慣れすぎている
後日、バウマン連隊長からあらためて戦闘後の話を聞かせてもらった。
今回の件は精霊使いが鎮圧に関与したこともあり精霊の仕業ということで大部分が片づけられるそうだ。精霊使いの里であるリンツの村には王都の方から管理を徹底させるよう使者が赴くらしい。
第十一連隊だが、精霊の仕業とはいえ王都にいる軍務大臣や軍司令官の命令に反したことは事実なので、エンデ連隊長とウェルス市長が更迭されるらしい。でもすぐに王都から代わりの連隊長と市長が派遣されてくるそうだ。
ヒアは今回の件で近く王都で勲章を授与されることが決まったらしい。ちなみに僕はバウマン連隊長から戦功のあったものに送る「感状」というものを頂いただけで特に王都からはなにもない。
今回は雲が晴れるといった天変地異が起こったわけでもなく、客観的に手柄を立証することが難しかったためのようだ。僕は努力が報われないなんて慣れっこだし、バウマン連隊長から感状をもらえただけで満足だった。
だけど僕に対しての見返りが少なすぎると、それを聞いたヒアはとても怒っていた。
「うー……」
僕はヒアが宿泊している部屋で一緒にコーヒーという黒くて苦いお茶を飲みながら、向かい合って話をしていた。ゴモリは疲れたということで僕の部屋で休んでいる。リンツの村では飲んだことはなかったけれど、コーヒーはこことは別の大陸で発見された飲み物で、輸入されるやすぐに王都や大都市で流通したらしい。
すごく苦いけど慣れればそれが癖になるそうだ。ヒアは近く王都に行き、社交の機会も増えるだろうから慣れておく必要があるだろうけど、僕は行く機会もないのに……と思うと複雑な気分だった。
調度品もヒアの部屋は僕とゴモリの部屋とは比べ物にならないくらい立派で、宿そのものの風格の違いというものを否が応にも認識させられる。
「……私だけっていうのが納得いかない」
「別に今回はけなされたわけじゃないし、いいよ。どっちにしろヒアの協力がなければ送還術を使うのは不可能だったし」
僕はコーヒーに口をつけながら返答する。
やっぱり苦いな。僕の人生並みに苦い。
「……エルは報われないのに慣れ過ぎている。命がけで数千の敵陣に突っ込んで、人型の精霊という伝説クラスの精霊を使役し、送還術で敵指揮官を無力化して双方の被害を最小限に抑えた。エルだけ表彰されても私は不思議に思わない」
「買いかぶりすぎだよ」
僕は苦笑いする。
「そんなことない!」
ヒアは僕の両手を握りこんで、強く否定した。
「エルはもっと自分を誇っていい。自慢していい。高慢になるくらいでいい!」
ヒアが珍しく熱い口調で熱っぽく語ったので、僕はその迫力に気圧された。
でも僕の表情を見た途端、ヒアは悲しそうな顔をして手を離した。
「ご、ごめん……」
まただ。
また、この町で出会った時と同じ顔。
「なんで、そんな顔をするの?」
僕がそう聞くと、ヒアは不思議なものを見るような目で僕を見た。




