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勇者を二人も召喚してしまいましたが、何故か二人とも上半身裸です。  作者: ネコ雲


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12/23

食中毒?

10月12日に改稿しました。


 北へ向かう旅、三日目。


 夕方、五人は野営の準備を始めていた。


「そういえばさ、三人とも料理ぐらいできた方がいいんじゃないか?」


 優太の提案に、エリーが目を丸くした。


「料理ですか?」


「そう。旅をしてるんだから、自分たちで作れた方が便利だろ」


「確かに、覚えておいて損はありませんね」


 ミッシェルも頷いた。


「せっかくですから、今日は私たち三人で作ってみましょう!」


 エリーが意気込むと、アリンも楽しそうに微笑んだ。


「私もやってみたいです」


「よし。じゃあ、今日は任せてみるか」


「任せてみる、じゃありませんよ。ちゃんと教えてくださいね!」


「分かってるって」


 ところが、いざ料理を始めようとすると、食材が足りないことに気づいた。


「……昨日の残りのボア肉くらいしかないな」


 荷物を確認した優太が言った。


「それだけじゃ、料理の練習にもなりませんね」


 勝平が周囲を見回す。


「じゃあ、森で食材を探すか」


 こうして五人は、近くの森へ入った。


 木の根元や茂みを調べながら、食べられそうなキノコや野草を探していく。


「あっ!」


 エリーが声を上げた。


 茂みのそばに、形の整った美しいキノコが生えていたのだ。


「見てください! こんなに綺麗なキノコがありました!」


 エリーは嬉しそうにしゃがみ込み、キノコへ手を伸ばした。


「エリー、見た目だけで判断するなよ」


 優太が注意した、その直後だった。


 ガシャンッ!


