第十四章:それぞれの決意と、忍び寄る影
夏は、心の中の鈴に問いかけた。
(出来ると思う?)
『分からない。試してみない事には。それに‥試すにも首輪専用の解呪の呪文を創造しなければならない。すぐには試せないわよ』
(‥どれくらい掛かります? 私はその間何をすればいい?)
鈴は少し考え、
『一度、その不可視の首輪に触れて、本の中に創造魔法で全く同じのを創造しなければ、どれくらいかかるのかは不明よ。不可視の首輪に触れられるか聞いてみて』
夏の沈黙に、ママスとマルコス、シルクはそれぞれ考えを巡らせていた。
(真剣な表情にて何を考えている? それともまだ知らない何かを隠してるのか?)
(まただ、たまにこうして無言になる事があるわね。何か隠してるのかしら?)
(考えをまとめてるの? それにしては‥誰かと話してるような感じがする。聞いてもいいのか?)
沈黙を破り、夏が口を開いた。
「あの、ママスさん‥えっと、その不可視の首輪に触れることって可能でしょうか?」
ママスは真っ直ぐに夏を見た。
「それは出来ると捉えても良いのか、夏?」
「いえ、とりあえずどんな物なのかを手に取って確認したいのです。無理でしょうか?」
ママスはマルコスに目をやった。マルコスは奥のソファに寝かせている眼鏡の女性を抱え上げ、
「彼女の首元にその不可視の首輪がついている。けど夏、絶対に魔力を込めたり変な事はしないように。私や理事長が本人の要望で様々な解呪を試し、失敗して彼女は限界を迎えているから」
夏は頷き、
「分かりました‥では失礼します」
そう言って首輪に触れ、心の中で鈴を呼んだ。
(触ったわ。創造魔法使える?)
『もうやっているし、もういいわよ』
あまりの早さに驚きつつも、夏はマルコスに告げた。
「もう大丈夫です」
ママスが尋ねる。
「それで出来そうかしら?」
「少し時間がかかりそうなので、可能であることが分かれば早めに伝えます」
「そう。ならまた可能であることが分かればよろしく頼む。さて、と言うわけで皆、この事は絶対に、何度も言うが言うな。特に夏の能力が知られれば、利用しようとする輩や悪い奴らが夏を捕縛しに来るやもしれんから」
理事長の言葉に、皆は静かに頷いた。
夏は紅と黒魔と共に教室に戻り、茜は再びシルクとの模擬戦に向かうため、その場を離れた。
教室へ向かう途中、紅が突然夏に言った。
「‥夏、その能力を教会の役に経つことに使わない?」
黒魔が即座に割り込む。
「馬鹿を言うな!! 理事長からも言われただろう、誰にも話すなと。いきなりそれを破るつもりか」
夏も首を振った。
「その教会が何でこの力を探してるのか、理由が分かればいいけれど‥無闇には使えないし話せない。だって‥師匠が言ってた、黒王に無理やり刻印を刻まれた人達がいたと。教会がその黒王達と同じ考えな場合は‥私も刻印を刻まれてしまうから」
紅は少し黙り、
「‥そう。だけど、そうね。うん、分かったわ。この事は話さないでおくわ」
しかし、この会話は教会の人物に聞き耳を立てられていた。後に大変な事件が起こる事を、まだ誰も知らなかった。
一方で、茜とシルクは広い空間にいた。そこでは模擬戦とは呼べない光景が広がっていた。
シルクが一方的に放つ魔法は凄まじい威力で、地面を次々とえぐり取っていく。茜は自身の風魔法で辛うじて防ぐが、防ぎきれずに体中が傷だらけになっていく。
シルクが強い口調で言い放つ。
「これでも、私はまだ半分の力すら出していないわよ。この程度でそのザマなら、強くなるのを諦めたらどう?」
茜はボロボロになりながらも叫んだ。
「嫌だ、強くならないと。主様に恩を返すために強くなるの!」
その瞬間、茜に変化が訪れた。風が茜に纏わりつき始め、シルクの魔法を逆に弾き返したのだ。シルクは弾き返ってきた自分の魔法を相殺し、辺りは爆発の煙に包まれる。
次の瞬間、茜がシルクに迫ったが、彼女はそのまま意識を失い倒れた。
「魔力の使いすぎで倒れたのね。まさか、ここに来て‥風の精霊に気に入られるなんてね。最後の纏わりついたのは精霊の手助けのおかげ。この子はもしかすると、かなり強くなるのかもしれないわ」
シルクはそう呟き、茜の傷を魔法で癒した。
桜はククリスと共に訓練所にいた。
「桜、貴方の能力は昨日の試験で見たけど、生成魔法かしら?」
「そうです。私は自分が見た事のある物を瞬時に生成出来るの。けど、出来ない物もありますけど‥。だから弓は、矢が無くても一瞬で生成出来て放てるという事」
「面白い能力ね‥。なら桜、貴方は遠距離からの支援を中心に鍛えた方が良いかも知れないわね。弓も良いけど、遠距離から敵を狙撃するスナイパーライフル等を使える様になれば皆の援護が更に出来る。」
ククリスが指を鳴らすと、スナイパーライフルが何処かから出現し手渡し
「‥私の昔のお古だけど生成の時間が惜しいから今は貸して上げる。すぐに使用感に慣れる為に的を打つ練習からね」
こうして、それぞれが別々の目標を掲げ、学園生活を送ることとなる。
チルチットの襲撃が起こるまでは‥‥。




