。悪くない男と、ほどほどに遊んでください」


 わたしとリビー、そしてナイジェルは、アラーナ・ポレンという商家のお嬢様の護衛の為に、一緒に仮面舞踏会に来ている。


「わかってるわ〜。だったら、あなた護衛なんてやめて、一緒に遊びません?」


「いえ、あの……」


 男好きなアラーナ嬢は、早速ナイジェルに目をつけたらしい。その豊満な体をナイジェルに押し付けている。

 まあ、コイツ顔はいいからね……。


 いや、待てよ?


「ねえ、リビー。ナイジェルにお嬢様の相手をさせれば、色々丸く収まるんじゃない?」


 それなら、護衛も楽だしさ。


「ちょっ、流石にないです! 無欲のチャームもありますし!」


 ナイジェルは、首に下げたているペンダントを見せる。

 無欲のチャーム(お守り)と呼ばれているらしく、ハートにバツ印がついたようなデザインをしている。

 食欲、睡眠欲、性欲などを軽減させるらしい。

 何気に、冒険者にとってありがたい機能を持ったお守りだ。


「ダメです。護衛の練習にならないからね。アラーナお嬢様も我慢して、他のいい男を探してください」


「ちぇー」


 このアラーナお嬢様、男が好きすぎて毎日のように遊んでいるとか。

 しかし、家族は彼女に甘いので咎めることができず、妊娠と病気と、悪い男に引っかからないように注意するだけらしい。

 ちなみに、実家の商家はかなりの金持ちだ。

 貴族籍も得ようと思えば得られるらしいけど、彼女のことがあって躊躇しているとか。


 そんなわけで、仮面舞踏会で護衛するというおかしなことになってしまったのだった。

 ちなみに、ザンの仮面舞踏会は、招待状一通につき四人まで参加できる。

 そして、相応しくない人物は出入り口で弾かれるらしい。

 わたし達は一応、大丈夫みたいだけど。


 私たちの服装は、騎士の礼装に似た正装。

 いざという時の為に全員、ズボン(トラウザーズ)スタイルだ。

 それに落ち着いた赤色の、地味な仮面をつける。


 会場内はまあ、普通の夜会とは雰囲気が違うわね。

 メインホールでダンスもできるけど、大道芸人や奇術師が怪しげな芸を披露していたり、変な生き物(魔獣の子供?)を見世物にしてたり……。


 この香りは何?

 香水とお香と、水タバコ(シーシャ)の匂いが混ざっていて、不快一歩手前だわ。


 その後、アラーナお嬢様がナイジェルと一緒に、行方を眩まそうとするのを何度か止めたりしたけど、お嬢様は結局、他の男に誘われていい感じになっていた。


「ねえ、リビー。今更だけどお嬢様が遊んでいい男と、よくない男はどうやって見分けるの?」


 仮面舞踏会だからみんな仮面をつけてるし、そもそも基準がわからん。


「えーと、無理矢理でなく、複数人で行わない人、らしい。

 あと他人に感染する系の病を持っていない人だね。そういった病気持ちは、そもそも入場できないらしいけど」


「それだけ?」


「まあ、一夜限りだから、お嬢様が楽しめればいいんじゃないかな?」


「そ、そう……」


 曖昧ねぇ……。


 そのうち、お嬢様は一人の男に決めたらしく、二人で休憩室へと消えた。

 休憩室にはベッドが備え付けられているので、まあ、そういうことをするための部屋だ。

 私達は、その部屋の前で待機する。何かあれば踏み込むのだ。


 通常の夜会でも大抵用意されているけど、そっちは本当に休憩用。でも、そういうことをするのに使う人もいるから、用途はあんま変わらないわね……。


 あ、この前の夜会の失態を思い出してしまったわ。

 胸の奥がヒヤリとして、気分が悪くなってきた……。


「ミキャ、大丈夫か?」


 ナイジェルが、私の異変に気づいたらしい。


「……なんでもないわ。それと、ミキャではなく、ミカね」


「ご、ごめん。ミカ」


 半分は、あんたのせいだと言いたいけど、仕事中は我慢するわ。


「ああっ、凄いわ! オウッ、オウッ、オウッ」


「!?」


「!!」


 びっくりした。何? このトドみたいな声は、喘ぎ声?

