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地獄耳のジャスティーナ 〜音量調節魔法は意外と結構、強いです!?〜  作者: 彩紋銅


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16会いたくなかった相手と冒険者の先輩①【ミキャエラ視点】

 ◇◆◇


「はあ!? 何でアンタがいるのよ!?」


 わたしは目の前に現れた人物に、取り繕うことなくそう言った。

 もはや、猫を被る気はない。


「ミ、ミキャエラ?」


 明るい青髪と深い緑の瞳のイケメン、ナイジェルが目の前にいた。


 なんでっ!? ここ冒険者ギルドだけど!?


 冒険者ミカとして再出発して数日、初めて受けた初心者向け採取依頼も順調にこなして自信もついてきたというのに、一気に気分は落とされた。

 今日は、初めての討伐依頼を受けようと思ったのに!


「私も冒険者になったんだ。誰も知っている人がいなくて、不安だったよ。良かったら私と組んで……」


 そりゃ、上級貴族の跡取りから冒険者に転身する人は、あんまりいないでしょうよ! 


「……悪いけど、今は誰とも組む気はないから!」


「ミ、ミキャエラ、待ってくれ……」


 はあ、嫌な汗かいたわ。

 パーティーはいつか組みたいけど、あんな奴とはごめんだからね……。


 でも何で、ナイジェルが……。


 ……あれ? わたし、ナイジェルとだけそういう関係になって、他の攻略対象とはどうにもなってない。

 攻略していないどころか、知り合ってもいないから、もしかしてまだ、ナイジェルルートになっている?


 さらに嫌な汗が流れる。


 『恋するカナリア』では、個別ルートと逆ハールートはあるけど、逆ハールート以外で攻略中のキャラ以外と関係を持つと、攻略失敗となりノーマルエンドとなる。つまり、誰とも結ばれないエンドだ。


 え? このままだと、マジでわたし、ナイジェルルートになるんじゃない? 

 それは嫌だわ!!


 それを回避するには、他の攻略対象とそういう関係になる必要がある。

 いや、ここは現実でゲーム通りに進むとは思えないけど……。


 でも、物語(ゲーム)の強制力があったとしたら?


 わたしはゾッとした。

 じゃあ、やっぱり攻略対象の誰かと関係を持たないとダメ?

 流石に攻略する気力はもう無いけど、このままナイジェルとくっ付くのは絶対に嫌。

 そうなると、やっぱり攻略対象の誰かと一晩だけでも関係を持つしかない!?


 いや、一晩だけなら真面目絶倫騎士のクライヴも、頼み込めば協力してくれるかもしれないし、希望は捨てちゃいけないわ……。

 イケメンとそういうことするのは、やっぱり嫌いじゃないし。


「うわ、何だお前ら」


 わたしが何とかモチベーションを上げていると、ナイジェルの声が響いた。


 何事かと振り返ると、ガラの悪い男たちに囲まれていた。

 男たちもたしか冒険者。

 冒険者ギルドで何回か見たことがある。


「兄ちゃん初心者だよな?」


「その割には、結構良い装備してるじゃん」


「おれ達の装備は古くてな〜。丁度新しくしたいと思っていたんだよな〜」


「は? 私の装備を狙っているのか!? サイズが合わないだろう!!」


 確かに男たちはヒョロイ長身と、太った長身と、ムキムキの長身でナイジェルの装備はサイズが合わないかもね。


 って、それはどうでも良いわ。


 アイツ早速、装備カツアゲされるじゃん……。


「あっはは、そりゃちげぇねぇ」


「おれ達の誰も、兄ちゃんの装備は着れねぇよなぁ」


「だがよぉ〜売れば、良い値段になるよな? ソレ」


「なっ!?」


 よく見れば、ナイジェルが身につけているのは、初心者が買えない様な高価なやつだ。

 絶対、親にねだったでしょう?

 そんなの初心者が身につけてたら、そりゃそうなるわ。

 私も初期装備は、親が用意してはくれたけど、身の丈にあったものにしてる。

 そもそも、高価な装備は買えなかったし……。


「そういや、兄ちゃん結構イケメンだな」


「え?」


「コイツも売れば、良い値がつくんじゃないか?」


「そういや、最近男娼の──」


 ちょ、ナイジェル本人も売られかけとる!


 流石に助けたほうがいいか? いやしかし、ここで見捨てたら、私もゲームの強制力から外れるのでは?

