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双子姉妹と異世界  作者: ひろろ
冬 バーイン道中編
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第四章:託された印と、船着き場の不穏な視線

 

 翌朝、冬はいつもより早く目を覚ました。隣で眠るクレアの顔を見て、昨夜の出来事を思い出し、そっと自分の唇に触れる。


「……またキスをしたんだ。恥ずかしい」


 顔が火照るのを感じ、冬は両手で自分の頬をパンパンと叩いた。その音で目を覚ましたのか、クレアがのっそりと上体を起こした。


「おはよう、冬。……目覚めの接吻をするか?」


「し、しないわよ! 約束は三日おきでしょう。あんまりしつこいなら、一週間に延ばしてもいいんだからね」


 クレアは慌てて冬に詰め寄った。


「いや、それは冗談じゃ! 一週間は嫌だ。三日、三日おきの約束だ。今の口が滑っただけだから、許してくれ」


 冬は呆れた顔をしながらも、(本当は『あり』かなと思ったけど……それでは私がキスを求めているみたいじゃない)と内心で毒づいた。


「分かればいいの。それより、卵が消えたんだけど……私が寝た後に何かした?」


「妾は何もしておらぬ。盗まれたか? だが妾の結界を破ればすぐに分かるはずだが……」


「なら、どこに?」


 冬が考え込みながら手を顎に当てたとき、クレアが彼女の手の甲にある異変に気づいた。


「冬、その手の甲にある痣は何だ?」


「えっ? ……何これ?」


 そこには、今までなかった不思議な紋様が浮かんでいた。冬が驚愕してその痣に触れた瞬間、何もない空間から突如としてあの白い卵が出現した。


「……どういうこと?」


「分からないが……」


 二人が試行錯誤した結果、その痣に触れることで卵を出し入れできることが判明した。


「出し入れについては分かったけど……肝心の孵化はどうすればいいの? 温めたりしなくていいのかな」


「済まない、妾にも全く見当がつかぬ。ひとまず船着き場に向かわぬか? 知識のある者を探すのが良かろう」


 二人は洞窟を後にし、船着き場へと移動を開始した。その道中、クレアの距離は以前よりも近くなり、二人の空気はより親密なものへと変わっていった。


 一日半の旅路を経て、二人はようやく船着き場に到着した。空腹を満たすため、広場にある店に立ち寄り、外のテラス席で並んで食事を始める。

 その様子を少し離れた場所から、一人の少女が凝視していた。


(んん? 待て待て……なんでこんなところに魔王エリーズ・クレアがいるの? それにあの隣にいる子、すごく仲良さそうじゃない。シャッターチャンス!)


 ククリスは興味津々でカメラを向けた。シャッターを切った写真には、魔族特有の反応がはっきりと写し出されている。

 その瞬間、クレアの鋭い視線が少女を射抜いた。


(……気づかれた? ヤバいかも)


 ククリスは慌ててその場から離れ、人混みへと消えていった。


「クレア? どうかしたの?」


 冬が不思議そうに尋ねると、クレアは表情を崩した。


「いや、何でもないわ。……と言いたいが、もしかして冬、妾を心配してくれた? 待って、これは一大事よ! 冬、今すぐ妾と接吻して!」


 冬は半眼になってクレアを見つめた。


「クレア……やっぱり一週間にしましょうか?」


「ごめん、嘘だから! 謝るから許してくれ!」


「どうしようかな」


「冬がそう言うなら妾にも考えがある! 皆の者、聞くがよい! 昨夜の冬は凄まじい接吻を――」


「うわあああああ!!! 違います、違いますから! クレア、ごめん、もう言わないから!」


 冬は顔を真っ赤にして叫び、周囲の視線から逃げるようにその場を後にした。


 逃げる二人の背中、正確には冬の手の痣を見つめる不気味な視線があった。


「あれはドラゴンの卵を収納する痣……それも、ホワイトドラゴンの。良い獲物を見つけたぞ。旦那たちに連絡しよう」


 その男は影に溶けるようにその場から消えた。

 男が辿り着いたのは、船着き場の一室。そこには左目に眼帯をした大柄な男と、その取り巻きたちがたむろしていた。


「旦那、いい話があるんですが、聞きますかい?」


「ほう、お前から持ちかけるとは珍しい。話してみろ」


 男は下卑た笑みを浮かべて報告した。


「広場の食事処で、今は亡きホワイトドラゴンの卵の痣を持つ女を見つけましてね」


 その場にどよめきが走った。眼帯の男は目を細める。


「それはまた珍しいな。……その痣の中に、卵があると思うか?」


「さて、そこまでは。調べますか? 金次第で動きますが」


「それが目的か。礼だ、受け取れ。だが調べる必要はない。仲間に捕らえさせるからな。……お前ら、その場所へ行って痣を持つ奴を連れてこい。手段は問わん」


 取り巻きたちが一斉に部屋を出ていく中、情報を売った男もいつの間にか消えていた。

 眼帯の男は酒を煽り、不敵に笑う。


「気味の悪い奴だ。だがあの野郎のおかげで、俺たちはこの船着き場を占拠し、船を貸し出す商売でここまで大きくなれた。……その女も、船を使うならここに来るしかない。逃げ道はないさ」


 と。


 

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