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勇者を二人も召喚してしまいましたが、何故か二人とも上半身裸です。  作者: ネコ雲


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モンキーフィッシュと冒険者の教え


「ウホォォォォォッ!」


バナナゴリラが雄叫びを上げ、五人へ向かって走り出した。


巨大な身体が地面を揺らす。


「来るぞ!」


優太が立ち上がろうとする。


しかし――。


「……っ!」


足に力が入らない。


「くそっ……!」


勝平も拳を握るが、身体が思うように動かなかった。


グラトンとの戦いから続く疲労。


その後もほとんど休むことなくダンジョンを進み続けたことで、四人の身体は限界に近づいていた。


「まだ……動けない……!」


ミッシェルも剣に手を伸ばしながら、膝をつく。


アリンも杖を構えようとするが、腕が重い。


「これは……少し休まないと駄目ですね……」


そんな四人の前へ、エリーが走り出した。


「みんな、下がって!」


エリーが四人の前に立つ。


そして、迫ってくるバナナゴリラへ両手を向けた。


「バリア!」


エリーの前に光の壁が現れる。


直後、バナナゴリラの拳が叩きつけられた。


ドォン!


激しい衝撃が響き、バリアが大きく揺れる。


「くっ……!」


エリーが歯を食いしばる。


バリアはなんとか攻撃を受け止めた。


しかし、バナナゴリラは勢いを止めない。


「ミッシー!」


「姫様!」


ミッシェルが立ち上がろうとする。


その時だった。


「おい!」


遠くから声が響いた。


「姫様に何してやがる!」


三人の冒険者が走ってくる。


「えっ?」


優太が振り返る。


「お前たち!」


勝平も驚いた。


三人の冒険者は、そのままバナナゴリラへ向かっていく。


「ここは俺たちに任せろ!」


三人が一斉に武器を構える。


「お願いします!」


エリーが叫ぶ。


三人の冒険者はバナナゴリラへ向かって走った。


バナナゴリラがエリーから狙いを変え、三人へ向かって腕を振り回す。


ドゴォッ!


地面が大きくえぐれた。


三人は左右へ散開する。


一人が正面から注意を引きつけ、その隙に別の一人が横から斬り込んだ。


「今だ!」


「おう!」


三人の連携に迷いはなかった。


バナナゴリラが振り向く。


そこへ三人目が背後から攻撃を叩き込む。


「グォォォッ!」


バナナゴリラが怒り、三人へ突進する。


しかし、三人はその動きを読んでいた。


一人が攻撃を避ける。


もう一人が足を狙う。


バナナゴリラの身体が大きく傾いた。


「今だ!」


三人が同時に攻撃する。


最後の一撃がバナナゴリラへ叩き込まれた。


巨体が地面へ倒れる。


ドォン!


