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第30話 世界一位を勧誘する前に、父親の安全管理を面接された

 神代朔夜と会うことになった翌朝。


 俺はいつもより三十分早く事務所へ来ていた。


 別に緊張しているわけではない。


 そう思いながら、昨日から三回目になる会議室の机拭きを終えたところで、後ろから声がした。


「佐伯さん。そこ、もう十分きれいですよ」


 振り返ると、凛が呆れた顔で立っていた。


「早いですね」


「佐伯さんに言われたくないです。それより、今日って神代さんの息子さんが来る日ですよね?」


「十一時です」


「未来の世界一位」


「今は十九歳の自動車整備科の学生です」


「それ、昨日から何回も言ってません?」


 言われて気づいた。


 確かに俺は、自分へ言い聞かせるように何度も繰り返している。


 神代朔夜。


 二〇三六年、探索者ランキング世界第一位。


 称号《無窮》。


 単独で災害級ダンジョンを完全攻略し、人類最強と呼ばれる男。


 未来掲示板で調べれば、いくらでも肩書きが出てくる。


 でも今日会うのは、そんな人間ではない。


 十九歳。


 横浜の専門学校で自動車整備を学び、妹を迎えに行けばジュースを買ってやる普通の兄。


 父親が最近よく分からない会社へ出入りし、危険な地下調査までしていることが気になって、自分から話を聞きたいと言ってきた青年だ。


「それにしても、ついに一位ですね」


 凛が会議室の椅子を整えながら言った。


「二位の九条さん、三位の私、四位の東雲さん、五位の深町さん。まだ全員が正式にアーク所属というわけじゃありませんけど、未来の上位五人とはこれで全員つながることになるんですよね?」


「そうなります」


 口にしてみると、妙な感覚があった。


 少し前まで、未来ランキングはスマホの中に並んでいる名前でしかなかった。


 今ではそれぞれに顔がある。


 九条は面倒になるとすぐ行動で解決しようとするし、凛は俺より冷静なくせに妙なところで大胆だ。


 東雲小春は旅館を守るために自分の能力と向き合い始め、深町律は自分だけが助かるより建物全体を守る方法を考えた。


 未来世界二位。


 三位。


 四位。


 五位。


 順位を外せば、全員まったく違う人間だった。


 なら一位も同じだ。


「だからこそ、今日はランキングの話をしません」


 俺が言うと、凛が頷いた。


「未来のことも?」


「全部は話しません。お父さんが俺たちと何をしているか、話せる範囲は神代さんとも決めてあります。前駆現象の存在については、昨日の病院の件まで含めて話す。ただ、朔夜君自身が世界一位になることも、家族に起きるはずだった未来も、本人から聞かれない限り俺からは出さないつもりです」


