第36話 五つの地点を同時に見たら、地球に存在しない部屋の輪郭が映った
《観測室》に、もう一度見つかった。
未来掲示板に表示されたその一文を読み終えたあと、俺は内容を伏せずに会議室の全員へ伝えた。もちろん、十年後の掲示板にそう書かれていたからといって、それを現在の事実として扱うことはできない。それでも昨日の五点受動観測で、対象にした五地点だけに周期的な前駆粒子の変動が現れ、観測終了の瞬間にはそれまでと逆方向の大きな反応まで記録されている。未来の記録と現在のデータが無関係だと言い切れる状況でもなかった。
誰かが騒ぎ出すより早く、最初に現実的な確認をしたのは三枝さんだった。
「五地点の立入制限は、まだ解除してませんよね? 観測そのものは終わってても、何が起きたか分かってないなら、少なくとも今夜は人を戻さないほうがいいと思います。測定が終わったから安全だと判断して、そのあと何か出てきたら一番まずいでしょう」
「ああ。機器回収班はすでに撤収させたが、観測に使った区画への立ち入りは禁止したままだ。施設側にも理由を説明してある」
神代さんが答えると、榊原さんもすぐに続いた。
「追加観測もしない。今あるデータだけを解析する。五地点には新しい測定器も持ち込まないし、こちらから粒子を照射したり接続を試したりもしない。ただし、防犯カメラや電力計、温湿度計みたいに施設へ元から設置されている機器の記録は保存してもらう。こちらから刺激しなくても、何か変化が起きたなら後から確認できる」
「それならいいです。あと、現地で異常が出ても、確認のために人を近づけるのはなしでお願いします。必要ならまずカメラか、今まで使ってる遠隔機で見ましょう」
三枝さんが当然のように安全条件を追加していく。まだ安全運用室へ入ったばかりなのに、すでに会議の流れへ完全に馴染んでいた。
少し前までのアークなら、俺が未来掲示板から危険らしい情報を持ち帰れば、俺自身が次にどうするかを考え、それを周囲へ相談する形になっていたと思う。今は違う。未来情報を持っているのは俺だけでも、それを受け取ったあとの判断には、研究、行政、現場、安全、それぞれ別の立場から止めたり修正したりする人間がいる。
組織が大きくなるというのは、単に人数が増えることではないのかもしれない。
「一応、未来側で今回の観測による人的被害が出ていないかだけは確認します。それ以上は読まないようにします」
そう断って未来掲示板を開き、《五点観測 人的被害》で検索する。結果はすぐに出た。
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【前駆史】発生前五点観測って被害出た?
1011:名無しの探索者
初回はゼロ
1012:名無しの探索者
観測班も周辺住民も人的被害なし
1013:名無しの探索者
ただし初回データ解析終わるまで
第二回は禁止されてた
1014:名無しの探索者
あの慎重判断は今でも正解扱い
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必要なのはそこまでだった。俺は続きを読む前に画面を閉じる。
「今の未来では、今回の観測による人的被害はゼロです。それから第二回観測は、初回の解析が終わるまで禁止されたことになっています」
「なら、少なくとも今日は二回目をやる理由がないですね」
三枝さんが即答する。
「はい。俺もそう思います」
「珍しく素直ですね」
「俺だって毎回、危険なほうへ行きたいわけじゃないですよ」
「未来に答えがあると分かったときだけ、ちょっと信用が落ちるんですよ」
言い返そうとしてやめた。最近の自分を振り返ると、完全には否定できなかったからだ。
◇
その夜、五地点へ人を戻すことはなかった。
俺たちがやったのは、すでに回収済みの一時間分の記録を可能な限り疑い直すことだった。対象となった五地点と比較用の五地点。合計十台の観測器には、前駆粒子濃度だけでなく、内部温度、磁場、振動、電源状態、独立時計の補正値まで残っている。
