表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/46

限界

ヴォルフの毛皮と牙を買い取ってもらったあと、僕とゴモリはドルトムント近くの森へ入った。川が森の中を流れているためか霧が良く立ちこめる森で、ネーベルの森というらしい。

ヴォルフの毛皮と牙を合わせて三万ニ―ロとなかなかの値段で売れた。錬金術師や鍛冶師が加工して毛皮は防寒着や防具の材料に、牙は矢尻や刃物の材料になるらしい。


「ネーベルの森には昔から精霊が住み着いていまして。近寄らなければ安全なのですが、やはり精霊が野放しというのも問題がありまして、その解決に当たっていただきたいのです」


 とフリーダさんの依頼を受けて僕とゴモリはネーベルの森までやってきていた。森に入りしばらく歩くと川が見えてくる。

森の中を流れる川は水も綺麗で、木漏れ日を反射する水面の上や中を鳥や魚が泳いでおり牧歌的な風景を醸し出している。

 川の近くは涼しい風が流れ、ここまで歩いてきて汗ばんだ体を冷やしてくれた。

 水面に屈んで水をすくって飲んでみると、水特有の甘さが喉をうるおしてくれた。ゴモリも小さな手で水を何度もすくっては、雪のように白い喉を上下させている。

「いい森だね」

「そーだね、ご主人様。ここで昼寝でもできたら最高だったんだろうけどー」

 ゴモリはそう言って顔を引き締めた。

 水面を泳いでいた鳥たちが一斉に羽ばたき、水面にいくつもの輪を作って魚たちが逃げてゆく。

その後に、彼らがいた空間に一羽の鳥が降り立った。

 一見鴨に似ているが、目は血に染まったように赤く輝き、扁平上のくちばしの隙間からは猛獣のような牙がのぞいている。

 鴨のティーア、エンテ(ente)だ。僕とゴモリを見つけると明らかに敵意をむき出しにしている。

 どうやって仕留めるか?

 僕は投げナイフとか弓矢は持っていない。かといって近付いて仕留めようにも空に逃げられたら追いかけられない。

「こっちに跳びかかってきたところをカウンターで仕留めるかな……」

 僕は頭の中で作戦を立て終わると、腰から鉈とナイフを抜いて構える。

 だがゴモリとエンテの目が合った途端に、エンテはぽちゃんと音を立てて水の中に沈んだ。


「僕がいる必要もなかったね…… 僕ってひょっとして、いらない子?」

 エンテがドロップした肝臓を木の葉で包んでザックの中に入れた後、僕は少し愚痴っていた。

「そんなことないよー」

 ゴモリはいつもの明るい調子でなく、真剣味を帯びた声でそう告げた。

 そのまま僕の耳元に口を寄せて囁く。

「私の能力は前も言ったけれど射程が短いし、使っている間は私本体のコントロールが疎かになるの。ソロでは滅多に使えない。それに私が体術を使っているのを見たことがないでしょ? 能力でかたを付けられるのもあるけど、大した腕前じゃないからなんだ」

 耳元に口を寄せたせいで匂う、ゴモリの砂糖菓子みたいな女の子の香り。ドキドキを必死に我慢しながら僕はゴモリの言葉を飲みこんでいた。

「なんでそんなことを……」

 それはゴモリの弱点だ。弱点はそんなに簡単に他者に明かすものじゃない。

「ご主人様に、人間にありがちな邪念がすごく少ないからかな? 平たく言うとすごくいい人だっていうこと。これまでの歴史で、人型の精霊だと悪用しようとする精霊使いも多かったんだー」

 ゴモリは遠くを見つめながら、悲しげにつぶやく。ゴモリの親しい人がそうやって悪用されたことがあったのだろうか?

「だからご主人様のもとに来る時も、里の仲間に随分と反対されたんだよー」

「そこまでして、どうして……」

「そんなの、簡単だよー」

 ゴモリはいつものように無邪気な声で、とびっきりの笑顔で言った。

「あんなに努力して、周りの人に馬鹿にされてもあきらめなくて、でも認めてくれる人が少ないけれどいる。そんな人の所に行ってみたいって、思ったからなんだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