「お母さんのことも、ですか?」


 一瞬だけ答えが遅れた。


「……はい」


 未来ではまだ、神代美沙はダンジョン本発生時の横浜崩落で亡くなる。


 妹の未来は変わった。


 父親の失踪も消えた。


 それでも母親だけは、一年後の死亡記録が残っている。


 だからといって、今日初めてまともに話す十九歳へ「一年後、お母さんが死ぬ」と伝えるつもりにはなれなかった。


 俺たちには一年ある。


 救うための準備をする時間がある。


 恐怖だけを一年早く渡す必要はない。


「それでいいと思います」


 凛は静かに言った。


「未来を知ってる佐伯さんが、全部言わないって決めるのも大事だと思うので」


「最近、みんな俺の扱いが未来情報中毒みたいになってません?」


「違うんですか?」


「否定しにくいのが嫌ですね」


 そのとき事務所の入口が開き、九条が入ってきた。


「何の話だ?」


「佐伯さんが未来を見すぎる話です」


「今さらだろ」


「二人とも俺に厳しくないですか?」


 どうやら今日も味方はいないらしい。


          ◇


 午前十時五十七分。


 神代征司さんが息子を連れてきた。


 未来の記事で何度も顔を見ている。


 十九日前には喫茶店の窓越しから、本人が妹と歩いているところも見た。


 それでも。


 正面から向き合うのは初めてだった。


「初めまして。神代朔夜です」


 先に頭を下げられ、俺も慌てて立ち上がる。


「佐伯湊です。今日はわざわざ来てもらってありがとうございます」


「こっちからお願いしたので」


 声は思っていたより柔らかかった。


 黒髪は少し長めで、服装も特別目立つものではない。学校帰りではないため作業着ではなく、黒いパンツに薄手のパーカーという普通の格好をしている。


 未来の写真と同じなのは、目だった。


 相手を見るというより、見落とさないように観察している感じがする。


 神代さんが会議室へ入ろうとすると、朔夜が父親へ顔を向けた。


「父さんもいるの?」


「そのつもりだったが、いないほうが話しやすいなら外すぞ」


「別にいいけど、俺が聞きたいの父さんのことだから」


「私の?」


「最近帰ってくるたび、地下だの消える通路だの、話せないことばっかり増えてるだろ」


 神代さんがわずかに視線を逸らした。


 どうやら家庭ではかなり怪しまれているらしい。


「全部は守秘義務がある」


「それは分かってる。でも、『危険な仕事じゃない』って言った次の日に休んで水族館行こうって言われたら、逆に何かあったと思うだろ」


「……そういうものか」


「そういうものだよ」


 父親へ向ける口調は、未来の人類最強とは思えないほど普通だった。


 俺は少しだけ安心した。


「じゃあ、今日はそこから説明しましょうか」


 二人に座ってもらい、俺は事前にまとめていた資料を開いた。


 最初に話したのは、アーク・フロンティアが今何をしている会社なのか。


 未来の英雄集めでも。


 一年後の世界最強ギルドでもない。


 現在の話だ。


 地下で確認され始めている原因不明の空間異常。


 通常とは異なる粒子。


 八王子で確認された《扉》。


 横浜での前駆接続。


 栃木で見つかった未知生物。


 東京湾第六倉庫で捕獲した生きた個体。


 そして昨夜、病院地下に現れた木製の扉。


 話せる範囲で順番に説明すると、朔夜は途中で一度も口を挟まなかった。


 驚いていないわけではない。


 資料を見るたびに眉が動く。


 捕獲個体の写真を見たときには、明らかに息を止めた。


 それでも最後まで聞いてから、最初に尋ねたのは魔物についてではなかった。


「父さんが消えるところだったっていうのは、どれですか?」


 神代さんの顔が少し固まる。


「朔夜」


「そこを聞きに来たんだから、いいだろ」


 俺は神代さんを見た。


 止められなかったので、横浜の共同溝調査の資料を出す。


「この現象です」