榊原さんは最初から、《観測室》の存在を証明しようとはしなかった。むしろ逆で、五地点に共通する波形が機器側の都合で生まれた可能性を一つずつ潰していった。
「まず製造上の共通不具合を疑う。同じロットの部品に癖があれば、五台へ同じノイズが出ても不思議じゃない。それから内部時計の補正処理、データ回収時の変換、解析ソフト側の処理。五地点分を一つの端末にまとめた時点で混入した可能性もある。前駆現象だと考えるのは全部外してからだ」
「未来掲示板ではもう答えが出てますけど、それでも?」
「未来の研究者が間違っていない保証がどこにある。それに、仮に未来では正しくても、今回の波形が同じ原因とは限らない。似た形の別現象を、未来の答えに合わせて解釈するほうが危険だ」
「……はい」
こういうところは、何度聞いても勉強になる。
未来掲示板は便利すぎる。だからこそ、一度「これは観測室だ」と思い込めば、目の前のデータすべてがその証拠に見えてしまう可能性がある。
瀬尾は別端末で、観測器以外の記録を集めていた。
「五地点の防犯カメラ映像も届き始めました。施設によって時計がかなりずれてますけど、観測開始前に現地班が基準時刻表示をカメラへ映してるので、あとから合わせられます。電力ログも四地点分は確保できました」
「防犯映像は消さずに原本を保管。変換したファイルだけ見て判断するな」
「了解です。元データと作業用コピー、分けて保存します」
会話の途中で、俺は壁の時計を見る。すでに午前零時を回っていた。
三枝さんがアークへ加入する前なら、「研究班が勝手に残ってるなら俺も最後までいよう」と考えていたかもしれない。けれど今は、三枝さんから「判断力落ちた状態で安全会議しても意味ないですよ」と言われ、一度仮眠を取るよう追い出された。
戻ってきたのは二時間後だった。
榊原さんが寝た形跡だけは、なかった。
「榊原さん、休みました?」
「今はいい」
「三枝さんに見つかりますよ」
「解析が終わったら寝る」
「それ、終わらない人の言い方ですよ」
「佐伯。暇ならこの電源ログ見ろ」
完全に話を逸らされた。
それでも、解析は進んでいた。
同型機を別の条件で測定したデータでは再現しない。時計補正を外した生ログにも、対象五地点だけの同期反応が残っている。解析ソフトを別のものへ変えても、変動そのものは消えない。五台全部が偶然同じ故障をしたという説明は、時間が経つほど苦しくなっていった。
榊原さんはようやく椅子へ背を預け、小さく息を吐いた。
「少なくとも、五台の測定器が同じ原因で誤作動したと考えるより、五地点で何か同時性のある変化が起きたと考えるほうが自然になってきた。ただし原因まではまだ言えない」
「分かってます。『向こうがこっちを見たから』とかは言わないです」
「先に言おうと思ってた」
「そこまで信用ないですか?」
「あるなら昨日の時点で未来掲示板を最後まで読ませてる」
それには返す言葉がなかった。
◇
防犯カメラの映像を調べ始めたのは、そのあとだった。
対象地点それぞれから、観測器が前駆粒子の低下を記録した時間帯だけを抜き出し、時刻補正した五つの画面を並べる。
一つ目は、九条さんが八年前にいた体育館周辺の施設通路。
二つ目は、凛がいた公園の管理棟外周。
三つ目は、東雲さんの旅館周辺。
四つ目は、深町さんがいた図書館近くの設備区画。
五つ目は、神代朔夜が八年前にいた駐車場周辺。
建物も違えば、カメラの高さもレンズも違う。空の明るささえ揃っていない。
「最初の低下は二時三分十七秒でしたよね」
瀬尾が映像を合わせる。
五つの画面が同時に動く。
車が通る。
木の葉が揺れる。
人影が一つ横切る。
何も異常には見えなかった。
二回目。
三回目。
四回目。
五回目。
どこにも扉は現れないし、空間が露骨に伸びる様子もない。
「まあ、そんな簡単に何か映ってたら昨日の時点で気づきますよね」
