第一章13『瘴屍(しょうし)の力』
「覚えておくと良い。ゾンビは『祝福』の一つ、『回生』を毎日一日一回まで使えるんじゃ。じゃから、ゾンビを確実に殺す方法は一つ。一日の間に二度殺す、じゃ」
「なるほど。確かに単純だな……」
アイゼンの前置きの通り、確かにカラクリは単純。しかし、単純ゆえにその難易度は高い。
一度ですら倒すのが困難な相手を二度倒すとなると、何か策を考えなければ無理な話だ。ロンとレックスの二人で一人のゾンビを相手するならまだしも、一対一は正直無理だ。復活されると実質一対二になる。ーーあの強力なチーフを休まずにもう一度倒せなど言われても、正直できる気がしない。
「それともう一つ、月に関してじゃ。どうやらゾンビは、皆等しく『月光の加護』という『祝福』を持っているそうじゃ。確か、月光を浴びれば強くなるというものじゃったはずじゃ。そして、月が満月に近づけば近づくほど、その効果はより大きいものになる」
「全員が『祝福』を二つも持ってるのか。そりゃ厄介だな」
ーー『祝福』。それは簡単に言えば世界から選ばれしものに与えられる特別な力である。主に『祝福』は、同時に複数人に宿る下位のものから、同時に一人にしか宿らない上位のものの二つに分けられる。
そして稀に、その種族全員に必ず同じ『祝福』が宿ることがあるのだが、それが今回のゾンビのような場合である。
ゾンビという一種族に絶対宿る『祝福』は、アイゼンの話からして二つ。『回生』と『月光の加護』。その上、下位の『祝福』の中でも非常に優れた『回生』は、一日一回毎日使えるときた。
正直、ロンはゾンビを侮っていた。まさかこれほど強力な能力を宿していたとは。
「『祝福』かー。なら、俺も一つ持ってるぜ」
「なっ! 本当か。レックス」
「あぁ」
唐突な告白に、ロンとアイゼンが驚きを隠せず反応する。
なぜ今まで黙っていたのだ、とツッコミたくなるが、そもそも『祝福』の話題が上がらなかったので話す機会がなかったのだろう。にしても、もう少し早く話してくれたってよかったよな?
「して、何の『祝福』を持っているんじゃ?」
「ずばり! 俺が持ってる『祝福』は、『反撃保存』だ」
「ーーワシが知らん『祝福』じゃな。ロン、知っておるか?」
「いや、オレも知らないな。これでも結構本は読んでたつもりなんだが」
ロンは何一つ持っていない状態でこの村に住み始めてから、よく村の図書館に通って本を読んでいた。魔法に関しての本や、魂力に関しての本、そして『祝福』に関しての本。各国の情勢や『世界最強』の三人についての本。
挙げればキリがないが、とにかくロンはあの図書館にある本ならば全て読んで自分の知識にしたはずだ。
それなのに、レックスの『祝福』にはどうしても心当たりがない。下位のものなら、おそらく全て知っているはずなのだがーー、
「もしかして、レックスの『祝福』って上位のやつなんじゃないか?」
「上位? あー、確か俺の知り合いがそんなこと言ってたっけな……」
「はっはっは! ロンよ、ワシらどうやら大物に出会ったようじゃな!」
「そうみたいだな」
上位の『祝福』を持つものは、上位なだけあって、世界中でも百といない。そういう観点で見ると、レックスは大物だ。
「さて、レックスの『祝福の話も気になるが、時間は有限じゃ。話を戻すとするか」
「だな」
アイゼンが変わってしまった話題を元に戻すことを提案し、ロンも賛同する。
「とは言ったが、ワシが知っている情報はこれぐらいじゃ。じゃから、ゾンビに対抗する策は一つ。二度殺す、じゃ。はっはっは!」
調子のいいことを……と、思わずツッコミそうになったが、実際そうだ。
ゾンビの持つ『回生』を無効化する方法は、少なくともロンたちにはない。『月光の加護』ならば、奇跡的に洞窟に誘い込めたら無効化できるかもしれないが、はっきり言って無理だろう。自分の『祝福のことは、自分が一番よく分かっている。当然、初日のようにはいかないだろう。
