すっきりしない
夕暮れごろ、ギルドへ戻ってくる。
夕方になると一日で終わる依頼の報酬を受け取る人や、翌日朝早いクエストの説明を受ける冒険者が多くいるため、朝に比べて大分ごった返している。
僕とドルヒはフリーダさんに言って、依頼が終わったことを報告した。
ドゥンケルのいた場所に別の人が行けば、すっかり雰囲気が変わった湖の様子ですぐにそれとわかると思うと伝えると、後日人をやって確認しますと言われた。
それまで成功報酬はもらえないそうなので、エンテがドロップした肝を換金してもらっうと牙や毛皮と合わせて3万ニ―ロと結構なお金になった。
でも去り際のドゥンケルのことを思い出すと、素直に喜べない。
「初仕事で初成功、しかも大きなクエストですよ? 成功したんですよね?」
フリーダさんはややいぶかしげな顔をして僕たちを見つめてくる。
眼鏡の奥の瞳が何かを探るように動いていた。
「……疑うんですか」
思わず、とげとげしい言葉が口から漏れる。
「す、すみません……」
フリーダさんが申し訳なさそうな顔をしたのを見てやっと、僕は自分がしたことに気がついた。
「まだ報酬を受け取っていないから実感がわかないんでしょうか?」
フリーダさんは、僕たちが嬉しそうな顔をしていなかったことを疑問に思ったらしい。
でも、フリーダさんに説明できることでもないし無用の心配をかけたくない。
「いえ、初仕事だったしこのドルトムントに来たばかりで疲れたんです」
よくあることなのか、フリーダさんはそれで納得した様子だった。
日も落ちて建物の西側が茜色に染まり始めている。そろそろ今日の寝床を探さないといけない。町にあるっていう浮浪者の収容施設を探そうとしたけど、お金に余裕はあったし送還術でかなり魔力を使って疲労が溜まっていたので宿に泊まることにした。
宿はフリーダさんが紹介してくれた、駆けだしの冒険者たちがよく使う宿だ。
一泊二食付きで3500ニ―ロとかなり安い。けれどその分ベッドの用意も部屋の掃除も自分たちでしないといけないし、一人部屋なんてもちろんない。
普通は四人部屋だけどたまたま二人部屋が空いていたので僕とゴモリはそこに泊まることにした。食事や風呂も手早く済ませ、僕たちは早々とベッドに入ってランプの明かりを消した。
明かりを消すと木製の鎧戸の隙間からうっすらと月の光が差し込んでくるだけのほぼ真っ暗な空間ができあがる。
「ゴモリ……」
「なに、ご主人様?」
僕たちは向かい合わせのベッドでお互いの方向を向いて寝ていた。
「依頼は成功したけど、なんだかすっきりしないね」
送還術とか、ドゥンケルのこと。そしてまだ残っているという魂だけの精霊たち。
「そーいうもんだよ、ご主人様」
闇夜の中でもわかるその達観した表情は、ゴモリが僕より遥かに長い年月を生きてきたことを示している気がした。




