第二章16~20 要点まとめ
際允は墨然の部屋に入る。
第一の世界で見たミニマリストな住所とは違い、現在の墨然の部屋には野球のポスターや漫画があふれ、普通のスポーツ少年らしい日常が広がっていた。
机の上には「実の両親との写真」と「由心・妲依娜・輝絡との写真」が並んでいる。その幸せな家族写真胸を突かれた際允は、第一の世界での止湮との記憶を思い出す。
それは、際允の死について話し合うため、初めて墨然を客として家に招いたあの日の午後。
墨然が帰った後、際允は止湮から絵の話を振られ、前世で描いた止湮の似顔絵の話でからかわれた。第一の世界で、止湮は警察機関で働く墨然の協力を仰ぐため、際允に犯人・輝絡の似顔絵を描くよう提案し、際允はそれに応じた。
絵を見られるのが恥ずかしい際允を優しく気遣い、「墨然なら絶対に笑わない、手がかりを喜ぶはずだ」と告げた止湮。当時の際允は止湮と強い信頼で結ばれ、深い安堵と喜びを得ていた。
第二の世界、現在の際允は幸せそうな家族写真を見つめながら、「第一の世界の墨然は、本当に輝絡が犯人だと信じて調査していたのか? 家族を庇って無意識に目を逸らし、そのせいで6年間の調査が空転したのではないか」と疑念を抱く。
しかし、この世界ではまだ事件は起きていない。際允は「今の墨然なら信じてくれるかもしれない」と一縷の望みを抱き、自分が心の底で墨然に信じてもらうことを切望している事実に気づく。
高校生活最後の誕生日に止湮から「おめでとう」を言ってもらえない寂しさを抱えながら、際允は今夜の死を回避するために明日の学校を休む決意をする。
そこへドアが三回ノックされ、墨然が部屋に入ってきた。
際允は墨然に対し、輝絡こそが第一の世界で自分を殺した犯人がであることを打ち明ける。
だが墨然は、火の元霊が刃物を使った不合理さや動機の不明さを突きつけ、記憶違いや第三の契約相手による偽装を疑った。
墨然にとって、家族である輝絡が殺人犯であるという事実は「この世で一番あり得ないこと」だった。
ありのままを打ち明けても信じてもらえなかった際允は、墨然への期待が独りよがりだったと絶望する。
何もしなくても「家族」として無条件に信頼される輝絡に、その反吐が出るほどの理不尽さに、激しい嫉妬と怨嗟を抱き、「最初から間違っていたのだろうか」と自問する。
墨然に信じてもらうことを諦めた際允に、墨然は「輝絡の犯行は信じられないが、先輩が死ぬ運命にあることは信じる。死の運命を変える手助けがしたい」と寂しげに訴える。
その姿に「自分を信じてほしいと駄々をこねる16歳の子供」を見て、際允は負の感情を落ち着かせ、部屋に泊めてくれたことへの感謝を告げる。
消灯後、ベッドに入った際允はスマホを確認する。第一の世界の18歳の誕生日に止湮がくれた言葉を思い出すが、この世界ではメッセージは届いておらず、どうしようもない虚しさと寂しさを感じる。
暖房の効いた布団の中で、際允は嗅ぎ慣れない心地いい残り香に包まれて睡魔に落ちる。微睡みの中、それが、あの日と同じ墨然の「金木犀」の匂いであると思い出す。




