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コゲの物語~恋敵を自分の家にお誘いする悪役令嬢

 小麦畑みたいな悪役令嬢の長髪が彼女のビニール傘越しに街灯に照らされて少し眩しい。

 「で、要件は何だ?俺の事を笑いにでも来たのか?」

 「いや別にこんなところで傘もささずに、ピアノなんて弾いてたら、風邪ひいちゃうよって教えにきたの」

 特段悪気もなさそうに、渚色のピアノを見下ろして悪役令嬢蝦夷菊三毛は言った。

 「誰のせいだよ、、、」

 それを聞いた彼女は少しはにかんだ。

 「私の家ここから近いんだ、、、」

 「そうか、だから何だ?」

 「バスタオルと着替え貸してあげようか?あと傘」

 俺は怪物でも観るみたいに蝦夷菊の表情を見る。彼女は何かおかしなことでも言っていますか?と言わんばかりにこちらに首をかしげる。

 

 「お前イカレてんのか?」

 「うん、多分私ってイカれてるんだと思う。というか、私はもう人間として壊れているんだと思う。むしろ壊れてしかるべきなんだと思う。だからあんまり人の気持ちとかわかんないや。答えは?、、、」

 「行くわけねえだろ、自分の元カレの唇を奪ったやつの家とか、、、」

 「真白君はもう君のものじゃないでしょ。だから奪ってない。」

 正論だな。

 「正論だな、、、」

 思った言葉がそのまま口から出た。

 「奪ってなかったしても、行かねえよ。自分の彼氏の元交際相手を家に呼ぶのは、普通は気まずいと思うけどな。それに、今は雨に濡れたい。じゃあな、、、」

 「でもさ、、、」

 彼女は不思議そうにこちらの胸元あたりを見る。

 「なんだ?」

 「服透けてるよ?」

 そんなこと正直俺にとってはどうでもよかった。

 「夜だから大丈夫だろ、誰も見やしねえよ、、、」

 「夜だから大丈夫じゃないんじゃない?別に取って食おうってわけじゃないんだからさ、、、」

 「お前いい奴なのか?嫌な奴なのか?どっちだ、、、」

 「フィフティーフィフティーかな?でも自認は悪役令嬢なんだ!」

 目の前にいる悪役令嬢は左手についた五本の指を、何度かひらりひらりとくるくるさせた。

 「意味わからん、、、ほんとに俺が行ってもいいのか?」

 「私が誘ったからね」

 自身の胸をバンとたたいた。

 

 ◇


 俺は元カレの唇を奪ったやつと相合傘をしながら、そいつの家まで流されるままに来てしまった。

 「玄関で待ってればいいか?」

 「いいわけないっしょ、コゲ君は鏡としゃべる癖付けたほうがいいよ。」

 そういいながら潮風によって、少し錆びたドアノブを悪役令嬢はゆったりと開く。

 「コゲ君って呼ぶな、真白以外にそう呼ばれたくない」

 「やっぱり、真白君の事ほんとに好きなんだね。さっき、失恋ってこんなに辛いのかよ、恨むぜ神様、、、ってピアノ弾きながら言ってもんね。」

 「聞いてたのかよ、」

 俺は先ほどの自身の愚行を思い出し少し頬を赤らめる。

 「御門君はシャワー浴びてきて、私は着替えの用意しとくから、」

 タオルを渡しながら悪役令嬢は言った。

 「本当にいいのか?」

 「気使いすぎっしょ、私は悪役令嬢なんだぜ!」

 彼女はそう言いながらまた胸を張った。

 「だから何だよそれ、、、」

 「ええ!このネタ伝わらないか~君も一応読書同好会なんだから、本は読んだ方がいいぜ!」

 親指を立てながら彼女は言った。

 「知るかよ!」

 俺は少しにらみながら怒るふりをして言った。

 「ハッもしかして、御門君?さっきから妙にムラムラしているなと思ったら、、、」

 「ムラムラしてねえ!お前の奇行にムカムカしてんだよ。今度は何だ?」

 「私と一緒にお風呂入りたかった?」 

 顔に手を当てながら悪役令嬢は少し恥ずかしがるふりをして言った。

 「なんでそうなるんだ?クソビッチ」

 「ああ御門君は今、女の子に言ってはいけない言葉を使いました。悪役令嬢ポイント減点です。」

 「知るかよ」

 そういった俺は玄関から入って右のところにある自称悪役令嬢の家の風呂の中に入っていく。


 その風呂は洗面台も兼ねたユニットバスで、見ず知らずの俺を簡単に入れてくれたという事は、おそらく一人暮らしなのだろうという事が想像できた。


 俺は洗面台を見ながら服を脱いで自分の体を見つめる。

 「私も自分に正直になるべきなのかな?」

 俺は自分の心のある部分を見ながら、そう独り言ちてシャワーを浴び始める。

 

 


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