「きゃあっ!?」


 金属音が響き、エリーの姿が檻の中に消えた。


「……え?」


 優太が固まる。


「姫様!?」


 ミッシェルが慌てて駆け寄り、檻の扉を開けようとした。


「すぐにお助けします!」


 留め具を調べ、扉に手をかける。しかし、どうやら簡単には開かない。


 そのとき、背後の茂みが大きく揺れた。


「ミッシー、後ろです!」


 エリーの叫びにミッシェルが振り返る。


 だが、間に合わなかった。


「ぐっ!?」


 突進してきたボアの体当たりを受け、ミッシェルの体が横へ吹き飛ばされた。


 ボアはそのまま森の奥へ走り去り、ミッシェルは苦痛に顔を歪めながらも立ち上がった。


「ミッシー!?」


 エリーが悲鳴を上げたところへ、騒ぎを聞きつけた優太、勝平、アリンが駆け寄ってきた。


「……何やってるんだ、お前ら?」


 優太は檻の中のエリーと、立ち上がったばかりのミッシェルを見比べた。


「なんで森の中に檻があるんだよ……」


 勝平も困惑した様子で周囲を見回す。


 アリンは檻の中のエリーを見るなり、くすくすと笑った。


「エリーさん、なんか可愛いです」


「可愛くありません! 早く助けてください!」


 エリーが顔を赤くして訴える。


 優太はそこで、エリーが手に何かを持っていることに気づいた。


「……エリー。それ、キノコか?」


「そうです!」


 エリーは檻の中で胸を張り、手にしたキノコを掲げた。


「見てください! 美味しそうでしょう?」


「いや、今そんな自信満々に見せられても……」


 勝平が呆れた声を漏らす。


 アリンは笑うのをやめ、エリーの手元を覗き込んだ。


「ちょっと見せてくださいね」


 キノコを受け取ると、アリンは杖を向けた。


「アリン98の秘技――アナライズ!」


 淡い光がキノコを包み込む。


 結果を確認したアリンは、静かに告げた。


「……やっぱり毒でした」


「やっぱり!?」


 エリーの顔が引きつった。


「食べると、血を吐いて激しく苦しみ、最後には命を落とすそうです」


「怖すぎるでしょう!」


 勝平が思わず一歩下がった。


「そ、そんなに危険なんですか……?」


 エリーは手元のキノコを見つめた。


「はい。食べない方がいいです」


「いりません!」


 エリーはキノコを勢いよく放り投げた。


「美味しそうだったのに……!」


「そこは諦めろよ!」


 優太が即座に突っ込む。


 アリンは檻の留め具を調べ、手際よく扉を開けた。


「開きましたよ」


「ありがとうございます、アリンさん……」


 エリーはようやく檻から出ると、気まずそうに目をそらした。


「……今のことは忘れてください」


「無理だろ」


「優太さん!」


「はい、すみません」


 優太は素直に謝ったものの、笑いをこらえきれていなかった。


 ミッシェルも体の具合を確かめながら、エリーのそばへ戻る。


「姫様、お怪我はありませんか?」


「私は大丈夫です。ミッシーこそ、平気なんですか?」


「はい。ご心配には及びません」


 ミッシェルはそう答えたが、まだ少し痛そうに顔をしかめていた。


「……とにかく、食材を探そうぜ。日が暮れるぞ」


 勝平が促すと、五人は再び森を歩き始めた。


 今度はアリンに確認してもらいながら、食べられるキノコや野草を集めていく。必要な分の食材がそろう頃には、空もすっかり夕暮れ色に染まっていた。


     ◇


 野営地へ戻ると、さっそく料理が始まった。


「まずは火ですね」


 アリンが薪に杖を向ける。


「ファイア」


 小さな炎が薪に燃え移った。


「おお、アリンは本当に便利だな」


「便利という言い方は、少し気になります……」


 アリンは頬を膨らませたが、すぐに料理の準備へと戻った。


 食材を切り始めると、ミッシェルが驚くほどの速さで包丁を動かし、野菜もキノコも一瞬で細かくしていった。


「すげえ……ミッシェル、料理できたんじゃないか?」


「いえ、初めてです」


 優太が切り終えた食材を見て、言葉を失う。


 そこにあったのは、野菜でもキノコでもなく、見事なペースト状の何かだった。


「……ミッシェル。これは?」


「切りました」


「切るって、そういうことじゃないだろ!」


 勝平のツッコミが飛ぶ。


「細かくしただけです」


「細かすぎるんだよ!」


 優太も思わず声を上げた。


 アリンは魔法で食材を切ろうとして地面に落とし、勝平に包丁を使うよう注意される一幕もあったが、どうにか調理は進んでいった。


 そして、完成した鍋を覗き込んだ五人は、そろって黙り込んだ。


 料理は、なぜか黒かった。


「……これ、本当に食べられるんでしょうか?」


 エリーが不安そうに尋ねる。


「たぶん……」


 勝平も自信がなさそうだった。


「せっかく作ったんですから、食べましょう」


 ミッシェルが覚悟を決めたように言う。


 アリンも小さく頷いた。


「そうですね。頑張って作りましたから」


 その様子を見ていた優太が、ふと思いついたように顔を輝かせた。