「それと、ワシはピンピンしておるように見えるじゃろうが、まだ万全ではない。雑魚を軽く吹き飛ばすことぐらいは可能じゃが、幹部級となるとちょい厳しそうじゃ」
「まあ元々、アイゼンさんに無茶させる気はないからな。レックス、オレたち二人で頑張るしかないぞ」
「おう。もちろんそのつもりだぜ」
数日を共に過ごして分かったことだが、普段はあまり頼りがいがないレックスだが、こういう時は人一倍頼りがいがある。非常に心強いかぎりだ。
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「チーフ、お前の話を聞かせてほしい」
「分かった」
ロンがチーフの提案を受け入れ話を聞く判断を下したことに、少なくともレックスは安堵していた。
良くも悪くもレックスよりもチーフとの接点があるロンがこの提案を受け入れなければ、いくらレックスが頼んだところでロンの首を縦に振らせるのは難しい。ここが頑張りどころだったのだ。
そして幸い、ロンが首を縦に振ったことによりレックスの不安は解消され、チーフも話を聞かせてくれそうで一安心。
それにゾンビ、それも副指揮官であるチーフならばアイゼンよりも知っている情報があるだろう。それらの有力な情報を踏まえた上でゴストンに挑めるのなら、これ以上いいことはない。
「まず、ゾンビの『祝福』については知ってるのか?」
「あぁ。それはじいさんから聞いたぜ」
「じいさん……フォーレ•アイゼンのことか。なら話は早いな」
だがそこから、チーフが更なる情報を口にすることはなかった。情報を開示すると決意したチーフ自身が、レックスたちから目を逸らし口を止める。何か嫌なことを思い出したのだろうか。
そんな中、炎を宿したような赤瞳でチーフと向き合い続けていたロンは、
「チーフ。オレたちは、お前の話を聞かなきゃだめだ。じゃないと、ゴストンを倒せない。ーーそれに、ゾンビだって救えない」
彼が選んだのは沈黙でも脅迫でもない、紛れもなく要望だった。
ゾンビを救う。その言葉を聞いて驚いたのはレックスもそうなのだが、それ以上なのはチーフだ。彼こそがこの中で一番驚き呆気に取られ、そして一番感銘を受けていた。
「オレたちは、ゾンビの詳しい事情を知らないから、このままだとお前以外を皆殺しにするつもりだ。けど、それじゃダメなんだろ?」
図星だ。チーフの顔を見れば、色々と鈍いレックスでもわかる。
チーフは大きく深呼吸し、ロンとは真逆の青い双眸に光を灯した。それは、レックスがこの数日間で見てきたどのゾンビにも当てはまらないような、まさに希望を宿した瞳だった。
「ーーそうだな。悪い。オレももう躊躇わない。今度こそ、全てを話す」
「ーーーー」
今度こそ、重たかったチーフの口が開く。
「急だが、本来ゾンビの瞳の色は赤ではない青だ」
「けど、俺たちが今まで見たやつらはチーフとゴストン以外全員赤だったぞ?」
「そのはずだ。赤い瞳のゾンビ、つまりオレとゴストン以外のゾンビ全ては、ゴストンの『血支配者』によって操られている」
「『血支配者』? 聞いたことない『祝福』だな。どんな能力なんだ?」
普段レックスよりも物知りなロンですら、その名前に心当たりはなかったようだ。
「簡単に言えば、自分の血を飲んだ自分よりも弱い生物を、自分の思うままに操ることができる能力だ。ゴストンは、その力を使ってゾンビにニンゲンを襲わせてる。その代わり、一度死んだゾンビはもうその日は戦場には出させないがな」
「本当の意味で死なせないため、か」
「そうだ」
そう話すチーフの表情は、先よりもさらに曇っていた。複雑な感情が、チーフの中で入り乱れているのだろう。
当然聞いたからには、この問題を無下にするわけにはいかない。
「ゾンビたちの支配を解く方法はねぇのか?」
「一つだけある。それは、支配者であるゴストンを本当の意味で殺すことだ」
