第152話:アクアリアの船長
一、 陸を往く黒き巨鯨と、豪快なる上陸
ズドズドズドズドズドズドズドズドズドズズズズズズズズズズンッ!!!!!!!!
大地を粉砕する凄まじい地響きと、荒野の泥土を数百メートル上空まで巻き上げる土煙。
アガルタの地上口を結界の内側から見守っていたレジスタンスの兵士たちや、さっき到着したばかりのスラムの喧嘩屋たちが、思わず耳を塞ぎながら目を丸くして呆然と立ち尽くしていた。
そこに姿を現したのは、常識という言葉をあざ笑うかのような圧倒的な異形。
全長百メートルを超える巨大な超大型ガレオン船の船底に、大型魔導機関によって駆動する直径十メートル級の鋼鉄車輪を左右に十対も取り付けた、陸上走破型巨大戦艦『黒鯨号』。そして、その左右と後方を固めるように群れをなす、数十隻の木造・鋼鉄交じりの陸上改造船団であった。
「……ありゃあ、本気で船じゃねぇか。海の荒波を走るためのモンに車輪くっつけて、荒野を爆走してきやがったのか……!?」
スラムのリーダーである赤髪の大男ザクスが、肩に担いだ巨大な大剣を地面に突き立て、呆れたように、しかし面白がりながら唾を吐き捨てた。
ガガガガガガガガガガガガガガガッ!
『黒鯨号』の船首に取り付けられた数十トンはあろうかという巨大な四爪の鋳鉄錨が、激しい火花を散らしながらアガルタの結界の手前数メートルの地面へ打ち込まれる。黒曜石の地表が抉れ、莫大な運動エネルギーが土煙となって爆発した。
「……総員、投錨完了ッ! 面舵いっぱいのまま、駆動機関の魔力蒸気を排出しろォォォッ!」
船団の最前線、旗艦『黒鯨号』の船首像の真上にそびえ立つ甲板から、腹の底から響き渡るような、雷鳴にも似た大声が放たれた。
シューーーーーーーーーーーーッ!!!!!
巨艦の側面から白い高圧蒸気が盛大に吹き出し、風を孕んでいた数千平方メートルもの巨大な黒帆が手際よく畳まれていく。
そして、その船首像の上に仁王立ちしていた男が、豪快に笑いながら、数十メートルの高さがある甲板から地上へ向かって直接飛び降りてきたのだ。
ズズズズズズズズズズンッ!
「ガハハハハハハハハッ! 素晴らしい! これが噂に聞く、あの神様の追撃をぶっ飛ばして地上の重力を解き放った反逆の隠れ里『アガルタ』かッ! 潮風の代わりに土埃が目に染みるが、気骨のある男どもが揃ってやがるじゃねぇか!」
着地の衝撃で地表を叩き割りながら立ち上がったのは、全高二メートル半にも及ぶ巨大な体躯を持つ男。
海風に晒された褐色の肌に、無数の肉弾戦の傷跡。褐色の胸元を大胆にはだけさせ、首には巨大な魔獣の牙を連ねた首飾り。腰には二本の巨大な手砲と、鍛え上げられた身の丈ほどもある両刃の戦斧を下げている。
彼こそが、教国の海上管理プロトコルを長年無視し続け、交易都市アクアリアの港を実質的に統治する海賊船団の総提督——『アクアリアの船長』バルバロスであった。
「……いい度胸だ。神の作った陸の法則なんぞ知ったことかと、船に車輪をつけて走ってくるなんざな」
カルムは、生身の両腕を組んだまま、不敵な八重歯を見せてバルバロスを見上げた。
彼の黄金の左目——【解体眼】は、バルバロスの巨体に流れるマナの流動と、彼が連れてきた数千人の船乗りたちの命の爆発力を瞬時に見極めていた。
「ハッ! 誰かと思えば、空を真っ二つに叩き斬りやがった『紅い極光』の主か! 案外、若いガキじゃねぇか!」
