女神のFirst battle
その動きは、すぐに戦場にも知らされた。
「親衛隊長! 基地の格納庫から熱源反応が!」
「基地からだと? まさか!」
戦闘していた全員の注目が集まる中、女神の名を冠した機体が、初めての戦場に立った。
「ガデセリナ……どうして?」
「私に聞かれたって、わかんないよ」
誰も乗るはずがない機体が動いていることに、敵も味方も戸惑っている。逆をいえばそれは、冴月にとって攻撃をしかける大チャンスでもある。
冴月は先手必勝とばかりに、拡散溶解グレネードランチャーを発射。装甲が溶けて脆くなったところに、すかさずガトリングライフルとホーミングミサイルをお見舞いする。
これには、ムーンもひとたまりもない。あっという間に小隊1つ分が撃墜される。
「くっ! 誰だか知らんが、敵であることには違いないようだ。当初の目的にはあれの奪取することも含まれていたが、やむを得まい。各機、応戦しろ! こうなってしまった以上、破壊してもかまわん!」
「りょ、了解!」
ディックからの命令を受けて、一般兵達はガデセリナにビームを撃ったが、それでやられては新型の名折れ。
冴月は巧みな操縦技術でビームを回避しながら、手榴弾とダガーを投げて切り込み、対艦刀で次々と両断していく。
この一連の動きに、両陣営はもちろん、パイロットである冴月自身も驚く。
(この機体、意外に小回りが利くし、何より速い! こんなに武器を積んでるのに、どうして?)
「ちょっと! ガデセリナに乗ってんのは誰!? いいかげん答えなさいよ!」
流石に黙って見ていられなくなったようだ。優花がガデセリナに呼び掛ける。
「あ、ごめんなさい。その声、優花さんね?」
「え? 嘘……? 冴月、さん?」
「うん。信じられないだろうけど」
2人に面識があるのは当然である。何故なら、例のホテルでの事件で冴月の犯行を暴いたのが、何を隠そう優花なのだから。
ちなみにその現場には、当時、大阪府警本部長だった瞳もいた。
「そりゃそうですよ! 死んだはずなのに、どうして!?」
「私にもわからない。それを知ろうと、色々探ってはいるんだけどね」
久々の再会で積もる話もあるだろうが、こうなると敵だけでなく、初対面の恋も蚊帳の外となる。
「えっと、私だけ初めましてなんだけど、優花の知り合いか何か?」
「まぁ、そんなとこ。【セブンスター】っていう犯罪組織のメンバーで、テログループ・【EDEN】の元工作員。あぁ見えて修羅場をいくつもくぐってきてるよ」
それはさっきの戦いぶりを見れば、納得というもの。
ただ、そんな凶悪犯が味方になるというのは、俄に信じられない話だが。
「恋さん! 冴月さんなら大丈夫。信用できるよ。私が保証する」
「いいの? 優花さん。私は殺人犯でテロリストなのに」
「それはそうですけど、冴月さんは私欲で人を殺してたわけじゃない。任務だから殺してたし、そんな自分にずっと苦しんでいたことを、私は知ってます」
「……ありがとう」
罪を憎んで人を憎まず。優花の寛大な心に、冴月は感謝の言葉を呟く。
「お母さんもいいよね?」
「モチのロン! 断る理由なんてなし!」
「2人がそう言うなら、頼りにさせてもらうけど、新型で不慣れだと思うから、あんまり無茶はしないようにね」
案じてくれた恋の言葉に了解した冴月は、期待に応えるべく戦闘を再開し、3人は初陣であろう彼女のサポートをすることにした。




