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双子姉妹と異世界  作者: ひろろ
冬編
19/45

第三章:魔族殺しの覚醒と、鎖に繋がれた声

 

 城の三階。冬はサザレと共に、隣り合う部屋を探索していた。


 しかし、再びあの不気味な揺らぎが冬を襲う。彼女はその場に座り込み、頭を押さえた。


「何……この感覚。気持ち悪い……」


「冬、大丈夫か! やはり体調が悪いんだな」


 慌てて駆け寄るサザレ。だが、その背後にあの鎧の大男が音もなく現れた。大男は巨大なハンマーをサザレ目掛けて振り下ろす。


「危ないサザレ!」


 冬は痛む体を無理やり動かしてサザレに飛びついた。直撃は免れたものの、冬の足にハンマーの端が掠める。彼女の足は赤く腫れ上がり、冬はその場に蹲った。


 サザレから放たれる雰囲気が一変した。部屋に刺すような殺気が漂い始める。


「あの時の奴か。どうやって近づいたか知らんが……冬を傷つけたお前らは、ここで始末してやる」


 だが、地面から突如として一人の女が姿を現し、冬の体を確保した。


「残念だけど、この女は頂いていくよ。後は……お望み通り、やっちゃえ」


「させるかよ!」


 槍を繰り出そうとするサザレ。しかし、それを鎧の大男のハンマーが強引に弾き飛ばす。


「お前の相手は俺だ! ボケが!」


 衝撃波と共に、サザレの体が後方へと吹き飛んだ。


 一方、レオルドは奥の部屋を独りで歩いていた。


「コソコソ隠れていないで出てきたらどうじゃ? ぞろぞろと引き連れてきているのは知っておる。何が狙いだの?」


 彼が地面の小石を拾って天井へ弾くと、一人の男が姿を現した。


「ほう。気配遮断の魔法に気づいていたか。……その仮初の姿、貴様は何者だ?」


「はて、何の事やら。――人間の皮を被った上級魔族殿」


 レオルドが言い放つと同時に、魔族が間合いを詰める。しかし、レオルドは小太りな体を機敏に動かし、強烈な蹴りで魔族を吹き飛ばした。

 空中で体制を立て直した魔族の背中から、四本の黒い翼が展開される。


「まさか、この姿を晒すことになるとはな。貴様も本当の姿にならねば死ぬことになるぞ。あの女と男も、今頃は大変なことになっているだろうしな」


 レオルドの目が冷酷な光を宿した。


「仕方ないの……全力でお前を始末し、冬を助けに行くとしようか」


 その瞬間、レオルドの体が変貌し始めた。小太りだった体躯は高く引き締まり、顔立ちも精悍に変わる。放たれる魔力は、先ほどまでとは比較にならないほど強大だった。


 魔族が怯え、後ずさる。


「おいおい、冗談だろ……魔族殺しのレオルドリッチかよ!」


「ふふ、逃がすはずがないでしょう。『空間変貌』」


 部屋が突如として異界へと変化する。


「ここは逃走魔法を禁じた空間。私を倒さぬ限り、出ることはできん。死を以て償うがいい」


 冬は女に捕まったまま、地面の中を移動させられていた。自由を奪われ、声も出せない。


「無駄だよ。私は触れた者の自由を奪う。このままあの貴族に引き渡してあげる」


 だが、地中を進む女が困惑の声を漏らした。


「おかしい……いくら進んでも同じ所を回っている感覚だわ。一度地上に出る」


 浮上した先は、何もない広大な空間だった。


「……何だここ? 何もないじゃない」


 女には見えていないようだったが、冬の目には、空間の中央で四方八方から鎖に繋がれた一人の女性の姿が見えていた。


(えっ? あの人が見えていないの? ……また、あの感覚が……)


 冬の頭の中に、直接声が響く。


(妾が見えているのか? お前、まさか魔力がないのか! おい、どうにかしてこの鎖に触れてくれ。お前ならこれを破壊できる。頼む、触れるだけでいいのだ!)


 動けない冬を、捕縛していた女が地面に浮上した。


「どうしたものか……念話も繋がらないし。潜っても同じ場所に戻るだけ……」


 女の手がわずかに離れた。冬はその一瞬の隙を突き、痛む足を引きずって、鎖に繋がれた女性の方へ走り出した。


 しかし、腫れ上がった足が悲鳴を上げ、冬は地面に転倒してしまう。


「無駄な抵抗をするなよ。あんたを無傷で連れて行くのが私の仕事なの。……でも、罰くらいはいいよね?」


 女が冬の腫れた足を、これ見よがしに踏みにじった。


「つぅ……あぁぁぁあ!!」


「いい声。もっと聞かせなさいよ!」


 グリグリと執拗に傷口を圧迫する女。冬は声にならない絶叫を上げる。

 鎖に繋がれた女性が助けようと暴れるが、拘束はびくともしない。


「まあいいわ、これくらいにしてあげる」


 女は飽きたように冬を蹴り飛ばした。冬の体は、転がって鎖の女性のすぐ傍へ。


(大丈夫か!? 妾の鎖に触れるのだ! そうすればお前を助けると誓う。あの上級魔族を殺してやろう!)


 意識が朦朧とする中、冬は震える手を伸ばした。

 その指先が、冷たい鎖に触れた。

 

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