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水師営の会見

目を開くと、再び僕は硝煙の香りが漂う戦場に立っていた。

 目の前に第十一連隊指揮官がいて、周囲には兵たちがまだ残っている。さっきと何一つ状況が変わっていないようにも見える。

 焦りを感じるが、疲労がひどくて鉈を構える力すらろくに残っていなかった。

「ここは…… それに貴公は一体、何者だ? こんなところで我々はなにをしている?」

 指揮官の目に光が戻っており、言葉遣いもはっきりしていてさっきまでと明らかに様子が違う。どうやら送還術は成功したようだ。僕はどっと肩の力が抜けるのを感じた。

周囲の兵たちの様子もよく見ると、指揮官と同じように変わっていて、構えた小銃を不思議そうに眺めたり、周囲をきょろきょろと落ちつかなさそうに見まわしていた。

「うー」

「ここは……?」

「一体何を……?」

何人か、頭を抱えながらふらふらしている。どうやらゲゼルシャフトに憑かれていた時の記憶はないらしい。

僕は成功したという合図の青色の信号弾を、フィーに頼んで空高く投げ上げてもらった。

ゴモリの話によると、送還術が成功してもドゥンケルの時のように必ずしも雲が晴れたりするわけではないそうなので、分かりやすい合図を頼んでおいたのだ。

花火のように大きい爆発と鮮やかな光の信号弾は遠くからでもよく見え、しばらくするとバウマン連隊長が各中隊に指示を出したのか、戦闘指揮所である連隊本部に近い場所から戦闘がおさまって、小銃の発砲音や馬蹄の響きも聞こえなくなる。

「よかった……」

 僕は力が抜けて、膝をつきそうになったけど、脇に手が入って僕を支えてくれる子がいた。

「とりあえず、よくやったの」

 イングリッドだった。

「あなたが送還術とやらを使って、いきなり敵兵の動きが止まったの。後数秒遅れたら戦線が瓦解してたかもしれない、感謝するの、あなたは地面をはいずるウジ虫からは卒業できたの」

「すげえな!」

 体中にヴォルフの返り血を浴びたマルティンさんが僕の肩をばしばしと叩いてくる。

「精霊使いじゃねえ俺でも魔力を感じたぜ! なんつーか、体中の皮膚がぞくぞくする感じだった。戦場で感じる殺気と似ているが嫌な感じじゃねえな」

「あ、ありがとう」

 僕は喋るのも億劫になってきた。魔力を根こそぎ使ってしまったせいか、気持ち悪くて体がだるい。ゴモリやヒア、フィーも状況は同じようで馬に捕まるかよたれかかってぐったりしている。

「あなたへの説明はしかるべき人が行なうと思います…… それより、少し休ませていただけますか?」

 僕は目の前の第十一連隊指揮官に言ってから、ヒアたちと一緒に馬を手近な木につないで木にもたれかかる。 そのまま、意識がゆっくりと薄れていくのを感じた。



 目が覚めると、両軍の兵がまとまって整列していた。特に第十一連隊はさっきまでのバラバラの兵たちからは想像もつかない一糸乱れぬ隊列だった。

「兵の錬度でいえばドルトムントの軍より上かもしれないねー。バラバラに動いてくれて本当に助かったよー」

 目が見えるようになったらしいゴモリが、僕の隣で第十一連隊をそう評した。

 どうやら僕が寝ていた間に互いの指揮官が兵をまとめて、停戦したらしい。今は互いの指揮官が状況確認とこれからのことを話し合うそうだ。

 お互いの兵が向かい合って整列し、互いの指揮官を護るようにしているのは万一の際に対する備えだろう。

 敵指揮官とバウマン連隊長がお互いの兵の中から前へ歩み出て、自己紹介する。

「第十一連隊連隊長、ハインツ・エンデだ」

「ドルトムントの第八連隊連隊長、ライナルト・バウマン」

 互いに敬礼を取り、準備されたテーブルに向かい合わせに着席する。二人の後ろにはそれぞれの兵が二人ずつ、お互いの連隊長を護るように立っていた。

 それから突っ込んだ話が始まったが、正直専門的な法律の話でよくわからない。

「帰るぞ、のろま野郎、なの」

 イングリッドが僕の服の裾をくいくいと引っ張っていた。

「これ以上は軍の役目。冒険者の仕事はもう終わった、の。さっさと帰って報酬をいただいて、貴様はその租○を満足させてやるの」

「こら!」

 マルティンさんがその巨大な拳でイングリッドの頭を小突いた。小突いたといっても慎重さを考えればイングリッドにとっては空から岩石が降ってきたにも等しいだろう、イングリッドは涙目になってうずくまる。

「すまねえな。こいつは口が悪いが、悪気はねえんだ。ただ、ちょっとわけありでな」

「いえ、気にしてませんから……」

 結構深いわけがありそうだけど、出会って一日の僕が踏み込むのもためらわれたのでそれ以上はなにも聞かないことにした。


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