「いやあ、憧れのエルフ、アリンの手料理が食べられるなんて感動だな!」


 アリンの顔がぱっと明るくなる。


 優太は鍋を見て、言葉を付け足した。


「……若干二名、別の意味で不安だけど」


「優太さん、文句あるんですか?」


 エリーが少し拗ねたように頬を膨らませた。


「いやいや、そういう意味じゃなくて!」


 優太は慌てて誤魔化すように鍋へ向き直った。


「さぁ~、憧れのエルフのアリンが作ってくれたご飯、食べるか!」


「だから、私も作りました!」


 エリーがむきになって言い返す。


「分かってる、分かってるって!」


 優太は鍋から料理を取り分け、口へ運んだ。


 もぐもぐと咀嚼する。


 そして――。


「……っ」


 優太の目に涙が浮かんだ。


「優太さん? どうですか?」


 アリンが緊張した面持ちで尋ねた。


 優太は涙を流しながら、震える声で答えた。


「憧れと現実は……違うんだな……」


「どういう意味です?」


 アリンは少し唇をとがらせた。


 その隣で、エリーも料理を一口食べた。


 もぐもぐ。


 ごくん。


 そして、無表情のまま告げた。


「……これは、アリンが一人で作りました」


「えっ!? エリー、さっき自分も作ったって――」


「アリンが一人で作りました」


「二回言った!?」


 勝平が吹き出す。


「ちょっと待ってください!どういう事ですか!」


 アリンが慌てて抗議するが、優太は涙を拭いながら鍋を見つめていた。


「……期待って、怖いな」


「優太さん!」


 アリンの頬がさらに膨らむ。


 それでも、せっかく五人で作った料理を残すわけにはいかなかった。


 優太と勝平も腹をくくり、五人は何とか鍋を完食した。


     ◇


 そして、翌朝。


「……気持ち悪い」


 エリーは青ざめた顔でしゃがみ込んでいた。


「……私もです」


 ミッシェルもお腹を押さえ、苦しそうに顔をしかめている。


「お腹が痛いです……」


 アリンまでその場に座り込んでいた。


 一方、優太と勝平は何事もなかったかのように伸びをしていた。


「今日もいい朝だな」


「昨日より元気かもしれないな」


 二人が平然としているのを見て、エリーは信じられないという顔を向けた。


「……なんで二人は平気なんですか?」


「さあ? 俺たち、別に変なもの食べてないぞ」


「昨日、同じものを食べたじゃないですか……!」


 エリーが恨めしそうに言う。


「俺たちには筋……超回復があるからな」


 勝平が答えかけた。


「そ、そうだったな」


 優太も慌てて頷く。


 エリーは二人をじっと見た。


「……筋肉って言いかけました?」


「勇者のスキルかな」


 優太は笑って誤魔化した。


「そんなことより……私たちをどうにかしてください……」


 ミッシェルが苦しそうに訴えた。


「ああ、そうだった」


 優太は三人の様子を見て、ようやく真面目な顔になった。


「でも、毒は入ってなかったはずですよね?」


「毒はありませんでした……」


 アリンが苦しそうに答える。


「じゃあ……三人が料理したことで、毒に変わったんじゃないか?」


「そんなわけないでしょう!」


 エリーが勢いよく顔を上げた。


「料理で毒になるわけないでしょう!」


 ミッシェルも悔しそうに優太を睨み、アリンも不満そうに頬を膨らませた。


 しかし、怒っている途中でエリーは再びお腹を押さえてしゃがみ込んだ。


「……ううっ」


「姫様!」


 ミッシェルが慌てて支える。


 優太は三人を見て、ふと何かを思い出した。


「あれ……エリー、お前、聖女だろ?」


 エリーの動きが止まった。


「……あ」


 勝平も目を見開く。


「そういえば!」


「……そうでした」


 エリーは自分の手を見つめた。腹痛に苦しむあまり、回復魔法を使うことすら忘れていたらしい。


「私、回復魔法が使えます……」


「忘れるなよ!」


「忘れちゃ駄目だろ!」


 二人が声をそろえて叫んだ。


「すみません……!」


 エリーはなんとか立ち上がり、三人に手を向けた。


「ヒール!」


 柔らかな光が三人を包み込む。


 しばらくすると、苦しそうだった表情が和らいでいった。


「……治りました」


 ミッシェルがほっと息を吐く。


「私も大丈夫です」


 アリンもゆっくりと立ち上がった。


「よかったな」


 優太が笑うと、エリーは真剣な顔で二人を見た。


「……優太さん、勝平さん。次はちゃんと料理を教えてくださいね」


「私も、次こそはきちんと切ってみせます」


 ミッシェルも力強く頷いた。


「私も、もう少し料理を覚えてみたいです」


 アリンまで続いた。


 優太と勝平は顔を見合わせる。


「……俺たち、また教えるのか?」


「そうなるな」


「大変そうだな」


「……だな」


 二人は昨夜の黒い鍋を思い出し、そろって遠い目をした。

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