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オーディール テイム・オンライン  作者: 結城 縫熊
2.本当の冒険(仮)
41/44

41.回想・1


―――あれから一月ひとつき経った―――


 揚々と太陽が大地を照らし、肌を撫でる柔らかな微風が心地良い。

季節は夏。頬を伝って流れる汗を服の袖口で拭った。

暑い季節に涼やかさを運んで来てくれるのは、母なる海のせせらぎ。

目の前に広がる海に向かって、さぁ駆け出そう。―――という妄想をした。


 憎たらしいほど悠々と輝く太陽は、遥か天上の彼方から地上の大地を焼く。

肌を撫でる乾風は土埃を含んでいて、肌に張り付くように纏わりつき不快指数を上昇させる。夏というか極暑。頬を伝う汗は、湧き水のように留まる事を知らない。そんなところに、海のせせらぎがあるはずもなく―――何処まで行っても広がる広大な荒野。


 そんな荒野を僕らは馬に跨って駆けていた。

チェコと呼ばれるタイプの馬車で四頭の馬に引いてもらって荷物を運搬していた。

 本来ならゆっくり長旅をする前提で運用されるタイプの馬車だ。

チェコを引いている馬を走らせることは、酷なことであまりおススメ出来ないが何事にもケースバイケースということは付きモノだ。

では、何故?馬を走らせているのかと言うと……原因は後方にある。

複数の人影が僕らを追尾していた。


詰まる所、何が言いたいかと言うと追われている、襲われかけていた。

問1:誰に?答:プレイヤーに。問2:何で追われているの?答:色々かな?


何故?他のプレイヤーに追われるハメになった、事の顛末てんまつは一月前まで遡る事になる。


◇◇◇◆◆◆◇◇◇


 ―――一月前―――


 少し厨二臭い言葉を呟いて、転移された場所は見渡す限り続く荒野だった。

輝きを失った宝玉が嵌め込まれた台座が一本だけ建っていて、それ以外は何も存在しなかった。次々と転移して現れたプレイヤー達は、当然の如く混乱に包まれた。


 RPGゲームを攻略して行けば当たり前のように物語の流れで村、町、街、都市が現れ、そこで得られるヒントやクエストなどを足掛かりにして、次の物語に進める。それが、RPGの醍醐味とも言える。けど、此処には、この周囲には家一つ、人っ子ひとりとて存在しなかった。


 冒険の指針ともいえる拠点が存在しなかったため僕らプレイヤーは途方に暮れ、どうすればいいのか解らなかった。ある者は運営にGMコールをして不具合の問い合わせ、またある者は、一旦ログアウトをしてゲームを再起動し、再びログインを繰り返す者。色んな人が色んな事を試したが現状は変わらなかった。


やがて、動揺が騒乱に変わり、騒めくプレイヤーの中で、誰かがポツリと呟いた。

「これだけ人が居るんだし、とりあえず人海戦術でこの周囲を探索してみよう」

その言葉は、騒乱の中においても波紋のように広がって、喧騒を鎮めた。

それを機にプレイヤーは雲の子を散らすように各自が赴くまま散開した。


それから間もなく、一時間も経たないうちに掲示板に次々と情報が載せられていく。


東西南北の四方向、周角を八等分した方位……主に南方向の周角に発見情報があった。


 南東の方角には、湖畔の奥地に続いていた。南の方角には、峡谷の奥地。南西には、森林の奥地にそれぞれ繋がっていた。一方で、北の方角、方位には、本当に何処まで続いているのか想像できないほど荒野が広がっていた。


 その情報を頼りに僕らは、【エピオン】に戻って来た。ノワールの足で有した時間は3時間半ほど掛けて帰って来た。ギルドの掲示板を覗いた。しかし、目立ってクエストが追加された様子もなく、NPCと話しても特に新しいクエストを受ける事が出来なかった。街中を駆け巡っているうちにその日が過ぎて、何の収穫を得る事が出来ずに終わった。


 結局その日は、最後に思いがけない一悶着あったが、この世界に来た時からずっと世お話になり続けている宿屋に宿泊してログアウトした。


 次の日、現実リアルで用事があったため何時もより、かなり遅れてログインした。

 ベッドの上で目覚めると眼前には、小型化デフォルメされたノワールが僕の胸板で鎮座していて不機嫌そうに唸っていた。目を覚ました僕を確認すると前脚を振り上げ、無慈悲に振り下ろした。

(痛っ~~~~~~~~!?)


 彼から受けた数々の仕打ちの中で最も痛烈な一撃だった。

僕はこれをひっそり漆黒ノワール・クローと呼ぶことにした。さて、ヒリヒリと痛む顔の傷を撫でながらなぜノワールが不機嫌だったのかを考えた。

その理由は、単純明快で、彼は空腹だった。

そして、空腹の原因はアップデートによる仕様変更の所為だった。


 今までの仕様では、プレイヤーがログアウトすれば、そのプレイヤーのペットの意識も途絶える。しかし、アップデート後の仕様では、ログアウトをしてもペットは意識を継続して持ち、独自に行動をとり始める。プレイヤーと同じ様に寝る者もいれば、好き勝手に動き回る事が出来るようになっていた。そうした行動を取れるようになったペットは次第に空腹を覚え始める。


 つまり、ペットだけはこの世界で本当に生きることになったということだ。

そして、今日は普段よりもログインが遅れたため、現実世界と仮想世界の時差分だけノワールは時を過ごした。その時間は、約18時間。大体、二食分を抜いた事になる。それは、お腹が空く。彼の怒りは、御尤ごもっともだ。

 次から、こんなことが無いように案を考えながら、定位置の頭上に鎮座しているノワールの空腹を満たすために僕らの食事処:ベテルギウスに向かった。


活動報告に書いた事は少ししか出来ていませんが、第二部を開始しました。


フィールドの位置取りですが、扇子をイメージして頂いて、端の一点の要の部分がエピオンになります。エピオンからフィールドが扇状に広がっていき扇面の部分が第二部のエリアとして解放されて転移されたことになっています。

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