↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双子姉妹と異世界  作者: ひろろ
夏 崩壊編
56/58

タイトル未定2026/09/06 13:58

 

 アイリーンは夏と別れた後、自分の部屋で魅惑した男性を椅子にし、体を撫で回しながら呟いた。


「さて、疫病神と呼ばれている人物がどこにいるか分かったかしら?」


 すると、土下座をして控えていた女が答える。


「はい、アイリーン様。疫病神と呼ばれている女は、現在学園外の図書館におります」


「ふーん、図書館ね。なら、今すぐここに連れてきてくれるかしら? 夏の情報を集めている奴らにも、作業をやめてそちらを優先するよう伝えなさい」


「かしこまりました、アイリーン様」


 女は立ち上がると、その場からすっと姿を消した。アイリーンはつまらなさそうな顔を浮かべる。


「ねぇ、何か楽しませてくれないかしら?」


 そう言いながら、魅惑されている男性の体に淫らに触れ始めた。男性は困惑しながら声を漏らす。


「あっ、アイリーン様……おやめください」


「ふふふ、かわいいわね。……でも、楽しくないわ」


 アイリーンは立ち上がると同時に指先から攻撃を放ち、男性を撃ち抜いた。部屋の中に血が飛び散る。


「汚れたから片付けて頂戴。……あぁ夏、あなたはどんな風に壊してあげましょうか。今から考えるだけで……」


 興奮に体を震わせるアイリーン。どこからともなく現れた数人の配下が、手際よく死体を回収していった。


 同じ頃、拓海もまた自身の部屋で、授かった力を試そうとしていた。

 気絶している生徒たちを縛り上げて近くに待機させると、そのうちの1人の顔をビンタして叩き起こす。


「起きろ」


 目を覚ましたその人物は、混乱しながら尋ねた。


「拓海……大丈夫なのか? アイツは……って、なんで僕は縛られてるんだ?」


「あぁ、僕は大丈夫さ。それよりも、なぜ縛っているかだって? そりゃあ決まっているだろ。力を試そうと思ってね。まずは君で試させてもらおうか、副部長」


 拓海が笑顔で頭に手を差し伸ばすと、副部長は慌てて声を張り上げた。


「拓海、待て! 待て待て、何をするんだ!? いったいどうした、一度話そう!」


「話すことなんて何もないよ。大丈夫、死にはしないさ。ただ人格が完全に壊れて生まれ変わるだけだ。僕のために生まれ変われることを光栄に思え」


 拓海が手に魔力を込めると、副部長はこの世のものとは思えない叫び声を上げた。その凄惨な悲鳴に、周囲で意識を失っていた生徒たちも次々と目を覚ます。


「何が起こってるの!?」


「いったい何が……!?」


 部屋中に恐怖の声が響き渡る。


 拓海が手を離すと、副部長の顔つきが一変していた。声も低くなり、恭しく口を開く。


「拓海様、これからあなた様に忠誠を!」


 そう言って膝をつく副部長を見て、拓海は満足げに笑った。


「成功か。中々に面白い力だ! ならお前に命じる。疫病神と呼ばれている女性を連れてこい。奴は現在、いつもの図書館にいるはずだ。その間、他の奴らも同じようにしてやる」


「了解いたしました」


 立ち去る副部長の背中を見送り、残された者たちは絶望に打ちひしがれる。拓海は狂気的な笑顔を向けた。


「大丈夫さ、君たちは僕に尽くすために生まれ変われるんだから」


 その後もしばらくの間、部屋には苦悶の叫び声が響き渡り続けていた。


 また別の部屋では、1人の人物がブツブツと呟きながら怪しげな作業をしていた。その横で誰かが通信を繋ぐ。


「チルチット様、聞こえますでしょうか?」


 画面が映し出され、チルチットが姿を現した。


「うまく潜入できたようだな。して、何か用があって連絡してきたのだろう?」


「この場所の襲撃について、良き日時が見つかりましたので報告に連絡いたしました」


「ほう? いつが良い?」


「2週間後です。勇者育成本部の最高責任者と学園長が大事な話をするとのことで、この場を離れるそうです。学園長がいなくなれば、戦力はかなり激減するかと」


「ほう。そこの学園長は魔族界にも知られているほどの奴だ。アイリーンには結界の件を頼んだが、あれは保険だ。そのまま殺されるか、戦力を削ってくれればと思っていたのだが……なるほどな。ならば2週間後……いや、その翌日だ。その時にお前が結界を解除し、我々が通れるゲートを作れ。それまでに俺も力を取り戻しておく。アイリーンには何も伝えるな」


「了解いたしました。では、また何かありましたら連絡いたします」


 通信を切ったその人物は、部屋の入口へ向かい、指をパチンと鳴らした。すると、先ほどまでブツブツと言っていた人物が意識を取り戻し、何事もなかったかのように作業に戻っていく。


(さて……まずは面白いことになっているアイリーンと、あの力を授けた人物が狙っている『疫病神』という人物を助け、あの奴隷だった子と『夏』という人物に近づくとしますかね)


 その人物は静かにその場をあとにした。


 そして、それらの出来事が起こる少し前のこと――。

 学園長室では、ママス学園長が怒号を上げていた。


「ふざけるな! そんな話は聞いてない!」


『これは決定事項ですよ。勇者育成本部は“夏”という人物の指導・教育を行うことに決定しました』


「意味がわからない! なぜそのようなことを!?」


『あなたが一番よく分かっているのでは?』


「知らない! それに夏を引き渡すことはできない。一度、話し合いの場を……」


(……どこで夏の秘密がバレた? このままでは利用されてしまう)


 思い悩むママスに、通信の相手は冷淡に告げる。


『ふむ……仕方ありませんね。引き渡していただく方針は変わりませんが、話し合いの場は設けてあげましょう。2週間後、勇者育成本部にて待っています』


 そう言い残し、通信は途絶えた。ママスは頭を抱えて呟く。


「……紅からバレたか? 紅は勇者育成機関からこの学園に編入しているからな。それ以外には考えられない。はぁ、あの時に夏の秘密を話すのではなかった……」


 側に控えていたマルコスが静かにフォローを入れた。


「紅に悪気があったわけではありません。あの機関がおかしいだけです。……しかし2週間後となると、その間は学園が手薄になりますね」


「……確かに。だが、直接会って話さなければならない」


 学園長室には、重々しい空気が流れていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。