重ねる
数日後、僕はヒアと一緒の馬車の中にいた。
マルティンさんやイングリッドといった冒険者たち、バウマンさんといった軍属の人たちも叙勲とまではいかないが戦勝祝いのパーティーに招待されたらしく、先に馬や馬車で出発している。
僕とヒアは直接叙勲されるということで、王都からやってきた馬車に乗り込んだ。
馬車の外装も、出迎えの御者の人も、ヒアを迎えた馬車より一段豪華だった。
精霊であるゴモリとフィーも同乗しているが、彼らは外の景色を見るために馬を操る御者と一緒に車外に座っている。
時折聞こえるゴモリのはしゃぎ声、車輪が道の凸凹に乗りあげる音。
それ以外は人の少ない街道を走っていることもあり、ほぼ音がしない。採光窓から漏れる木漏れ日の光に正面に座るヒアの顔が照らされて、いつもより肌が白く、銀髪が輝いて見える。
「……隣、座っていい?」
僕は無言でうなずき、ヒアが立ち上がる前に僕がヒアの隣に座った。
こうして隣に座るなんて、村で小さい頃切り株に二人で腰かけて以来だ。
ヒアと一緒に旅ができて、ヒアと同じ勲章をもらいに行くなんて、夢みたいだ。村を追い出された時のことを思い出す。あの時は永遠の別れになると思っていた。
でも今はこうしていっしょにいる。
軽く目線を横に動かすと、僕を見つめていたヒアと目が合った。
恥ずかしくて、こんなに近くにいられることが嬉しくて、顔が熱くなる。
けれど目は反らさずに、じっとヒアの目を見つめる。
ヒアが側にいてくれるだけで、こんなにも心臓が高鳴ってしまう。
―――もっとヒアを感じたい。
僕は座席からそっと腰を浮かせて、ヒアに顔を近付けた。
だけど揺れる馬車の中だから上手く方向が定まらない。戸惑っているとヒアの手が伸びて、優しく頬に触れる。
ヒアの手は少し冷たくて、すべすべだ。僕もヒアの頬に触れた。
「ヒア……」
「エル…… んっ」
そのままお互い引き付けられるように。唇を唇で塞いだ。
「んぅ…… あっ」
「ちゅ…… ん……」
柔らかく、温もりが伝わってくるヒアの唇。僕たちは感触を確かめるように、何度も何度も唇を重ねた。