バルバロスは、雷のような大声で笑いながら、カルムの前までドシドシと大股で歩み寄ってきた。
二、 潮騒の覇者と、少年のスープ
「……おい、海賊の親分。土埃を撒き散らして登場するのは構わんが、ここには手負いの民や傷病者が大勢いる。少しは静かにできんのか」
エレナ・ルミナスが、手甲を外した両手を腰に当て、厳しい眼差しでバルバロスを見上げた。元教国聖騎士団長としての凛とした威厳は、どれほど甲冑が砕けようと失われることはない。
バルバロスは、エレナの顔を見るなり、片方の眉を太く跳ね上げた。
「……ぬ? どこかで見たような澄ましたツラだと思えば……教国の神殿艦隊で『白銀の防壁』と恐れられていたエレナ・ルミナス騎士団長じゃねぇか! ハッ、教国の犬だったお前が、なんでこんなところでスラムのガキや異端者どもの肩を持っていやがる?」
「……過去の肩書きは捨てた。今の私は、教国の神に抗い、命を懸けて人々の未来を護る『人間の不滅の盾』だ。言葉を慎め、船長」
エレナは一歩も引かずにバルバロスを睨み返す。
「ガハハハハッ! 違いねぇ! 昔のツラよりずっとマシになったじゃねぇか、女騎士! 教国のド不潔な神様に尻尾振ってる奴はヘドが出たが、己の意志で盾を構える奴なら、俺たち海賊も大歓迎だッ!」
バルバロスは、豪快に笑い飛ばすと、そのまま周囲を見渡した。
彼らアクアリアの船団は、教国の使徒たちが引き起こしたマナの乱気流と、津波の脅威を直接受けていた。
使徒エノクが地上に投下した『星喰いの楔』によって、海の潮流と潮位が狂乱し、アクアリアの波止場は五十メートルを超える大津波に飲み込まれる寸前だったのだ。
その絶対的な天災の前では、いくらバルバロスの船団が強大であろうと、為す術もなく全滅を覚悟するしかなかった。
だが、まさにその絶望の極限において。
成層圏から降り注いだカルムの【真理の解体刃】が、世界中の重力楔を同時に一刀両断し、空の異常を完璧に消し去った。
暴走していた津波は一瞬にしてただの穏やかな波へと還り、その瞬間に、カルムの放った熱と、アルの『再会のスープ』の命の温度が、光の粒子となって遠く離れたアクアリアの海の上にまで降り注いだのだ。
「……俺たちの船団はな、あの時、はっきりと感じたんだ」
バルバロスは、急に声音を低くし、真剣な眼差しでカルムとアルを見つめた。
「……波が静まり返ったその直後、胸の奥底に届いた……あの温けぇ、まるで死にかけた命を力ずくで抱き起こすような、圧倒的な『温度』をな。……俺の海の男としての直感が叫んだのさ。『陸の奥深くに、世界中の理不尽をぶっ殺して、俺たちを生かしてくれた本物の大頭目がいる』ってな!」
バルバロスは、大きな膝を地面につき、アルと同じ目線まで頭を下げた。
「……で、その『奇跡の温度』を作り出したのが……この小さな坊主か?」
「あ……うん! 僕はアル! カルムの料理人だよ!」
アルは、驚きながらもニッコリと微笑み、手にした木彫りの器にたっぷりと黄金色のスープを注いで、バルバロスへと差し出した。
「……船長さんたちも、遠くの海から走ってきてお腹ペコペコでしょ? 召し上がれ!」
「……おう、いただくぜ!」
バルバロスは、小さな器を豪快に片手で受け取ると、そのまま口へ流し込んだ。
ズズズズズズズズズズズズズッ……!!!!