俺が言うと、榊原さんは返事をせず、映像を一度最初まで戻した。
「瀬尾。各反応の最低値前後、〇・五秒だけフレーム単位で出してくれ」
「全部ですか?」
「まず一回目。五地点同時に」
映像が一枚ずつ静止画へ切り替わっていく。
一枚。
次。
さらに次。
「止めろ」
榊原さんの声に、全員が画面を見る。
俺には違いが分からなかった。
「体育館側。右端の柱を拡大」
瀬尾が拡大する。
柱の輪郭。本来ならまっすぐな垂直線が、その一フレームだけ途中で数ピクセルほど横へずれていた。
「圧縮ノイズじゃないですか?」
「その可能性が一番高い。だから同時刻の別地点を見る」
公園側。
フェンスの縦線が、一瞬だけ曲がっている。
旅館側では屋根の縁。
設備区画では金属配管。
駐車場では白線。
どれもごく小さな変化だ。言われなければ見落とすし、単体で見れば映像圧縮や手ぶれで済ませる程度しかない。
ところが、対象五地点すべてで、前駆粒子が最も低くなる瞬間にだけ、直線の一部へ似たような歪みが現れていた。
「カメラは同じ機種ですか?」
三枝さんが聞く。
「いや。メーカーも形式もバラバラだ」
「映像を保存してる機械は?」
「そこも統一されてない」
「だったら、もう一個気になるんですけど」
三枝さんは五つの画像を見比べた。
「全部『曲がってる』のは同じでも、曲がってる方向は違いますよね。体育館は右、公園は左。旅館は斜め下に見える。もし同じものが映ってるなら、場所ごとに見えてる方向が違うってことじゃないですか?」
榊原さんの手が止まった。
「……カメラの向き」
「え?」
「瀬尾、各カメラの設置位置、高さ、方位角、俯角を出せ。レンズの焦点距離も分かる範囲でいい」
「今から全部ですか?」
「この歪みが単なるノイズじゃないなら、画面上の右とか左には意味がない。現実空間のどちらへ歪んだように見えるかへ戻す必要がある」
そこからの作業は、俺にはほとんど手伝えなかった。
三枝さんも途中までは付き合っていたが、翌日の業務もあるため、午前三時前には瀬尾と一緒に帰った。俺も一度眠るよう言われ、仮眠室へ追い出された。
朝七時過ぎ。
会議室へ戻ると、昨夜まで並んでいた五地点の映像は消えていた。
代わりに大型モニターへ表示されていたのは、黒い背景に浮かぶ細い線だった。
「これ、何ですか?」
「五映像の歪みを、カメラの設置方向とレンズ特性を使って三次元の方向へ戻した」
「そんなことまでできるんですか?」
「精密な計測カメラじゃない。だから形を復元できるほど正確じゃない。ただ、歪みがどの方向へ現れたように見えるか、その傾向くらいなら出せる」
榊原さんが一地点目を表示する。
白い線。
次に二地点目。
角度の違う線。
三つ目、四つ目、五つ目。
地球上の北を上にして並べると、当然まとまりはない。
「ここまでは何の形にもならなかった。だから昨日、八年前の七分間を比較したときと同じ処理をした」
五地点それぞれの地図を消す。
異常中心を同じ原点へ合わせる。
八年前の記録から推定された空間歪みの向きを、同じ基準軸へ揃える。
「地球上の北とか南を捨てたんですね」
「ああ。五地点を『別の場所』として見るんじゃなく、それぞれが同じ何かへ接続していたという仮説を置いて、接続方向を基準に重ねた。ただし、これは仮説依存の処理だ。結果が綺麗だから正しい、という話ではない」
「分かってます」
「なら見るぞ」
キーが押される。
一地点目の線。
二地点目。
三地点目。
単体では意味がなかったものが、四つ目、五つ目と重なるにつれて、妙なまとまりを持ち始める。
全部が表示されたとき。
俺にも。
形が見えた。
「……部屋みたいですね」
完全な長方形ではない。
線は途中で途切れ、位置も少しずつずれている。観測に使ったのは防犯カメラで、しかも一フレームに現れたわずかな歪みだ。そこから推定したものなのだから、精度など期待できない。
それでも。
壁面のような平面。
床らしい境界。
天井らしい線。
四角い空間として解釈すると、妙に収まりがよかった。