 無人走行機が置かれていた場所。


 空間距離が伸び。


 機体が引き込まれ。


 最後にはケーブルまで向こう側へ持っていかれた記録。


「本来なら、神代さん自身がこの付近で測定する予定でした。ただ、俺たちが先に異常の可能性を把握できたので、全部無人化しました」


「それで機械だけ消えた?」


「はい」


 朔夜は画面を見たまま、父親へ尋ねる。


「これ、一人で行くつもりだったの?」


「当初はな。もちろん管理会社には予定を伝え、地上との通信手段も用意するつもりだった」


「それ、一人って言うんだよ」


「研究調査としては珍しくない」


「消えたら意味ないだろ」


 神代さんが黙った。


 十九日前。


 未来ではこの人が消えていた。


 朔夜は父親が何をしていたのか分からないまま、その後十年間を過ごしていた。


 でも今。


 その未来を知らない十九歳が。


 同じことを父親へ言っている。


「佐伯さん」


 突然呼ばれ、俺は姿勢を正した。


「はい」


「父さん、今は一人で行ってないんですか?」


「行かせてません。というより、俺自身を含めて、異常領域へ単独で入らないのを基本にしています。昨日の病院も人間は近づけず、点検ロボットだけを送っています」


「それを決めてるのは佐伯さん?」


「俺一人ではないです。神代さんや榊原さん、政府側の御厨さん、それから現場の人たちと決めています」


「誰かが『もう少し近くで見たい』って言ったら?」


「止めます」


 即答すると、神代さんがこちらを見る。


 何となく心当たりがある顔だった。


「研究者本人が行きたがっても?」


「止めます」


「父さんでも?」


「特に止めます」


「なぜ私だけ強調する」


「一回消えかけてますから」


 朔夜が初めて笑った。


 大きくではない。


 ほんの少し口元が緩んだ程度だった。


「なら、そこは安心しました」


 世界一位との初めての会話で。


 俺は父親の安全管理について面接されている。


 想像していた展開とはかなり違う。


          ◇


「逆に俺からも聞いていいですか?」


 一通り説明を終えたあと、俺は朔夜へ尋ねた。


「どうぞ」


「アークのことを知りたいと思ったのは、お父さんが関わっているからだけですか?」


 朔夜はすぐには答えなかった。


 机の上の資料へ視線を落とし、少し考えてから口を開く。


「最初はそうです。父さん、昔から興味持ったら周り見えなくなるから。母さんも心配してたし、俺も変なところに一人で行ってないか気になってました」


「否定できないな」


「父さんは黙ってて」


 神代さんが本当に黙る。


 家では息子のほうが強いのかもしれない。


「でも昨日、病院の話を聞いたんです。本来ない扉が出たことと、それを開けずに済んだこと。それで少し気になりました」


「何が?」


「佐伯さんたちって、化け物と戦う会社なんですか?」


 予想していなかった質問だった。


「今のところは違います」


「昨日父さんから聞いた話だと、強い人も集めてるって」


 どこまで話したんですか、という意味を込めて神代さんを見る。


「九条君のことまでは話した」


「そこまでならいいですけど」


 朔夜は俺たちのやり取りを見てから続けた。


「地下から変な生き物が出てきて、それに対抗できる人間がいるなら、普通はその人たちをもっと増やすと思ったんです。でも父さんが持って帰ってきた資料は、避難方法とか、病院の設備を分けるとか、そっちばっかりだった」


「昨日作っていたのが、そっちだったので」


「なんでです?」


 俺は少し考えた。


「戦える人が来るまで、生きていないと意味がないからです」


 朔夜がこちらを見る。


「世界中のどこで異常が起きても、九条さん一人が全部間に合うわけじゃない。今後戦える人が百人になっても千人になっても、たぶん同じです。だから、そこにいる普通の人が自分で危険から離れられる仕組みを作るほうが先だと思っています」