次の瞬間。
全高二メートル半の海の巨漢が、まるで雷に打たれたかのように、その場でピタリと石化するように硬直した。
「……せ、船長……!? どうしたんだ! 毒でも入ってたか!?」
周囲にいたアクアリアの荒くれ者たちが、慌てて腰の手砲やカットラスに手を伸ばそうとした。
だが。
「……だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ死ぬほど美味ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!」
バルバロスが、天を仰いで大爆音の叫び声を上げた。その目からは、大粒の涙が滝のように溢れ出していた。
「……な、なんだこの味は……ッ!? 海の塩辛さも、過酷な航海で凍え切った手足も……長年俺たちの命を縛り付けてた恐怖すらも……全部、全部このスープの一口で、溶けて消えていきやがる……ッ!?」
バルバロスは、空になった器を握りしめ、そのまま地面に頭を擦り付けんばかりの勢いでアルへ向かって叫んだ。
「……坊主! いや、お頭ッ! 俺たちアクアリアの船団三千名、今この瞬間から、アンタとそっちの赤髪の修羅の配下になるッ! 俺たちの船も、大砲も、命も……全部アンタらの好きに使えぇぇぇッ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおっ!!! お頭に続けェェェッ!!!」」」
『黒鯨号』や周囲の陸上船から、数千人の海賊たちが一斉に歓声と甲高い口笛を吹き鳴らした。
力と、魂の温度だけを信じる海の男たちが、完全にアルの料理とカルムの炎の前に、ひれ伏した瞬間であった。
三、 大海原の技術、高空を翔ける「風読み」
アルのスープを腹いっぱい詰め込んだアクアリアの船乗りたちは、即座にアガルタの技術班やスラムの喧嘩屋たちと合流し、天門攻略のための『バベルの塔・修復計画』へと参加した。
「……おいおい、スラムのゴリラども! そんなガサツなネジの締め方をしてたら、高空のマナ乱気流に入った瞬間に接合部から爆砕するぞ!」
アクアリアの操舵長が、ザクスたちスラムの男たちが運んできた『バベルの塔』の駆動パーツを見ながら怒鳴り散らす。
「あぁん!? なんだとトド野郎! 俺たちが何十年もかけて磨き上げてきた宝物に文句つける気か!」
ザクスが胸を張って掴みかかる。
「文句じゃねぇ、技術の指導だ! お前らは頑丈な鉄を拾ってくるのは得意かもしれんが……『空の海』を渡るための風とマナの読み方を知らんのだろうが!」
そう、アクアリアの船団がアガルタにもたらしたのは、単なる数千人の戦闘員だけではなかった。
彼らには、教国の厳しい海上・上空監視を掻い潜り、荒れ狂うマナの嵐が吹き荒れる危険水域を何千回も航海してきた【高度な帆走技術と重魔導機関の運用ノウハウ】が存在していたのだ。
バルバロスは、アガルタの老技師が広げた『バベルの塔』の復元設計図の上に、自らの太い指をドンと叩きつけた。
「……老技師のジジイ。天門までの高度は、地表からおよそ二万メートル。そこは、人間が呼吸できる空気もなく、使徒の展開した『絶対絶圧のマナ防壁』が昼夜を問わず荒れ狂う、地上で最も危険な『空の死の海』だ」
バルバロスの言葉に、老技師も深刻な顔で頷いた。
「……うむ。スラムの諸君が運んでくれたユニットで、塔のエレベーター自体は起動できる。しかし、上空一万メートルを超えたあたりから発生する『マナ剪断面(ジェット気流)』によって、生身の人間は肉体が消体(分解)してしまうのだ」
「だからこそ、俺たちの番なんだよ」
バルバロスが、ニヤリと凶悪な笑みを浮かべた。
「……俺たちの『黒鯨号』の船底に搭載されている【超重圧魔導障壁発生装置(重マナ・バルブ)】と、高空の風を推進力に変える【流体マナ帆】。……こいつらを、スラムの持ってきた装甲板と一緒にバベルの塔の昇降機に組み込むのさ!」
老技師の瞳が、驚愕と歓喜で大きく見開かれた。
「……な、何ということだ……! スラムが持ってきた『骨組み(構造)』に、アクアリアの船団の『帆と機関(動力)』を融合させるというのか……!?」
「そうだ! 単なるエレベーターじゃねぇ! 天門の使徒どものツラに直接ぶちかます、世界最強の『空飛ぶ突入装甲艦・バベル号』を作り上げるんだよッ!」
「「「うおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」
設計図を囲んでいたアガルタの技師、スラムの喧嘩屋、そしてアクアリアの海賊たちが、一斉に抱き合って歓声を上げた。
スラムの民が、捨てられたゴミ山から拾い集めた不屈の「骨組み」。
海の男たちが、荒波と闘う中で磨き上げた絶対の「機導技術」。
アガルタの民が、地下都市で維持し続けていた永久の「魔力炉」。
全く異なる歴史を歩んできた人間たちの知恵と技術が、アルのスープの元で一つに溶け合い、神の領域へと至るための『絶対の翼』として結実しようとしていた。
四、 荒くれ者たちの誇りと、揺るぎなき同盟
夜が明けたアガルタの広場は、凄まじい活気と作業音で満ち溢れていた。
カン! カン! カン! カン!
