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勇者を二人も召喚してしまいましたが、何故か二人とも上半身裸です。  作者: ネコ雲


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上半身裸の勇者と同じ部屋



 ゴブリンたちを倒した三人は、森を抜けて最初の町へ向かっていた。


 周囲には見たことのない植物が生い茂り、遠くには巨大な山々がそびえている。


「異世界って感じがするなぁ」


 優太が周囲を見回しながら、楽しそうに言った。


「分かる。いつかドラゴンとか出てくるんじゃね?」


 勝平も目を輝かせる。


「ドラゴンなら、さっきのゴブリンより強いんだろうな」


「そりゃそうだろ。異世界のドラゴンだぞ?」


「楽しみだな」


 二人はすっかり冒険を楽しんでいた。


 そんな二人を見ながら、エリーは小さくため息をつく。


「……その前に、優太さんと勝平さんは服を買わないといけません」


「服?」


「今の格好で町に入るつもり?」


 二人は自分たちの姿を見下ろした。


 下はズボン。


 そして上半身は裸。


「……別にいいんじゃないか?」


「俺たち、これで困ってないし」


「困るのはあなたたちじゃなくて、周りの人たちです!」


 エリーの言葉通りだった。


 町に入った瞬間、三人に向けられる視線が一気に増えた。


「……なんか、見られてない?」


 優太が周囲を見回す。


「俺たち、そんなに目立ってるか?」


 勝平も首を傾げる。


「目立ってるに決まってるでしょ!」


 エリーは思わず声を上げた。


 上半身裸の男が二人。


 その間を歩く王女。


 どう考えても普通の光景ではない。


「だから普通じゃないって言ってるのです!」


「そうか?」


「そうだろ」


 二人はまだ納得していない。


 そのときだった。


「あれ……?」


 町の一人がエリーの顔を見て、目を見開いた。


「もしかして……エリー王女様?」


「え?」


 エリーが振り返る。


「王女様だ!」


「本物だ!」


 その声をきっかけに、周囲がざわつき始めた。


 そして噂というものは、本人たちの意思とは関係なく広がっていく。


『エリー王女が勇者二人と町に来た』


 それが、


『エリー王女が男二人と旅をしている』


 になり、


『エリー王女が上半身裸の男二人を連れて旅をしている』


 へと変わるまで、それほど時間はかからなかった。


「まあ、事実ではあるな」


 勝平が言う。


「そうだな」


 優太も頷く。


「事実だけど!」


 エリーは頭を抱えた。


 事実だからこそ、余計に否定しづらかった。


 その後、三人は町の食堂に入った。


「何にしますか?」


「これで」


 エリーが注文したのは肉料理だった。


「肉だけ?」


 優太がメニューを見る。


「十分です」


「野菜とか食べたほうがいいんじゃないか?」


「俺たち、筋肉には詳しいからな」


「そこなのです……」


 エリーはもう何も言わなかった。


 食事を終えると、三人は宿を探した。


「三人なら、一部屋でいいんじゃない?」


 勝平が言う。


「そのほうが安いしな」


「……まあ、それはそうですけど」


 エリーも頷いた。


 王女とはいえ、旅を始めたばかり。


 無駄な出費をする必要はない。


 こうして三人は、同じ部屋に泊まることになった。


 夜。


 部屋にはベッドが三つ並んでいた。


 エリーは真ん中。


 その左右に優太と勝平がいる。


「…………」


 エリーは天井を見つめていた。


 どうにも落ち着かない。


 隣では優太がすでに眠っている。


 反対側では勝平も眠っていた。


「……寝るの早すぎでしょ」


 二人とも、エリーが隣にいることなど気にしていないようだった。


 王女だからと気を遣っている様子もない。


 それどころか、隣に女性が寝ていることすら気にしていないようだった。


「…………」


 エリーは二人を見た。


 完全に熟睡している。


 自分だけが妙に意識しているようで、なんだか少し悔しくなった。


「……私って、そんなに魅力ないのかしら」


 ぽつりと呟いてから、エリーはハッとした。


「な、何考えてるのよ、私……!」


 自分で言ったことが恥ずかしくなり、慌てて布団を頭までかぶる。


 しかし、隣から返ってくるのは二人の寝息だけだった。


 結局、その夜。


 なかなか眠れなかったのはエリーだけだった。


 翌朝。


「エリー、寝不足?」


 優太が心配そうに尋ねる。


「……誰のせいよ」


「俺たち?」


「何かしたっけ?」


「いや、寝てただけだろ」


「そうだけど!」


 エリーは思わず声を荒らげた。


 二人には本当に悪気がない。


 だからこそ、余計に腹が立つ。


「……もういいわ」


 エリーはため息をついた。


 三人は宿を出て、再び町を歩き始めた。


 昨日よりも視線が増えている気がする。


 エリーは嫌な予感がした。


「……絶対、変な噂になってる」


 その頃。


 王都の城では――。


「報告いたします!」


「うむ」


 王の前に、一人の兵士が跪いていた。


「エリー王女様が、勇者二人と町に入ったとの報告がありました」


「そうか」


 王は頷いた。


 ここまでは問題ない。


「さらに、王女様は勇者二人と同じ宿に泊まったとのことです」


「……同じ宿?」


「はい。そして、その勇者二人は――」


 兵士が少し言いにくそうに口を開く。


「上半身裸だったそうです」


「…………」


 王の動きが止まった。


「…………エリーーーーーーーーッ!!」


 城中に、王の叫び声が響き渡った。

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