「って、そりゃそれしかねぇよな……」
方法がそれしかないことは薄々わかっていたが、それでもチーフにとっては嫌なことのはず。それをわざわざ言わせてしまったことに、レックスは心の中で深く反省した。
「それともう一つ。オレが思うに、ゴストンは今までよりも遥かに強くなってる。詳しく話すつもりはないが、おそらく瘴気の力による強化だ」
「瘴気……」
そう呟きながら、レックスは腰に差している黒い剣に目を向ける。まだ名前すらも分からない謎の剣だが、この剣と瘴気が密接に関係しているのはもう分かりきったことだ。
レックスの手は自然と剣の柄に触れ、その感触を確かめた。手が焼けるような感覚も、体が侵されていくような感覚もない。至って普通の剣と同じ感触だ。
「瘴気か」
「ロン?」
「ゴストンの様子がどうだとかは知らないが、仮にその瘴気がゴストンの体を完全に支配した場合、奴は『魔人』になる可能性もあるってことだよな?」
「なぁ、『魔人』ってなんだ?」
聞いたことのない単語がロンとチーフの間で飛び交い、レックスは完全に置いてけぼりだ。
『魔人』。どれだけ記憶を辿っても、やはり聞いたことのない単語だ。
「『魔人』ってのは、瘴気に精神と体を乗っ取られた生物のことだ。ーー命の限り破壊を繰り返す、自我を持たない化け物って言った方が分かりやすいか」
「そりゃ怖ぇな……で、ゴストンがそれになっちまう可能性があるってことか?」
「いや、その可能性はおそらくない」
レックスとロンの推論に待ったをかけたのはチーフだった。
「ゴストンはオレたちを殺してゾンビを導くことが目的だ。それを無視して瘴気に取り込まれるほど、あいつは弱くない。はずだ」
「……まあ、お前の言いたいことは分かった。あくまで万が一の話をしただけだ」
不安げに話すチーフを、ロンが少し困りながらも励ます。
だがロンの言う通り、あくまで可能性、の話、それも万に一つだ。レックスだって、ゴストンが決して弱いゾンビではないことぐらい知っている。少なくとも今は、『魔人』とやらになっていないことを祈るしかないだろう。
「これがオレの開示できる情報だ」
「信じていいんだな? チーフ」
「もちろんだ。オレはもう、あいつがあいつを失っている姿を見たくない。この手で終わらせたいんだ」
チーフがそう言い終わると、ロンはチーフに歩み寄り、魔力も力も込められていない、ただの右手をチーフに差し出した。
「お前がゴストンのことを大切に思う気持ちは分かった。ーーそれらを踏まえて、オレたちはお前と協力する。いいな?」
「……感謝する、ロン。ーー共にゴストンを殺そう」
誓いを交わし互いに握り合ったその手には、憎しみも怒りもない。そこにあったのは、紛れもない強い決意だけだ。
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ロンと誓いを交わしてから、三人はチーフを先頭に森中をずっと走り続けていた。もちろん、目的はゴストンを探すことだ。
何年も一緒にいたせいか、なんとなくゴストンがどこにいるかの目星はつく。多分、ただの勘というやつだ。それほど、チーフとゴストンを結びつけていた絆は強かったということだ。
もちろん、ゴストンを殺すことに躊躇はしない。心の中で少し感じはするかもしれないが、少なくとも戦闘に支障をきたすつもりは微塵もない。
だが気がかりなのが、自分が瘴気に侵されてしまったゴストンを見た時に、今とはまた違った感情が湧き出てくるのではないか、ということだ。チーフを殺した時でさえ十分瘴気に満ちていたというのに、あれ以上となっていたら。そんな想像が、チーフの脳裏を掠めて仕方がなかった。
「どこにいる。オマエは」
「ーーここだ」
「ーーーーッッ!!」
誰にも聞こえるはずのない呟きだった。それなのにどうして。どうしてそれに答える声がある。右からだ。その声は右から聞こえた。