さらに、一方の壁にだけ、縦長の空白が五つ並んでいる。
俺は未来掲示板で見た《五窓》という言葉を思い出した。
榊原さんも同じことを考えたのだろう。
しかし、口にはしなかった。
「今言えるのは、五地点の映像歪みを同一座標系へ変換したとき、一つの直方体構造を異なる方向から観測した場合と整合する形になる、ということだけだ」
「この五つの空白は?」
「今は空白だ。窓とも扉とも言うな。線を拾う段階で、こちらが未来の五窓を意識して都合のいい場所だけ残した可能性もある。俺たち以外の人間に元データを渡す」
「未来情報は伏せて?」
「当然だ。P5も観測室も五窓も教えない。『五地点の瞬間的な映像歪みに共通構造があるか』だけ見てもらう」
俺たち自身の目だけでは。
どうしても。
すでに知っている未来を切り離せない。
なら。
知らない人に見てもらえばいい。
◇
解析データは、政府系研究機関、大学の映像解析研究室、民間の画像解析企業の三か所へ送られた。
説明したのは、異なる場所で同時刻に撮影された五映像に瞬間的な幾何歪みが出ていること。それだけだった。
《観測室》という未来の呼称はもちろん、八年前の七分間との関係も伏せた。
一つ目の回答は、翌日の昼前に届いた。
《五映像の変形を独立した撮像ノイズとして扱うより、共通する直交面構造を仮定した場合のほうが幾何的誤差が小さい》
二つ目。
《別地点で撮影された映像ではあるが、各変形を三次元空間上へ逆投影した場合、同一構造物を異なる角度から観測したモデルと一定の整合性が認められる》
三つ目は最も慎重だった。
《入力映像の品質不足により形状確定はできない。ただし、解析対象が人工物様の三次元空間の投影である可能性を排除できない》
三者とも。
同じ「部屋」を確定したわけではない。
それでも。
誰も未来掲示板を知らない。
五窓という言葉も知らない。
そんな人たちが、現在のデータだけを見て、「共通する三次元構造がある可能性」を認めた。
「これでようやく、未来の掲示板とは別に仮説を立てられる」
榊原さんは三つの報告書を並べながら言った。
「五地点が、地球上の位置関係では説明できない共通空間へ接続している可能性がある。まだ『部屋』と断定するには早いが、共通構造そのものを研究対象にする根拠はできた」
「名前、必要ですよね?」
「未来の《観測室》は使わない」
「ですよね」
「五地点共通空間構造。英字仮称はGCS-01にする」
「ちょっと味気なくないですか?」
「研究対象の仮称に格好良さはいらない」
未来の名称を、そのまま現在へ持ってこない。
昨日までは《観測室》という答えを知った状態で、それを探していた。
今日からは違う。
俺たち自身が。
現在のデータから。
名前のない空間構造を見つけた。
◇
午後になって。
もう一つ。
初回観測データから妙な傾向が見つかった。
きっかけは、三枝さんの単純な質問だった。
「昨日出てた五回の小さい反応って、毎回五地点全部が同じ強さだったんですか?」
「いや」
榊原さんがグラフを拡大する。
「全地点で反応はしているが、最大振幅は毎回違う」
「順番あります?」
調べる。
一回目。
第一地点の反応が最大。
二回目。
第二地点。
三回目。
第三地点。
四回目。
第四地点。
五回目。
第五地点。
完全に綺麗な一対一ではない。ほかの地点にも反応は出ているし、数値差も大きくはない。
それでも。
最大値だけを並べれば。
一、二、三、四、五。
順番に移動していた。
「……順番に何かしてた?」
俺が言うと。
すぐ榊原さんに視線で止められた。
「今のは撤回します」
「そうしろ」
三枝さんがグラフを見たまま、慎重に口を開く。
「人が五つの窓から順番に覗いた、とか考えないほうがいいのは分かります。でも安全側に考えるなら、こっちが見てる途中で向こうの状態が順番に変わった。その前提で次回の計画を作ればいいですか?」
「ああ。それなら事実以上の意味を付けていない」
