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双子姉妹と異世界  作者: ひろろ
冬編
18/45

第二章:城の探索と、語られぬ「神」の正体

 

 城の一歩中へ入ると、そこには重苦しくカビ臭い空気が充満していた。思わず鼻を押さえる私を見て、レオルドが杖を軽く振った。


「見に来るのは初めてじゃが、まさかこれほどとは……。事前に伝えておいて欲しかったものよ。『バリアウインド』」


 その瞬間、私の鼻を突いていた不快な臭いが完全に消え去った。


「……あの、今のは魔法ですか?」


「そうじゃ。風を薄く見えないように体に纏わせ、臭いを遮断した」


「おい、俺には使ってないぞ!」


「ホホホ、お嬢さんとワシにしか使っておらぬからの」


 サザレが「依怙贔屓か」と零したが、その表情はどこか呆れたように笑っていた。

 私たちは部屋を一つ一つ調査しながら移動した。その道中、二足歩行する巨大なネズミや、異様な大きさの蜘蛛に遭遇し、私はここが現実ではないことを改めて突きつけられる。


(夏、大丈夫だよね……? 私は二人に会えたからいいけど。夏、必ず私が見つけて助けるから……)


 戦う二人の背中を見守りながら、私は姉の無事を祈った。


「レオルド、気になったんだが何故ここを買い取った?」


 サザレが槍を突き出し、ネズミの喉元を正確に貫きながら尋ねる。


「気になるかね? 何となく想像はついているのではないかね?」


 レオルドは小太りな体型からは想像もつかない機敏な動きで、蜘蛛の糸を避けながら全ての足を切り落とし、急所に剣を突き立てた。


(二人とも、すごい……。けど、なるほど。動きはああすれば良いのね。把握したわ)


 私は後ろから二人の足運びや体重移動を観察していた。


 その隙を突いて、一匹のネズミが私に飛びかかった。「冬、逃げろ!」というサザレの叫び。


 私は反射的に、先ほど見たサザレの足運びを模倣してネズミの攻撃を回避。武器がないため、拳を握り込んでネズミの眉間に重い一撃を叩き込んだ。


 体勢が崩れたネズミを、サザレの槍が瞬時に仕留める。


「……冬、お前もしかして『能力』を使ったのか?」


「能力? いえ、サザレさんの動きを真似しただけですよ。武器がないから殴るしかなくて」


 サザレは目を見開いた。


(冗談だろ……? ここまでのわずかな戦闘を観察しただけで、俺の動きを完全にトレースしたっていうのか?)


「……次はどうなるか分からない。無理はするな。それと、これを持っていろ」


 サザレは腰の短剣を外し、私に手渡した。


「ありがとうございます。お借りしますね」


 魔物を掃討し、安全な部屋で休息を取ることになった。レオルドが改めて私に問いかける。


「冬、お前さんは何故そこまで動ける? 何体か倒しているのを見たぞ。能力ではないのかね?」


「能力ではありません。そもそも私、自分の能力なんて知りませんから」


 その答えに、二人の顔が強張った。


「自分の能力を知らない?」


「あり得ない……。こちらへ送られる際、能力を授かったはずだ! 違うのか?」


 私は困惑しながら答えた。


「えっ、送られる時に授かるものなんですか? 私は何も言われてないです。あの……『神に近い存在』って名乗る人は、何も言わなかった」


「神に近い存在……? 神に送られたのではないのか?」


「待て待て、そんなイレギュラーがあるのか? 俺が会った異世界人は皆、神から能力を授かったと言っていたぞ」


(あの男……やっぱり嘘だったんだ。目的は何? 能力も与えずに送るなんて、死ねと言っているのと同じじゃない……)


「……だとしたら、尚更、姉の夏が心配です。きっと私と同じ状況のはずだから」


「……確かにな。急ぎこの城の調査を終わらせ、夏探しを手伝おう」


「マジかよ……冬、心配すんな。俺が必ずお前の姉を見つけてやる」


 私は部屋の隅にある、私たちの世界のものと思われる調度品に目を向けた。


「レオルドさん、このお城って……異世界人が住んでいたりしませんでしたか? さっきから私たちの世界の物がいくつかあって」


 レオルドは少し俯き、寂しげに答えた。


「……そうだ。ここは異世界人が使っていた、あるいは刻印を刻まれ幽閉されていた場所だ。ワシが城を買い続けているのは、亡き妻の痕跡が、何か残した物が無いかを探すためなのじゃ」


「そういう理由だったんですね……」


「やっぱりな。なんとなくそうだと思ってたぜ」


 その頃、城のすぐ外には複数の影が潜んでいた。


「間違いない。あの三人はこの中にいる」


 貴族の放った刺客たちが、兵を引き連れて城を包囲していた。リーダー格の男が、茂みに潜む存在へ声をかける。


「コソコソ付いてきているのは分かっている。ペンダントで気配を隠しているつもりか?」


 現れたのは、あの鎧の大男だった。


「ちぃ、使えない物を渡されたものだ。俺もその作戦に混ぜろ。あの白髪の野郎を殺したいんでな」


「なるほど、腕は立ちそうだな……いいだろう。行くぞ、お前ら!」


 凶悪な意思を抱えた追っ手たちが、今まさに城の中へと足を踏み入れようとしていた。


 

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