嫌いになったのかな
「びっくりした…… なんだか意識が遠のいたような、一瞬ふらっとしたような、変な感じだった」
「意識を共有されたことがわかるのはさすがだねー。普通の生き物じゃ気がつかないよ?」
ゴモリが微妙に上から目線で感想を言う。でも見た目は子供だし、中身は僕やヒアよりずっと年上だからムカつかない。
「……一時的に意識を奪う力?」
「あなたのお父さんが白虎を従えてるのが見えたよ。すごい精霊使いなんだねー」
「……なんでそれを? エル、あなたが教えた?」
僕は首を横に振る。父親の精霊を言い当てられ、ようやくヒアがゴモリを見る目を改めた。
白虎について、普段の餌や仕草など、普段から見ていなければわからないところまでゴモリが言い当てたのでようやくヒアも納得した。
「なんていう能力…… それに人型の精霊なんて初めて見た」
「へへーん。すごいでしょー!」
ゴモリは胸を張ってドヤ顔をする。
すると、身長の割には大きすぎる胸が強調されてキモノの前が開いて、白い二つのふくらみが……
「エル?」
「ご主人様―? どうかしたのー?」
ヒアからは怒りを、ゴモリからはわかっていないという感じが伝わってきて僕は慌てて目を反らした
。
「ところで、ヒアはこれからどうするの?」
露骨だと思ったけど、僕は取り敢えず話題を反らした。
「……それは私の台詞。この子を見せればエルはリンツに帰れる。一度私が引き返して報告してきてもいい」
そうは言うけれど、僕はもうリンツの里に帰りたいという気持ちはなくなっていた。ゴモリを召喚した直後は彼女を見せびらかしたいという気持ちも大きかったけれど、こちらの生活のほうが恋しくなってきた。
僕を追放した時の村人たちを思い出す。僕を蔑み、迫害し、誰ひとりそれを止めようともしない。あんなところに戻りたくはない。
見返すためだけに、あんな人間のいる場所へ戻りたくない。
「いまさら戻るのもなんだし…… しばらくはこっちで暮らすよ」
でもヒアがいれば帰りたくなるかもしれない。だからとりあえず、ヒアがボールシャイト家での務めを果たし終えてリンツの村に帰還するまではこちらに滞在しようと思った。
だけど僕がそう告げると、ヒアは肩を落として少し涙目になった。
「ど、どうしたの? 何で泣くの?」
「……なんでもない。目にゴミが入っただけ」
そうは言うけど明らかになんでもないわけがない。フェアリーも心配そうにヒアの周りを飛び回っている。でもヒアが踏みこまれたくないと思っている風なので、僕はそれ以上話題にしなかった。
「じゃあそろそろ、私は招かれた貴族の屋敷へ行かないといけないから…… 名残惜しいけど」
そう言って、ヒアは席を立とうとする。その態度に僕はまた違和感を覚えた。
おかしいな……
なんでまた会えたのにこんなにあっさり別れようとするんだろう? 僕が嫌いになったのだろうか?