巨大な金槌が打ち下ろされ、スラムの運んできた黒曜装甲板が、アクアリアの魔導溶接技術によって、バベルの塔の基部へと次々と合体されていく。
スラムの男たちが重い鉄骨を持ち上げ、アクアリアの船乗りたちが精密な回路を接続し、アガルタの民たちが彼らに温かいスープと水を手渡していく。
そこには、もはや「異端者」も「海賊」も「貧民」も存在しなかった。
全員が、自分たちの手で神の理不尽をぶっ壊し、人間の自由を掴み取るための【反逆の仲間】として、汗を流していた。
「……いい景色だな、カルム殿」
広場の端で、修復されたばかりの腕で冷たい水を飲みながら、エレナがカルムに声をかけた。
「……ああ。……あいつら、喧嘩ばかりしてやがるが……手だけは絶対に止めねぇな」
カルムは、腕を組みながら、巨大な装甲板を二人で持ち上げているザクスとバルバロスの姿を見て、ニッと笑った。
「「せーのっ、うおおおおおおッ!!」」
ザクスの馬鹿力と、バルバロスの巨躯が合わさり、数十トンの装甲板が寸分の狂いもなく接合部へと叩き込まれる。
「へっ、海のトドにしては良い力してんじゃねぇか、バルバロス!」
「ハッ! スラムのゴリラに褒められても嬉しくねぇが……まあ、腰の入れ方は悪くねぇぞ、ザクス!」
二人の巨漢が、泥だらけの顔で互いの肩をガツンと叩き合い、豪快に笑い合う。
互いの強さを認め合った男たちの間に、固い友情が芽生えていた。
「……神の支配下では、人は恐れによって分断されていた」
エレナが、静かに語る。
「……自分だけが助かりたい、隣人を犠牲にしてでも神の愛を得たいという疑心暗鬼。それが教国の作ったルールの本質だった。……だが、カルム殿とアル殿が示したのは、全く逆の道だ。……互いを信頼し、分け合い、共に立ち上がることの強さだ」
「……俺は、大層なことをした覚えはねぇよ」
カルムが、ぶっきらぼうに後頭部を掻いた。
「……俺はただ、俺の邪魔をする奴らを叩き斬って、アルの作った美味いスープを食っただけだ。……周りの連中が勝手に、俺たちの火の周りに集まってきただけさ」
「ふふ、それが『真のリーダー』というものなのだよ、カルム殿」
エレナが、嬉しそうに微笑んだ。
力で屈服させるのではない。
その存在と、その温もりによって、自然と人々が集まり、自らの意志で戦う勇気を得る。
カルムという真紅の修羅と、アルという黄金の料理人は、知らず知らずのうちに、地上全域の人間たちを束ねる【不滅の北極星】となっていたのだ。
五、 結集する地上の絆、次なる星の影
作業が最高潮を迎えていた昼下がり。
アガルタの結界の北側、聖都ルミナへと続く街道の彼方から、再び無数のマナの反応が近づいてくるのが感知された。
「……カルム様! 北の街道から、新たな軍勢が近づいてきます!」
見張りの兵士が叫ぶ。
「……今度は北か。……アクアリアの海賊の次は、一体何が来やがった?」
カルムが、黄金の解体眼で視線を北へ向けた。
だが、今度の軍勢は、スラムの喧嘩屋たちのような野生の地響きも、アクアリアの船団のような爆走音も立てていなかった。
静寂。
規律。
整然と揃えられた、数千の足音。
「……これは……ッ!?」
エレナの瞳が、激しく揺れた。
街道の向こう、霧の晴れ間から姿を現したのは。