まだ右に何があるかも見えていない。だがきっと、そこにいる。チーフたちを脅かす存在が。
右を向くよりも先に刀を鞘から引き抜き、振り向くと同時に刀を振るう。だがその剣は何かを切るわけでもなく、むしろ何かの衝撃を打ち消していた。
激しい衝突音と衝撃波が、チーフの刀を中心に広がる。重い一撃だ。地面に足をつけていなければ、今頃チーフは吹っ飛んでいた。
「昨日以来だな。こうして睨み合うのは」
「……オマエ、まだ飲まれてなかったのか」
「当たり前だ。ワレはキサマらを殺し、この森の絶対的な存在、王となるゾンビだ。自我を失ってたまるものか」
ようやくお出ましといったところだ。チーフよりも遥かに大きな巨軀に、ロンと同じような炎の拳。それにチーフと同じ、青い瞳。その威圧感は増しつつも、それが紛れもないチーフの相棒ーーアングリフ•ゴストンであるということは明らかだ。
やはり瘴気が濃くなっている。それ故に、この一撃も重い。これまでゴストンとは模擬戦のような感じで何度か戦ったことがあるが、今のそれは比べ物にならない。
迷いを捨てれば捨てるほど力が増大する瘴が、迷いを完全に捨てたゴストンの力を大きく増幅させた。どうやらその影響は、チーフたちの予想を遥かに上回っていたようだ。
「ワレ、『瘴屍』アングリフ•ゴストンは、たった今からキサマらを皆殺しにする」
「ーーっ、『刀屍』ゾルト•チーフ」
互いの剣と拳が反発し合いながらも、両者は睨み合いながら名を名乗り合う。
いや、どちらかといえばそれは名を名乗るという行為というよりは、互いの決意を示し合うということに近い。
チーフは瞬足を用いて瞬時にその場を離れ、そしてゴストンの横腹に迫る。後は刀で斬るだけだーー、
「火足」
「なっ……いない!?」
確かにチーフは斬った。間違いなくそこに迷いはなかった。けれどなぜ、チーフが斬ったのはゴストンではなく空気なのだ。だって先ほどまでそこにいたはずだ。
上を見上げると、そこには空高く飛び上がったゴストンの巨軀が浮いていた。それに加えて、何やら赤い炎が二つーー、
「炎」
「あの攻撃……まさか!」
「乱れ打ち!」
「レックス、ロン! 離れろ!」
空高く飛び両腕に炎を纏い地面に向けて拳を連打する。チーフは今ゴストンがやろうとしていることが何なのか知っている。
あれは確か、チーフとゴストンがまだ幼かった頃の記憶だ。今でも鮮明に覚えている。
『なあチーフ。思ったのだが、高いところから炎魔法を何発も雨のように放てば、敵を殲滅できるのではないか?」
『すごい無茶苦茶な技だな。けど、強そうだな。それになによりかっこよくないか?』
「まさか、瘴気の力で不可能だったことを可能にしたのか?」
皮肉にも、子供の頃の理想がこのような形で叶えられるとは。
瞬間、頭上から降り注いだ無数の炎の雨がチーフたちを容赦なく襲う。
ゴストンが一振り空気を殴れば、たちまち下に向けて炎が放たれる。文字通り雨の如く降り注いだ炎は、先までそこにあったはずの草木を一瞬で灰に変え、地面を抉り破壊の限りを尽くす。無論、チーフたちも対象外ではない。
次から次へと迫る炎の猛攻は、チーフならば瞬足を用いて対処可能だ。
だがレックスやロンはどうだ。戦闘経験もチーフほど多くないはずだ。ーーおそらく、極限集中の使い方も知らない。そんなやつらがこの攻撃を受けるとなると、生存確率はグッと下がるのである。
だがチーフに二人を助けられるような余裕もない。精々自分一人で攻撃範囲から離れるのが関の山だ。
「ロン。見せてやろうぜ、俺たちの力!」
「おうよ!」
何を呑気なことを言っているのだ? 早く逃げなければ死ぬぞーー、
「対象登録完了。反撃開始! 雷剣!」
「火拳!」
雷を纏った剣と炎を纏った拳が、空から放たれる炎たちを次々と捌いていく。レックスもロンも大したものだ。決して弱いとは思っていなかったが、まさかこれほどとは。チーフは感心した。