「それで病院も?」


「はい。病院の場合、逃げること自体が危険な人もいるので、今度は逃げなくても済む方法を考えることになりました」


「まだ答えはない?」


「ないです。昨日始めたばかりなので」


 朔夜はしばらく俺を見たあと、資料へ目を戻した。


「未来が分かってても?」


 一瞬。


 部屋の空気が止まった。


 神代さんが朔夜を見る。


 俺も。


「父さん」


「私は言っていない」


「じゃあ、どうして?」


 朔夜は少し困ったように眉を寄せた。


「分からないけど、話聞いてたら変だから」


「どこがです?」


「父さんが消えそうだった場所を事前に知ってた。東京湾の倉庫も、何かが出る前から警報つけてた。昨日の病院も、前の日に作ったばかりのマニュアルがちょうど届いてた」


 一つずつ。


 並べられる。


「全部偶然なら、逆にすごいでしょう」


 十九歳。


 自動車整備士志望。


 未来の世界一位。


 戦闘能力があるから一位になるわけではない。


 少なくとも今。


 この青年は。


 俺たちが説明した情報だけから。


 一番隠している部分へ近づいてきた。


「朔夜」


 神代さんが低い声で言った。


 止めるためではない。


 どこまで聞いていいのか確認するような声だった。


 俺は少し考えた。


 嘘をつく選択肢もある。


 たまたまです。


 独自の予測技術です。


 研究結果です。


 そう言えば今日のところは押し通せるかもしれない。


 でも。


 この相手とは。


 一年後だけではなく。


 十年後まで。


 同じ組織にいる可能性が高い。


「未来そのものを見ている、と言ったら信じますか?」


 朔夜は目を細めた。


「父さんがそれを信じてるなら、俺も最初から否定はしません」


「即答じゃないんですね」


「そりゃそうでしょう。初対面の人に未来見えますって言われて、そのまま信じるほうが怖いです」


「安心しました」


「でも、それなら聞きたいことがあります」


 来る。


 自分はどうなるのか。


 何歳で覚醒するのか。


 世界一位になるとはどういうことなのか。


 俺はそう考えた。


 違った。


「父さん、この先も死にますか?」


 俺は答えられなかった。


 朔夜は自分の未来を聞かなかった。


 最初から。


 ずっと。


 家族のことを聞いている。


「俺が見た未来では、以前は失踪していました」


 俺は慎重に言葉を選んだ。


「でも、その未来は変わりました。今見える十年後では、神代さんは生きています」


「これから変わる可能性は?」


「あります」


 朔夜の表情が硬くなる。


「未来は固定されていません。俺たちが何かすれば変わりますし、逆に何もしなくても別の要因で変化する可能性がある。だから『絶対に大丈夫』とは言えません」


「じゃあ、何のために見るんです?」


「大丈夫にするためです」


 今度は迷わなかった。


「悪い未来が見えたら、それを避ける。避けた結果、新しい問題が出たらまた対処する。俺のスマホに出る未来は答えじゃありません。今のまま進んだ場合の、十年後です」


 朔夜は黙っていた。


 俺は続ける。


「だから、お父さんの未来も一度変えました。東京湾でも変わった。昨日の病院でもまた未来が変わった。完璧にはできないけど、変えられることだけは確認しています」


 神代さんが息子を見る。


 何か言おうとして。


 やめた。


 これはたぶん。


 俺ではなく。


 朔夜自身が決めるところなのだ。


「分かりました」


 しばらくして。


 朔夜が言った。


「全部信じたわけじゃないです」


「それでいいです」


「でも、父さんがここにいる理由は分かりました」


 そう言って。


 今度は会議室の外へ視線を向けた。


 ガラス越しに。


 アークの事務所が見える。


 瀬尾が端末を操作し、榊原さんが持ち込んだ観測機器の記録が机に積まれている。


 少し離れたところでは、九条が何か食べながら書類を見ていた。


「佐伯さん」


「はい」


「ここ、自動車とか使います?」


 あまりにも突然で。


 意味が分からなかった。


「自動車?」


「会社なら車ありますよね。調査にも行くんでしょう?」


「あります。今後はかなり増やす予定ですけど」


「整備、どこに頼んでます?」


「今は普通に外部です」


「機材積む車も?」


「それもですね」


 朔夜は少し考える。


「じゃあ、俺でもできることあります?」


 今度は。


 俺が黙る番だった。


「まだ資格全部取ってないです。学生だし、エンジンばらすみたいな大きい作業を任されても困ります。でもタイヤとかバッテリーとか、日常点検ならできます。学校で習った範囲なら、機材車の積載バランスとかも見られると思います」