 それなら……いや、でも……。


『ミキャエラ──』


 ふと、彼の笑顔が脳裏に蘇る。

 そういえば、ここがゲームの世界だと思い込んでいた時は、彼に出会ってめっちゃテンション上がったんだっけ……。

 今じゃ黒歴史だけど、何で今更……。


「……ああ、くそっ!」


 わたしは踵を返し、ナイジェルの元へと向かった。


 ◇


「ちょっとアンタ達、そいつから離れなさいよ!」


「あ? なんだ、おまえ……」


「ミキャエラ……?」


「わたしは、えー、そいつの知り合いよ! あと、名前はミカ!!」


「は? 仲間じゃないんか?」


「そ、そこは色々あんのよ! とにかく、装備カツアゲなんてやめなさいよね? そいつの装備なんて奪ったら、ケチが付くわ!!」


「ひでぇ言われ様だ……」


「兄ちゃん、何したんだ?」


「そ、それは……」


「簡単に言えば、そいつは婚約者がいるのに浮気するクソ野郎ね」


「兄ちゃん、ソレは最低だな……」


「マジかよ。引くわ〜……」


「ええ!? そこで引くのか!?」


「おれ達、他人の装備は奪うが、浮気はしねぇ質だからよ……」


「一応、娘もいるし……」


「子供がいるのに、カツアゲなんてするなっ!」


「まあ、誠心誠意、謝った方が良いと思うぜ?」


「じゃあな」


 そう言って、男達は去っていった。

 意外と倫理観が高いならず者たちだったわね……。

 いや、カツアゲしてる時点で倫理観も何もないけど。


「良かったわね。無事で」


「コレを無事と言えるのか、君は……」


 ナイジェル達を遠巻きに見ていた人々は、哀れそうな視線から軽蔑の視線へ切り替えて、ナイジェルを見ている。


「アンタの自業自得でしょう? それより、その装備は変えた方がいいわ」


「え?」


「新米冒険者がそんな高価な装備してても、さっきみたいにカツアゲされるだけよ。

 それ売って、新人に相応しい防具にした方がいいわ」


「し、しかし……」


「もちろん強制はしないわ。さっきみたいな目に遭っても、一人で対処できるならね」


「それは、無理かも……」


「なら、言われた通りにしなさいよ」


「わかった。君のいうとおりにする。どこに売ればいいんだ?」


「え? えーと……」


 偉そうなことを言ったけど、私もまだ新米のペーペー冒険者だったわ。

 ちゃんとした値段で、装備を買い取ってくれるお店なんて、知らないわね……。


「お困りかな? お二人さん」


「え?」


 声をかけてきたのは、ワインレッドのローブと三角帽子をまとった魔法使いっぽい見た目の女性だった。

 ブロンドの髪と青い瞳が印象的だ。

 歳は私たちより少し上くらいだろうか。


「おっと、申し遅れた。アタシはリビー。冒険者だよ。

 見ての通り、魔法を主に使って活動している。冒険者ランクはB級だね」


 そう言って、リビーは胸元から、ドッグタグみたいなペンダントを見せる。冒険者の身分証だ。

 確かにB級の銀の冒険者証ね。


 冒険者にはランクがある。

 上からS級、A級、B級、C級、D級、E級。

 S級は他にもSS級やSSS級なんていうのもあるけど、伝説級で滅多にいないので、割愛。

 E級は十六歳以下(未成年)用に設けられたランクで、成人している場合はだれでもD級からのスタートになる。


 それぞれの冒険者証にも違いがあり、S級は虹色、A級は金色、B級は銀色、C級は鉄色、D級は銅色、E級は青銅色となっている。


「いい防具の店を知っているんだ。良かったら案内するよ?」


「それは、ありがたいけど……」


 わたしはナイジェルを見る。


「本当か? ありがとう!」


 あ、ダメだわ。コイツ。


「ちょっと、待ちなさいよ、ナイジェル。もう少し警戒心を持って!」


「え? でも……」


「リビー。あなたを信用しないわけではない。でも、私たちにはあなたを信用する材料が足りないの」


「うんうん。そういった警戒心は冒険者として大事だね。お兄さんはもう少し警戒した方がいいよ?」


「う、肝に銘じます……」


「さて、信用してもらう方法か〜、どうしようかな〜。……とりあえず、どこかの店に入ろうか」


「え?」


「君たち、とっても目立っているしね」


「──え?」


 確かに、周りの群衆は私たちを見ている。


「そう、ですね」


「じゃあ、冒険者御用達の食堂に行こう。個室もあるし、店も冒険者ギルド公認だから、トラブルが起きてもギルドが間に入ってくれるから安心だよ?」


「まあ、それなら……」


 わたしとナイジェルは、リビーについて行くことにした。


 ◇


「ここは利用したことある?」


「わたしは何度か食事をしまたわね」


「私は初めてだ……」


 上級貴族のナイジェルは、冒険者で賑わう食堂に戸惑っている。

 お昼過ぎだから、そこまで混んではいないけど。

 リビーは個室を選択してくれたので、少しホッとできた。


「奢るよ。何食べる?」


「え? でも……」


「決めないなら、適当に頼んじゃうよ〜。すみませ〜ん!」


 リビーはみんなでシェアできる、大皿料理をいくつかと、人数分のエールを注文した。

 エールはすぐに来た。


 なんでこんなに、良くしてくれるのかしら……?









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