不敵なMoon paladin
この展開にルーナの兵士達は、最初こそ士気が高かったが、勝てるわけないという気持ちから、徐々に戦意が削がれていく。
そんな情けない兵士達の姿を、上空で待機している戦艦から眺め、苛立つ者がいた。
「嘆かわしい。それでも女王陛下のために尽くす兵士か」
『押されてるみたいだな。手ぇ貸そうか? 親衛隊長さんよ』
前触れもなくかかってきた通信に、親衛隊長と呼ばれた男はキツい口調で応じる。
「余計なお世話だ。それより、河合恋と田中瞳がここにいるとは聞いていないが?」
『そいつはすまねぇ。俺もあいつらは大阪にいるもんだと思ってた』
「ふん、どうだろうな。まぁいい。こうなってしまった以上、私も出る他あるまい」
男はそう言うと、出撃準備を始める。
『本当に手を貸さなくていいのか? あんまりなめてると、痛い目見るぞ?』
「私に構っているヒマがあったら自分の仕事をしろ。この作戦の成否によって、今後の情勢が変わってくるのだからな」
『へいへ~い』
軽薄な口調でそう返すと、通信をかけてきた人物は通信を切った。
(まったく、陛下も何故あのような男を……)
「ブリッジ、聞こえるか? 出撃する」
『了解』
オペレーターからの返事を聞いた男は、深く深呼吸し、己に活をいれると、騎士の姿をした愛機・ムーンパラディンで出撃した。
「え? レーダーに反応? 上から!?」
空から降下してくるのをレーダーが感知したことで、3人はようやく敵が迫ってきていることに気付いたが、僅かに遅かった。
「遅い! サンダーバースト!」
親衛隊長は、ムーンパラディンの唯一の得物である槍の先が鎖付きの錨となっている武器・アンカーランスの先端から放電し、ブラッディに電撃を浴びせた。
幸い、中破寸前で済んだが、不意を突かれた形となったことに、攻撃を受けた恋も側にいた瞳と優花も面を食らう。
「誰、あんた!?」
「お初にお目にかかる。私は月面帝国ルーナ親衛隊隊長、ディック・ダグラスだ」
聞き馴染みの無い名前に、3人は違和感を覚える。
「知らなくて当然だ。君達歴戦の戦士に比べれば、私は新米みたいなものだからな。だが、だからといって侮ってもらっては困る」
「それはさっきの攻撃を見ればわかるよ。けどね、そっちこそなめないでよね!」
そう言うや否や、優花はムーンパラディンに蹴りかかったが、その蹴りは、槍から分離した錨に絡み付かれて、止められてしまう。
「な!?」
「『侮るな』と、言ったはずだが? はーっ!」
ディックは不敵な笑みを浮かべてそう返すと、アンカーランスを振り回して、優花が乗る蓮華を地面に叩きつけた。
「いっつー……」
「優花、大丈夫?」
「平気だよ、このぐらい。とはいえ、言うだけはあるかも。あいつ、けっこう強い」
「みたいだね。こりゃ、気を引き締めてかからないと」
ここまでの攻防からルーナのエースパイロットだと判断した3人は、警戒心を強める。
そんな彼女達を前にしても、ディックは余裕の態度を崩さなかった。