 ……独特ね。

 どうやらお嬢様の方も、始まったらしい。

 

「さて、今のうちに軽食でもいただこうか」


「それなら、私が何か持ってこよう」


「一人じゃ、無理じゃないか? ミカも行ってあげな。ここはアタシが見ている」


「わかったわ」


 会場はひと段落ついたのか、来た時よりは少し落ち着いた雰囲気だ。

 私たちは、食事が用意されているホールへと向かう。

 ふと、メインホールが騒がしくなった。


「何かしら?」


「確認するかい?」


「ん〜、まあ、何かあったのなら、リビーに報告したほうがいいし……」


 というわけで、メインホールへと向かった。


 ◇


 メインホールはダンスが行われる場所だ。

 そこでは幾つかのペアがダンスを楽しんでいた。


 その中で異彩を放つ二人組。


 紫の髪のナイスバディな女と、黒い燕尾服とシルクハットを身に纏った、黒い仮面の男。髪色は淡い金? シルクハットと仮面と遠目のせいでよくわからないわ。

 二人とも顔はわからないけど、どちらも圧倒的な美男美女オーラを放っているのは確か。


「危険はなさそうね。さっさと、食事を取りに……」


「──ジャスティーナ?」


「え?」


 胸の奥が、きゅっと締め付けられた。嫌な意味で。

 ジャスティーナって、コイツの元婚約者よね? そして、わたしが慰謝料払っている相手……。


「いや、サルビア伯爵家のご令嬢が、こんないかがわしい夜会に来るわけないでしょう?」


「いや、あれは絶対にジャスティーナだ! この私が見間違える筈がない!」


「そうだとしても、もう婚約破棄したんだから、あんたには関係ないでしょ? しつこいと、余計に嫌われるわよ?」


「それは……」


 こいつ、未練タラタラでキモいわね。

 浮気相手だった私が言うのもなんだけど……。

 やっぱりこいつ、ナイわ〜。


 音楽が終わる。


 同時に会場が少し騒がしくなる。

 見れば、紫髪の女の側に別の男がいた。いつの間に?


 ネイビーの正装で、白い仮面をつけた黄緑色の髪の男だ。

 女のドレスと色を合わせているから、女の連れかしらね? こんなところに男女ペアで来るってどういうこと? 普通の夜会だと一緒にいられない関係?


 元々踊っていた男は、黄緑髪の男に女を返すと、花びらに包まれて姿を消した。

 魔法使いだったの? 謎すぎる!


 それから、紫髪の女と黄緑髪の男は一緒にどこかへ行ってしまった。


「──っ」


 ナイジェルが走り出す。


「あ、ちょっと!?」


 仕方なく、わたしもその後を追う。



 ◆リビー視点◆


「二人とも遅いな……。

 まさか、お使い一つできないってことは、ないよね?」


 護衛対象であるアラーナ・ポレンは現在一晩限りの恋人と、お楽しみの真っ最中だ。


 前情報によると、一人の相手と朝までガッツリ愛し合うのが彼女のスタイルらしいので、一度相手を決めたら朝まで休憩室からは出てこないらしい。

 なので、このあとは朝まで部屋の外で待っているだけでいいのだが……。


「う〜ん。これじゃ、護衛任務の練習にはならなかったな……。まあ、依頼料は美味しかったから、いいんだけど」


(私が生きている間に、私の知っていることを全て二人に教えたいからね……)


「だが、せめて飲み物くらい、持ってきて欲しいんだがね〜」


 明らかに護衛対象が狙われている場合は、自分たちが持ち込んだ飲食物以外の摂取は御法度だが、こういった緩い護衛ならその限りではない。

 リビーは亜空間収納鞄(ディメイションバッグ)を手放したことを、少し後悔した。


「どうぞ」


「え?」


 現れたのは、黒い燕尾服とシルクハットを身に纏った若い男。仮面は鴉を思わせるような黒だ。


 そんな男が、果実水が入ったグラスを、リビーに差し出している。


「……一応、お礼は言っておくよ。ありがとう」


 リビーはそのグラスを受け取った。しかし、飲む気はない。


「で? 何か用かい?」


「おや、久々の再会なのだから、もう少し喜んではどうです?」


「アンタは()()()じゃないだろ?」


「まあ、それが彼との契約ですからね。貴女は、まだまだお元気そうで良かったです」


「心にもないことを言うのは、やめてくれ」


 リビーは、彼を睨む。


「いえいえ。私にも感情くらいはありますから。貴女の感情も、()の心も理解できます」


「魔物のくせに……」


「魔物ではなく、魔族ですけどね」


 男は、楽しそうに肩をすくめた。


 その時、少し先の休憩室に男女が入って行くのが見えた。

 黄緑の髪の男と、紫髪の女だ。

 こういった場なら、特に気にすることもない場面だ。


 しかし、見知った顔が、駆けてくるのも見える。

 ナイジェルと、それを追うミカだ。


「あ、ナイジェル、ミカ! ……あれ?」


 ナイジェルは、先ほどの男女が入って行った休憩室のドアを、叩いている。

 ミカはそれを慌てて止めているようだ。


「ええ? 何してるんだ?」


「行ってきてはいかがです?」


「しかし、なぁ?」


「大丈夫ですよ。今宵はこれ以上のトラブルは起きませんから。貴女が護衛しているお嬢さんは、たっぷり楽しんで朝までグッスリですよ」


「……ああ、そうかい!」

 

 ナイジェルが叩いていたドアが開く。


 リビーはグラスを男に押し付けると、早足でナイジェルたちの元へと向かった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