静かな湖畔に、大きな音が響いた。


「……倒した」


優太が呆然と呟く。


「俺たち、何もできなかったな……」


勝平も悔しそうに拳を握る。


「今回は仕方ありません」


ミッシェルが息を吐く。


「今の私たちでは、戦える状態ではありませんでした」


「そうですね」


アリンも頷いた。


エリーが三人の冒険者へ駆け寄る。


「助けてくれてありがとうございます!」


「いえ、姫様が無事ならそれで――」


冒険者の一人が答えたところで、先ほど釣り上げた魚を見る。


「……そういえば、あの魚」


冒険者が魚へ近づく。


「これ、モンキーフィッシュだな」


「モンキーフィッシュ?」


優太が聞き返す。


「ああ。珍しい魚でな。白身で油がよく乗っていて、かなり美味い」


冒険者は魚を眺めたあと、倒れたバナナゴリラを見る。


「それと、こいつの頭にあるコブも使えるぞ」


「コブ?」


勝平がバナナゴリラの頭を見る。


頭には、バナナのような形をした大きなコブがついている。


「バナナゴリラのコブは油が取れるんだ」


冒険者が説明する。


「その油でモンキーフィッシュを焼くと、かなり美味い」


「へえ……」


優太が魚を見る。


「じゃあ、食ってみたいな」


「俺たちに任せろ」


冒険者の一人が笑った。


「こういう料理は何度もやってる」


その言葉を聞き、アリンが倒れたバナナゴリラを見る。


「では、今回は彼らにお任せしましょうか」


「ああ」


三人の冒険者はバナナゴリラから料理に使えるコブだけを取り出した。


そこから油を取る。


そして、先ほど釣り上げたモンキーフィッシュを焼き始めた。


ジュウウウ……。


鉄板に魚を乗せた瞬間、香ばしい匂いが広がる。


「……いい匂い」


アリンが鼻を動かす。


「これは腹が減るな」


優太も料理を見つめる。


「さっきまで動けなかったのに、食欲はあるんですね」


エリーが呆れたように笑う。


「食べることは別だからな」


勝平が胸を張る。


「それはどういう理屈ですか?」


ミッシェルが呆れる。


やがて魚が焼き上がった。


「ほら、食べてみな」


冒険者が皿に取り分ける。


五人と三人の冒険者は、焼きたてのモンキーフィッシュを口に運んだ。


「……うまい!」


優太が目を見開く。


「本当に美味しいです!」


エリーも驚く。


白身は柔らかく、噛むたびに脂の旨味が広がる。


「これは美味しいですね」


ミッシェルも素直に感心する。


アリンも嬉しそうに食べている。


「バナナゴリラのコブって、こんな使い方ができるんですね」


「そういうことだ」


冒険者は満足そうに頷いた。


そのまま皆で食事を続けていると、冒険者の一人がエリーを見る。


「……そういえば、姫様」


「はい?」


「なんでそんなに濡れてるんですか?」


「……」


エリーの手が止まる。


「それに、さっき凄い叫び声が聞こえましたけど」


「ああ、それか」


優太が口を開く。


「エリーがバナナゴリラに攫われて、魚を釣るためのエサにされたんだ」


「……」


冒険者たちがエリーを見る。


「なるほど」


一人が頷いた。


「モンキーフィッシュは猿が好物だから、間違われたんだな」


「…………」


その瞬間。


五人の動きが止まった。


「あっ……」


勝平が小さく呟く。


「……あっ」


アリンも目を逸らす。


ミッシェルは頭を抱えた。


「……」


そして、もう一人の冒険者がエリーへ顔を向ける。


エリーは笑っていた。


ただし――。


頬は引きつり、青筋が浮かんでいる。


「…………」


「……」


冒険者三人の顔から血の気が引いていく。


エリーがゆっくり口を開いた。


「あなた達」


「は、はい!」


「今回は助けてもらったんで、不敬罪だけは許してあげます」


「……!」


三人がホッと息を吐く。


「よかった……」


「助かった……」


「本当にありがとうございます……」


しかしエリーは、にっこりと笑った。


「ただ……」


「……?」


「この前のこともありますし、どうしましょうか?」


「…………」


三人の顔が再び青ざめる。


「すいませんでした!」


三人はその場で土下座した。


「申し訳ありません!」


「本当にすいませんでした!」


「フフフ」


エリーは小さく笑った。


そして何事もなかったように言う。


「食事の続きをしましょうか」


「……はい」


三人は恐る恐る顔を上げ再び食事を始める。


モンキーフィッシュは美味しい。


なのに――。


「…………」


冒険者三人は無言で魚を食べていた。


(美味いはずなのに……)


(全然味がしねぇ……)


(怖すぎる……)


三人の心は完全に食事どころではなかった。


◇


食事を終える頃には、四人の身体も少しずつ回復していた。


冒険者の一人が、改めて優太たちを見る。


「それにしても、お前たちはなんでそこまで疲れてるんだ?」


「ああ……」


優太が苦笑する。


「グラトンと戦って、その後もずっと進んでたからな」


「それだけじゃないです」


エリーが呆れたように言った。


「皆さん、はしゃぎすぎて疲れてるんです」


「はしゃぎすぎて?」


冒険者が四人を見る。


優太、勝平、ミッシェル、アリン。


四人とも黙った。


「……」


「……」


「……」


「それでああなったのか」


冒険者は妙に納得した。


「ダンジョンでは、体力配分が大事だぞ」


「体力配分?」


勝平が聞き返す。


「そうだ。敵が出るたびに全力で戦ってたら、後半で動けなくなる」


別の冒険者も続ける。


「ダンジョンの中では、体力がなくなっても周りは敵だらけだ。逃げることもできない」


「……」


「そうなったら、食料になるのは自分たちだ」


優太がゴクリと唾を飲み込む。


「……それは嫌だな」


「俺も嫌だ」


勝平が頷く。


ミッシェルも反省したように俯く。


「確かに……私も少し無理をしすぎました」


「私もです」


アリンも頷いた。


「これからは気をつけます」


優太も拳を握る。


「俺も、ちゃんと考えて戦うよ」


「俺もだ」


冒険者三人は頷いた。


「それならいい」


一人が立ち上がる。


「それと、疲れてるなら、この先に安全地帯があるぞ」


「安全地帯?」


エリーが尋ねる。


「魔物がほとんど寄りつかない場所だ。そこで休める」


「本当ですか?」


「俺たちもそこまで行くつもりだった」


「じゃあ――」


エリーが皆を見る。


「一緒に行きませんか?」


冒険者三人も頷いた。


「それがいいだろう」


こうして五人と三人。


合わせて八人で、安全地帯を目指すことになった。


先頭を歩く冒険者たちの後ろを、五人がついていく。


優太は歩きながら、自分の身体を確認する。


「……さっきより動くな」


「俺もだ」


勝平が頷く。


「でも、まだ無理はできそうにない」


「それでいいんだ」


前を歩く冒険者が振り返る。


「ダンジョンじゃ、無理をしないことも強さの一つだからな」


優太と勝平は顔を見合わせる。


「……覚えておこう」


「ああ」


その横でエリーが小さく笑った。


ミッシェルも頷く。


アリンも静かに話しを聞いている。


八人の足音が、静かなダンジョンの中へ響いていく。


やがて前方に、少し開けた場所が見えてきた。


「もうすぐだ」


冒険者が言う。


「今日はここで休もう」


五人はその言葉を聞き、ようやく肩の力を抜いた。


長いダンジョン探索の中で、初めて五人は自分たちの戦い方を見直すことになった。

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