やがて炎の雨が止み、ゴストンは土埃を盛大に上げて着地した。
「今だ。瞬斬!」
立ちあがろうとするゴストンに、チーフが隙を見つけ斬りかかる。だが、その一撃はゴストンの巨碗によって弾かれ、逆にチーフが隙をみせてしまった。そこにゴストンの強烈な拳の一撃がーー、
「させるか!」
「っ、キサマ……」
チーフの隙を狙った強烈な拳を、雷の如く現れたレックスの雷を纏った剣で弾いた。その隙に、チーフは瞬足でその場を離れ、レックスも同様に瞬時にその場を離れる。
「悪い、助かった」
「気にすんな。それよりあいつ、めちゃくちゃ強くなってるな。一撃の重みが昨日と比べ物になんねぇ」
「あれが、瘴気の力なんだろな」
見れば見るほど、ゴストンの体は強靭な肉体だ。元々大きかったとはいえ、あれほど大きくはなかった。これも瘴気による強化と見ていいだろう。
さらに恐ろしいのが、そんなゴストンを二度も殺さなければならないということだ。正直このままでは、一回殺すだけでもきつい。
「参ったな。何か策を考えなければ埒が明かないぞ」
「そう言われても、今はそれを考えるための時間もない。ひたすら攻撃を打ち込むしかない」
ロンの言う通り、策など考えている場合ではなかった。本当、そんな時間があればありがたく受け取りたいところだ。無論、どれだけ頼んでもそうはさせてくれないのは承知の上だが。
「ひたすら打ち込むしかねぇよな。よし、いくぞ!」
「おうよ!」
「瞬斬駆嵐!」
レックスの合図を始めとして、レックスとロンとチーフの三人は同時にゴストンに襲いかかる。
レックスとチーフによる四方八方から高速移動で飛んでくる剣撃に、隙を見てロンが拳を入れる。だがそれでもゴストンは、レックスとチーフの剣撃を全て捌き、時々迫るロンの拳をも全て防いでくる。今のゴストンは、まるで手に負えない化け物だ。
「これでまだ『魔人』になってないってのが恐ろしいところだな」
それにロンの言う通り、ゴストンはまだ『魔人』になっていない。当然いいことなのだが、逆に言えばこれ以上強くなる可能性もあるのだ。そうなれば、間違いなくチーフたちには勝ち目がなくなるだろう。
言わばこの戦い、時限爆弾を相手にしているようなものだ。
「って、また飛んでいきやがった」
レックスの剣がゴストンに差し掛かる直前、ゴストンは空に姿を消した。また先の攻撃が来るーー、
「オレでも、もしかしたらできるかもしれない……火足!」
なんと、それに続くようにロンまで上空に飛んだ。それも、ゴストンの技を模倣して。昨日の時点ではロンはそんな技を使っていなかった。つまり、今二回見ただけで模倣したというのか。天才か?
ゴストンに向かって飛び上がったロンは、そのまま炎の拳をゴストンに放つ。それがゴストンの不意をついたのか、ゴストンは胸の前で腕をクロスにして防いだものの、姿勢を崩してロンとともに落ちた。
ロンはレックスの横に上手く着地し、再び構えをとった。
「すげぇなロン! いつの間に練習してたんだ?」
「今で初めてだ。上手くいってよかったぜ」
「忌々しい奴らめ。黙って殺されておけばいいものを」
「何回も言わせんな。俺たちは死なねぇよ。それに、俺たちはお前に勝つためにここにいるんだ」
レックスはゴストンに剣を向けて、自信に満ちた笑みをゴストンに向ける。その顔を見ていると、不思議とチーフにも自信が湧いてきた。
これが仲間というやつなのだろうか。
「そうか。それならば、ロクな死に方はできぬと思え」
瞬間、空気が歪んだ。
ゴストンは両掌をこちらに向け、何やら赤い粒子たちがそこに吸い込まれていくように見えた。そしてそれはだんだんと一つの球体へと形を成していきーー、
「ーーっ、レックス、ロン! 逃げろぉぉ!!」
ーー今までとは威力もスケールも比べ物にならないような炎がゴストンの手先から放たれ、視界を赤が埋め尽くした。




