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悪役令嬢の記憶~朝の光の中で起きる悪役令嬢

 ブラウンの部屋で私は瞼を一瞬つむる。


 すると私は足を延ばして座っている、目を開ける。そこは先ほどまでの豪奢で洋風な寝室ではなかった。


 眩しい光が眼の中に入ってくる、下を見つめると、草花の上をランランと蝶々たちが舞っている。横を見るとひとりの少年が私の肩に首を預けてすやすやと眠っている。


 そのタイムスリップのような感覚がまるで小説において場面が進んでいくみたいだと思った。


 その少年は触れたら溶けてしまいそうなほど白い髪と肌をしている。このまばゆい白色を私はどこかで見たことがあるような気がする。その少年の肩を雪を持つようにやんわりとゆする。その少年の瞼がゆったりと開かれる。


 「ああごめんなさいアスター姉さま、僕寝ちゃってたのかな」

 瞼をこすりながら、その少年は目を覚ました。その少年の瞳はまるで彼の白い髪の毛と肌をショートケーキのように見せてしまうほどに美しい赤だった。その時、その少年が何者なのかを私は思い出した。


 「え!真白君じゃん!、っていうか夢なのか?異世界転生なのか?はわからないのだけれど。夢だとしたら、こんな時に思い出すほど私って君と親しかったっけ?今日会ったばっかりだよね?異世界転生だとしたら真白君がいるの意味わかんないし、、、」


 「え?何言ってるのアスター姉さま?」

 考え込む私を怪訝そうな目で真白は私の事を見つめる。

 「だから私はアスターじゃないってば、蝦夷菊三毛だって。何回言えばいいのよ真白君。」

 「え~アスター姉さまはアスター姉さまでしょ、というかさっきから言っているマシロクン?ってだれ?」

 「何言ってんの?真白君が言ったんじゃん。」

 「僕の名前は雪兎真白だって」

 彼のふわふわとしたマシュマロを噛むみたいなしゃべり方をまねしながら私は言った。

 「え?僕の名前はスノーホワイトだよ。スノーホワイト・ダーク。忘れないでよ。」

 「え?」

 スノーホワイトとは【一週目の人生で成金貴族に捨てられた悪役令嬢は二週目の人生でその男に復讐を誓う】に出てくる。主人公の悪役令嬢アスターからブラウンをNTRしたブラウンの弟の名前だ。

 「だから忘れないでよ、夢から覚めても、、、」

 「ッ!」


 そうスノーホワイトに言われた瞬間、段々と私の意識がこの世界から薄まっていき、急激な睡魔に襲われる。この夢が始まる前に見た水中にゆったり沈んでいくような感覚がまた私を襲う。


 ◇


 ゆったりと瞼を開ける、そこにあったのは見慣れた安っぽい天井とせんべい布団。女子力どころか人間力すら感じさせない、一人暮らしのマイホームであった。


 一つ先ほどと違うのは、深く締めたカーテンの隙間から朝の光が漏れ出ている。


 「本当に眠れたんだ、あたし」

 私が人を殺したあの日以来、赤子に首を絞められる夢を眠るたびに見ていた私はそんな些細な日常に感動した。

 「ああ、お風呂入らなきゃ。それに、、」

 腹の虫がキュウッっという音を立てながら鳴いた。

 「ご飯めんどくさいな~カロリーメイトでいいか、、、」

 引っ越してきて以来、私はまともな人間としての生活を送っていない気がする。 

 

 私は気持ちの換気のため窓を少し開ける、そこから流れてくる潮の香りはいつもだったら、悪夢のための眠気覚ましにしかならないものではあるが、今日は少しだけ気持ちが良かった。

 


 




 

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