「観測終了時には、五地点全部が同時に大きく反応したんですよね?」
「そうだ。小さい周期反応は順番に最大地点が移る傾向があり、停止時だけ五地点がほぼ同時に逆方向へ振れた」
三枝さんは少し考え込んだ。
「じゃあ第二回やるときは、一地点ずつ途中で止めるとか、そういう試験は?」
「今はやらない」
「了解です。聞いただけです」
三枝さんの立場が。
だんだんはっきりしてきた気がする。
研究班が「何をすれば分かるか」を考える。
三枝さんは「分かるためにどこまでやっていいか」を考える。
どちらも必要だった。
◇
その日の夜。
俺は一人で未来掲示板を開いた。
今日、俺たちが付けたばかりの仮称。
《GCS-01》
試しに検索する。
一件だけ。
結果が出た。
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【歴史資料】GCS-01って何の略?
1441:名無しの探索者
懐かしい呼び方だな
1442:名無しの探索者
五地点共通空間構造
1443:名無しの探索者
観測室の旧称だろ
1444:名無しの探索者
まだ「観測室」って断定する前に
榊原研が使ってた仮称
1445:名無しの探索者
発生前資料だとそっちで残ってる
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「懐かしい呼び方だな」という書き込みが、妙におかしかった。あの堅苦しい仮称を、十年後の住民が懐かしがっている。明日、榊原さんに伝えたら、きっと「呼び名より解析結果を見ろ」と言われるだろう。
画面を閉じかけたところで、新着の書き込みが一件増えた。
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1446:名無しの探索者
GCS-01の初期復元図って今見ると怖いよな
1447:名無しの探索者
五窓のやつ?
1448:名無しの探索者
それもだけど
1449:名無しの探索者
初期図では写ってなかったから
1450:名無しの探索者
何が?
1451:名無しの探索者
六回目の解析で初めて出た
部屋の中央にあるやつ
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俺はそこで指を止めた。
六回目。
こちらは。
まだ。
一回しか観測していない。
しかも。
第二回は。
初回データの解析が終わるまで。
禁止した。
なら。
今読む必要はない。
そう思った。
でも。
次の書き込みは。
もう。
画面に表示されていた。
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1452:名無しの探索者
中央って何があるの?
1453:名無しの探索者
椅子
1454:名無しの探索者
ただの椅子?
1455:名無しの探索者
発見当時はそう思われてた
1456:名無しの探索者
違ったの?
1457:名無しの探索者
八年前の《七分間》の記録と照合して分かった
1458:名無しの探索者
あれ椅子じゃない
1459:名無しの探索者
人間一人を固定するための装置
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俺はそこで未来掲示板を閉じた。中央に見つかるという構造物のことは、明日、榊原さんに伝えよう。ただし、未来の書き込みから分かるのは、後年の解析で人間を固定する装置だと判断されたことだけだ。そこに実際に誰かがいたかどうかは分からない。
八年前、五地点で《七分間》を経験した五人と、今日の解析で浮かび上がった五つの開口部。そこへ、一人分の装置という新しい情報が加わった。偶然にしては奇妙な配置だが、だからといって今は何も断定できない。
スマホを机に伏せたあとも、復元図の中央に何も描かれていなかったことが気になった。見えていない場所について、こんなに考えたのは初めてだった。




