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双子姉妹と異世界  作者: ひろろ
冬編
20/45

第四章:魔王復活と、奪われた唇

 

 冬の指先が触れた瞬間、鎖はパキパキと音を立てて砕け散った。


 しかし、その音を聞き取れない上級魔族の女は、倒れている冬に冷酷に歩み寄る。


「さて、もう一度地面に潜って、出口がないか探してみますか」


 女が冬を抱え上げようとしたその時、拘束から解き放たれた女性が、その手を掴み上げ、凄まじい力で投げ飛ばした。上級魔族の体は遠くへと転がっていく。


 女性は冬に触れ、穏やかに微笑んだ。


「封印され、どれほどの時が経ったか知らぬが、ようやく復活できた。そなたのお陰でな」


 温かな何かが冬の体を包み込み、みるみるうちに足の痛みと腫れが引いていく。

 冬が礼を言おうとした矢先、立ち上がった上級魔族の女が、女性の顔を見て凍りついた。


「えっ? 嘘でしょ? なんで……貴方様は死んだはずでは? なぜ生きているのよ、魔王エリーズ・クレア様!!」


「は? どういうこと……?」


 混乱する冬を余所に、エリーズ・クレアは凛とした声で告げた。


「話してやるが、ちと待て。そこの上級魔族を始末してからだ。……いつから人間にこのような暴挙をするようになった? 妾は魔族全体に、人間に手を出すことは控えるよう通達したはず。貴様はその命を無視した。死を以て償うが良い」


「ま、待ってください! 私たちは貴方様から、人間を支配しろと言われました! 異世界人専用の刻印だって、貴方様が広めたではありませんか!! ……そうか、貴様は偽物よ! 魔王様の偽物よ!!」


 女は四枚の翼を展開し、角を生やしてエリーズ・クレアに襲いかかる。


「……どうやら妾が封印されている間に、大変なことが起こっているようだな。まずは力がどれほど戻っているか、確認しながら始末するとしよう」


 エリーズが踏み出そうとした瞬間、彼女の膝がガクリと折れた。


「この程度の回復魔法で、こうも動けなくなるとは……。あの鎖にどれだけ力を絞り取られたかの」


「……あの、私に何か手伝うことができますか?」


 冬が近寄った瞬間だった。

 エリーズ・クレアは冬の顎をすくい上げると、そのまま唇を重ねた。


「なっ!? 戦闘中に何をしてるんですか!!」


 叫ぶ上級魔族。冬も咄嗟に顔を離し、顔を真っ赤にして叫ぶ。


「な、な、な……何ですか急に! 私の、初めて……じゃなくて、何するんですか!!」


「すまんの。だが思った通り、そなたは妾の絞り取られた力を持ち合わせているようだ。その力を少し唇から吸収させてもらった。……少し待つが良い」


 次の瞬間、エリーズの姿が掻き消えた。

 彼女は上級魔族の背後へと回り込み、反応する暇も与えず地面に押し伏せる。


「あり得ない……反応できなかった!? 本物、なのですか……? なら、許してください! もう二度としませんから!」


「もう遅い。妾の封印中、どれほどの人間を苦しめた? そなたからは人間の血の匂いが染み付いておるよ」


 エリーズの手が閃き、上級魔族の首は無造作に跳ね飛ばされた。


(どういうこと……? エリーズ・クレアは本当に刻印を作ったの? 彼女の言葉を聞く限り、そうは見えないけど……)


 冬が思考を巡らせていると、空間が激しく揺れ始めた。


「妾の封印が解除され、この空間が消滅するようだな。近くの魔族反応の場所へ転移する」


 視界が歪んだ次の瞬間、冬は血の海に男の魔族が倒れている場所にいた。目の前には、変わり果てた姿の男が立っている。


「冬が何故、エリーズ・クレアと一緒にいる……? なぜお前が生きている!! 冬を離せ!」


「……まさか、レオルドさん?」


「ほう、魔族殺しのレオルドリッチか。そこの上級魔族では貴様を倒せぬよな。心配するな、すぐに離す。妾は争う気はない。今の世がどうなっているかを知らねばならん」


 レオルドは武器を構えたまま吼える。


「それを信じろと? お前のせいで異世界人はまともに生きられなくなったんだぞ!」


「レオルドさん、待ってください! 彼女は私を助けてくれたんです。それに……彼女は鎖で拘束されていたのを、私が助けました」


 冬の言葉に、レオルドは苦渋の決断で武器を引いた。


「……詳しく聞いたほうが良いようだな。サザレと合流し、話を聞かせてもらうぞ、魔王エリーズ・クレア!」


「分かった。妾も聞かねばならぬことがある。……それと、冬。そなたと一緒にいないと力を取り戻せんからな、行動を共にするぞ。次はいつキスをするかの?」


「えっ、冗談でしょう!? キスしないとダメなの? 嫌よ……そんなの聞いてないし、しないから! っていうか、降ろしてください!」


 冬は解放されるや否やレオルドの元へ駆け出し、エリーズ・クレアが愉しげにその後を追うのであった。


 

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