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双子姉妹と異世界  作者: ひろろ
夏 学園編
35/45

第十二章:冷徹なる断罪と、強さへの渇望

 

「私は聞いているの。この状況は何かな? 答えられない?」


 低く、氷のように冷たい声。重圧の主が学園No.2のシルクだと気づいた瞬間、眼鏡の女はその場にへたり込んだ。


「な、な、何でここに……っ」


「答えなさいよ」


 女は震える頭をフル回転させ、咄嗟に言い訳を吐き出した。


「こ、これは、その……そこの女に刻印があるというから、消せはしなくても、隠してあげようとしたんです! でも抵抗されたので、仕方なくこんな状況に……」


 ――パァン!

 乾いた音が響くと同時に、座り込んでいた女の足が「何か」に撃ち抜かれた。


「う、うぐ……うあぁぁああっ!!」


 悲鳴が上がる。夏も、周りの生徒たちも、何が起きたのか理解できず言葉を失った。


「私は嘘が嫌いなの。抵抗されたからこうなった? なら、周りの人たちがなぜ気絶しているのよ。あんたたちが何かしたんでしょう? さあ、答えなさい。私、待たされるのは好きじゃないのよね」


 シルクが指を動かそうとした瞬間、女は狂ったように叫んだ。


「わ、分かりましたから! やめて、やめてくださいシルク様!」


 女は、学園No.5の指示で異世界人を勧誘し、不可視の首輪を付けるよう命じられたことを白状した。最近の「能力奪取事件」との関連も、シルクの冷徹な瞳が射抜いていく。


 そこへ、息を切らした学園No.5の男子生徒が現れた。


「これは……一体何が起きているんだ!」


「あんたが指示したんでしょう?」


 シルクの問いに、No.5は心底驚いた顔を見せた。


「僕が指示した? 何を言っているんだ、心当たりすらない!」


 眼鏡の女たちが

「冗談ですよね、指示したじゃないですか!」


 と詰め寄るが、No.5は冷たく言い放つ。


「誰だお前たちは。僕は君たちなんて知らない。まさか……最近の事件はお前たちの仕業か!? ふざけるな、何が目的だ!」


「捨て駒、ですか……私たちは……」


 女たちが絶望を口にした瞬間、彼女たちの体が突如として激しくのたうち回り、一斉に意識を失った。


「なっ……おい、僕に罪をなすりつけるなんてふざけるな! 絶対に犯人を見つけ出して制裁してやる!」


 叫ぶNo.5を、シルクは冷ややかな目で見つめる。


(……出来すぎているわね。仕込みかしら?)


 しかし、後から駆けつけたサークルの幹部たちが名簿と写真を提示し、


「彼女たちは名簿に存在しない、全く知らない人物だ」


 と証明したことで、現場は混乱に包まれた。


「……確かに。まあいいわ、後は先生たちの仕事ね」


 シルクは、ボロボロになった桜を抱きしめている夏の側へ歩み寄った。


「……ごめん。私がもう少し警戒していればよかった。あなたたちをこんな目に合わせた奴らを、私は許さない。協力できることがあればするから」


 夏は虚空を見つめたまま、静かに首を振った。


「……自分を責めないでください。元は、私が躊躇しなければよかったんです。……シルク、お願い。今は桜と二人きりにさせて」


「分かった。私の寮の部屋を使いなさい。一人部屋だから。落ち着いたら教室においで」


 シルクが指を鳴らすと、夏と桜の姿はその場からかき消え、静かな部屋へと転送された。

 その様子を、茜は拳を血が滲むほど握りしめて見ていた。


(主様のあんな顔……見たくなかった。私がもっと早く気づいていれば……今の私では、ダメだ……!)


「あの……!」


 茜は、立ち去ろうとするシルクの肩を掴んだ。


「私を強くしてください。何でもします。主様に、二度とあんな顔をさせたくない……。だから、お願いします!」


 シルクは足を止め、茜をじっと見つめた。


「……いいわ。少しだけ鍛えてあげる。本当はこんなことしたくないんだけどね。私の手加減、怪我だけじゃ済まないわよ?」


「それでも、お願いします」


「いい返事。じゃあ、今からやるわよ。ついてきなさい」


 茜は迷いのない足取りで、シルクの背中を追った。


 遅れて到着した黒魔と紅は、周囲から事情を聞き、激しい怒りと後悔に震えていた。


「なんだよそれ……ふざけんなよ!」


「勇者の私が、気づけなかったなんて……。夏、大丈夫かしら……」


 二人は沈痛な面持ちで、その場を後にした。


 一方、現場から少し離れた廊下。


 あの「震えていた男子生徒」が、不敵な笑みを浮かべて壁に寄りかかっていた。本人はとっくに身代わりを作り出して逃げ延びている。


「人間にも悪い奴がいるもんだ。あの学園No.5の馬鹿を利用すれば、チルチット様の為になるか」


 彼は別の学生の姿へと滑らかに擬態すると、何事もなかったかのように人混みへと消えていった。



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