許されたSin
戦闘終了後、基地に帰還した冴月は、コックピットから降りて、田中親子と対面した。
実に24年ぶりとなる再会。
しかし、死んでいた冴月が生きていたという非常識さや、元とはいえ犯人と警察という複雑な関係のせいか、こうして面と向かって顔を合わせると、何から話したらいいかわからなくなってしまう。
こういう微妙な空気が流れている時は、かえって初対面の人間の方が話しやすいというものだ。
「冴月って言ったね? まずは基地を守ってくれてありがとう」
「礼には及びません。友達や優花さん達を助けたかっただけですから」
「そのことなんだけどさ、ガデセリナって軍の試験機で、言うなれば最高機密なんだよね」
新型なのだ。そのくらいのことは想定している。
「だと思いました。でしたら、拘束しますか? それともここで射殺を?」
「その必要はないよ」
そう言って、話に割り込んできたのは、避難していたシルヴィオだった。
「シルヴィオさん。無事でよかったよ」
「皆さんのおかげです。心よりお礼申し上げます」
シルヴィオは深々と頭を下げた。
「それで貝原さん。『必要がない』とは?」
「河合准将はこれまで、君と同じような境遇の人間の面倒を何人も見てきている。だから、こういう時の対応には慣れているんだ」
「そゆこと。てわけだからさ、冴月。あんたは本日付けで特別軍兵の少尉ってことで。いい?」
特別軍兵。成り行きでパイロットになってしまった人間の学校生活や本業といった日常を保障しつつ、非常時には戦闘に参加してもらう特別制度である。
制定には恋と、優花の父親である田中翔馬が関わっている。
「私はかまいませんが、皆さんはいいんですか? 先程も言いましたが、私は凶悪犯ですよ? 昔のことも含めて、逮捕されて然るべきでは?」
「そこんとこどうなの? 優花?」
冴月の罪について恋が尋ねると、優花は首を横に振った。
「昔の事件は被疑者死亡で片付いてますし、今回のことは、寧ろこっちが救われたからノーカンです」
「優花さん……」
「それとも、冴月さんには地獄の罰は温かったですか?」
優花の意地悪な聞き方に、冴月は思わず苦笑する。
「そんなことないよ。肉体のみならず、尊厳までも蹂躙され、死ぬことさえ許されない無間の責め苦……あんなのはもう2度と味わいたくない。それこそ、死んでも、ね」
「だったら、これ以上はもう言いっこなしってことで。ね?」
こんな風に許されては頷く他ない。
罪を償った犯罪者を軽蔑することなく認め、持ち前の優しさで更正を促し、絆を結ぶ。それこそが、推理力にも勝る優花の最大の武器だ。