「どうして?」


 思わず聞いていた。


「未来の話を聞いたから?」


「それも少しはあります。でも」


 朔夜は父親を見る。


「また父さんが変な地下へ行くなら、せめて帰りの車くらい壊れないようにしとこうかなって」


「私のためか?」


「父さんのためだけじゃないよ。佐伯さんたちも乗るんだろ」


「それはそうですけど」


「なら同じです」


 世界第一位。


 人類最強。


 単独災害級ダンジョン攻略者。


 未来にはいくらでも大げさな肩書きが並んでいる。


 でも。


 アーク・フロンティアと神代朔夜の最初の接点が。


 戦闘ではなく。


 調査車両の日常点検になるかもしれない。


 俺は。


 少し笑ってしまった。


「何です?」


「いや。未来の人が知ったら驚くだろうなと思って」


「未来の俺、そんな有名なんですか?」


 しまった。


「そこはまだ言ってませんでしたね」


「今の言い方で有名なのは分かりました」


「佐伯君」


 神代さんが呆れたように俺を見る。


「君は隠し事が下手だな」


「最近よく分かってきました」


          ◇


 結局。


 その場で雇用契約を結ぶようなことはしなかった。


 朔夜は学生だ。


 学校もある。


 本人は整備士になるつもりで、卒業後の進路もまだ考えている。


 未来でアークへ入るからといって。


 その過程を全部飛ばす理由はない。


 そこで。


 学校や本人の予定に支障が出ない範囲で、まずアークの調査車両と装備運搬車を見てもらうことになった。


 正式な仕事として何かを任せる場合は、その時点で必要な手続きを取る。


 今日は。


 それだけ。


 それでも。


 帰り際。


 九条と鉢合わせた朔夜が足を止めた。


「この人が?」


 朔夜が俺を見る。


「何が?」


 九条は事情を知らない顔をしている。


「さっき言ってた、強い人」


「ああ。九条蓮司さんです」


「よろしく」


 九条が軽く手を上げる。


 朔夜も頭を下げた。


「神代朔夜です」


 未来世界一位と。


 未来世界二位。


 初対面。


 俺だけがそれを知っている。


 何か特別なことが起きるわけでもなかった。


 睨み合わない。


 空気も震えない。


 力を感じ取ったりもしない。


 ただ。


 九条が朔夜の手を見て言った。


「手、油ついてるぞ」


 朔夜が自分の指を見る。


「あ、本当だ。昨日実習で触ったの残ってたかな」


「整備士?」


「目指してます」


「へえ。うちの車も見てくれるらしいぞ」


 俺が説明すると。


 九条は一秒も迷わなかった。


「じゃあ俺のバイクも頼める?」


「会社の車じゃないでしょう」


「ついででいいだろ」


「何乗ってるんですか?」


 朔夜が普通に食いついた。


「大型」


「車種は?」


 そこから。


 二人だけで話が始まった。


 凛まで興味を持って近づいていく。


 俺は少し離れて、その様子を眺めた。


 十年後。


 この三人は。


 世界一位。


 二位。


 三位。


 同じ組織に所属している。


 未来の記事なら。


 きっと伝説みたいに書かれる。


 でも。


 最初は。


 バイクの話だった。


          ◇


 朔夜たちが帰ったあと。


 俺は一人で未来掲示板を開いた。


 検索する。


《神代朔夜 アーク・フロンティア 加入》


 以前。


 父親を救う前は二〇二九年。


 父親の未来が変わったあと。


 二〇二八年へ早まっていた。


 今は。


 さらに違う。


---


〖昔話〗神代朔夜ってアークといつから関係あったの?


188:名無しの探索者


正式な探索部所属は本発生後


でも発生前から出入りしてる


189:名無しの探索者


最初は調査車両の整備手伝いだろ


190:名無しの探索者


世界一位の初仕事がオイルとタイヤ確認なの何回見ても笑う


191:名無しの探索者


初仕事じゃなくて学生時代の協力な


192:名無しの探索者


この時点で九条と白石とも会ってる


193:名無しの探索者


後世の教科書だけ読むと

世界TOP3が発生前から同じ場所に集まってたことになるのおかしい


194:名無しの探索者


TOP3どころか四位五位も接触済みだぞ


195:名無しの探索者


何その人材ドラフト


---


 俺は。


 そこで画面を止めた。


 正式加入は。


 まだ先。


 でも。


 未来の記録には。


 もう書かれている。


《発生前からアークへ出入り》


 十九日前。


 俺は本人を見つけても。


 話しかけなかった。


 あのときは。


 それが正しかったと思う。


 未来で一位だからという理由だけで。


 今の人生へ踏み込まなかった。


 だから今日。


 神代朔夜は。


 自分の意思で。


 アークの扉を開けた。


 スマホを閉じようとして。


 一つ。


 気になる書き込みが目に入った。


---


196:名無しの探索者


しかし改めて見ると変だよな


197:名無しの探索者


何が?


198:名無しの探索者


二〇三六年の世界ランキングTOP5


全員日本人で


全員アーク


偶然で済ませるには偏りすぎだろ


199:名無しの探索者


その話やめろ


200:名無しの探索者


なんで?


201:名無しの探索者


古参なら知ってる


その五人


「日本人だから集まった」んじゃない


---


 続き。


 そう思って画面へ触れる。


 しかし。


 次の書き込みは。


 表示されなかった。


《このスレッドは削除されています》


 俺は。


 しばらく。


 その文字を見つめた。


 世界ランキング上位五人。


 全員日本人。


 全員アーク・フロンティア。


 俺は今まで。


 未来の英雄を一人ずつ探してきた。


 その結果だと思っていた。


 でも。


 未来掲示板では。


 どうやら。


 それだけでは説明できない何かとして。


 扱われている。


 三枝拓真の正式加入まで。


 あと三日。


 神代朔夜は。


 今日初めてアークへ来た。


 そして。


 未来ランキングTOP5に。


 俺がまだ知らない共通点があることを。


 初めて知った。

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― 新着の感想 ―
面白いです 続きも読みます それはそれとしてちょいちょい台詞がおかしいような? 「へえ。うちの車も見てくれるらしいぞ」 これへえ。とうちの〜で別では? でもそれだと口調がおかしい? 的外れだったら…
この掲示板ってどういう形式なんだ? 過去ログ行きではなく削除なのに見れてるし。 あまり考えないようにしているけれど、この掲示板がどういう場所なのかもわりと謎である。 佐伯の一部抜粋しか見れないし。
お、運営が急遽削除したか? ついに追いついてしまった ダンジョン発生前にスポットあてて進む話は珍しくて一気読みしてしまった とても面白いです ひとつ気になるのは法人化したけど税理士雇わないのかな?…
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