白銀の甲冑を黒い布で覆い隠し、教国の神聖な紋章を自らの手で削り落とした、数千人の重装騎士団。
その先頭を歩むのは、教国の若手将校レオニス。
そして彼らが掲げている旗には、神の紋章ではなく——かつてエレナ・ルミナスが掲げていた【不滅の双剣と大盾】の意匠が誇り高く刻まれていた。
「……レオニス……! それに……聖都の離反騎士たち……!」
エレナの声が、震えていた。
かつて教国の命を受け、カルムやアルを「異端」として追い詰めていた元仲間たち。
彼らが今、神への信仰を捨て、自らの意志で「人間としての正義」を果たすために、アガルタの地へと帰還を果たしたのだ。
「……エレナ様ッ!!」
先頭を歩むレオニスが、アガルタの結界の前に到着すると同時に、甲冑の膝を突き、深々と頭を下げた。
それに続き、背後の数千人の騎士たちが、一斉に地を揺るがす音を立てて片膝を突いた。
「……聖都ルミナ離反騎士団、三千二〇名! ……我らは神の虚飾を捨て、真の正義と民を護るため、エレナ・ルミナス様、そして赤蓮の英雄カルム様の下へ馳せ参じましたッ!」
レオニスの誓いの声が、アガルタの空へと凛として響き渡った。
六、 破滅の天門へ向けた、大航海の決意
スラムの喧嘩屋たち(ザクス)。
アクアリアの船団。
聖都ルミナの離反騎士たち(レオニス与エレナ)。
そして、地上の明日を信じるアガルタの民衆たち。
生まれも、立場も、過去も全て異なる地上のあらゆる抵抗勢力が。
ついに、このアガルタの地に【完全集結】を果たしたのだ。
数万におよぶ、人間の大軍勢。
彼らを繋ぎ止めているのは、使徒のような恐怖や強制ではない。
アルが作った一杯のスープの温もりと、カルムが切り拓いた絶大な希望の光。
「……揃ったな」
カルムは、アガルタの地上口に集結した数万の仲間たちを見渡し、胸の奥底から込み上げてくる熱い熱量を感じていた。
両腕の『赤蓮の紋様』が、真紅と緋色の光を激しく脈動させる。
彼の右手には【命刃・赤蓮】。左手には【理刃・緋断】。
そして隣には、黄金の真理の目を輝かせる最高の相棒アルと、進化した漆黒の魔狼オルタ。
「……おい、お前らッ!」
カルムが、アガルタの全人々に向け、天を突き刺すような声で叫んだ。
「……神様どもは、空の上の『天門』で、俺たちが怯えて震えるのを待ってやがる! ……だが、俺たちは逃げねぇ! 隠れねぇ! ……全員で、あの空の上の城へ殴り込みに行くぞッ!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!」」」
地を揺るがす、数万の反逆の咆哮。
「……スラムの持ってきた鉄で! 海賊の作った帆で! 騎士たちの掲げる剣で! ……あいつらの理不尽な神様気取りを、根底から叩き潰してやるッ!」
アルもまた、古びた黒鉄の包丁を高く掲げ、朝日に向かって叫んだ。
「……みんなで、絶対に勝ちに行こう! 空の上でも、僕が最高の料理をみんなに作るからねッ!」
修復が進む『空飛ぶ突入装甲艦・バベル号』の巨体が、朝の光を浴びて鈍い輝きを放ち始める。
地上の反撃の準備は、完全に整った。
恐怖の時代は終わりを告げ、人間たちが自らの手で未来を掴み取るための【天門攻略大航海】が、いよいよその歴史的な第一歩を踏み出そうとしていた!




