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探偵ニコラス

近いうちに題名とあらすじを変更します。

また今回から文体が変わったり行間が変わったりします。

試行錯誤して最適な文体を探しています、読みにくいなどご迷惑をおかけしますが、お付き合いいただけると幸いです。





「娼館の女性と店外で会ってますね。落合場所は北地区の貧民街入口横の井戸のようです」


「まあありがとう! これで旦那の尻を引っぱたけるわ!」


 僕は壮年の女性に木札を貰う。これで依頼完了だ。


「ところでその方のお名前はわかる? 直接出向いてとっちめたいの!」


「依頼書には浮気相手の有無の特定と密会場所の特定ですので……」


 親指と人差し指で円を作り婦人に見せる。婦人は目つきを一瞬鋭くさせたが、ため息を吐いて僕に銀貨を一枚くれた。


「マルダナ系列の娼館のメライザという方ですね。腰まで伸びる金の髪と唇下の黒子が特徴です。西地区の歓楽街で名前を出せばわかるかと」




 納品カウンターで木札を渡し報酬を受け取る。


 これで銀貨十枚の報酬だ。やはり時間がかかるだけあって割のいい仕事だ。


 調子に乗って支部長に殴られてから二十日経った。僕はまだゲールにいる。獣人達と仲良くなったため居心地がよくなったのだ。宿も朝露の香呂のままだ。


 冒険者活動を始めて生活を立てているが、別に働かなくても余裕で暮らせる資金を持っている。家から持ってきたお金のおかげで僕はちょっとした小金持ちだと最近知った。お金は安全のために商人ギルドの銀行へ預けてある。


 ブロンズ級冒険者が受けられる依頼で、僕が主に受けている依頼は調査依頼、主に探偵業だ。拘束時間は多いが報酬が高い。それに一人で受けられるのがいい。探偵依頼の依頼主はお金持ちが多い。内容は浮気調査だったり娘の行動監視だったり様々。本来はブロンズが受けられる依頼の中でも高い難易度を誇るらしいが、僕は子供で冒険者に見られないため、やりやすいのだ。このまま続けていけば討伐依頼等の危険なことをせずアイアン級になれるかもしれない。


 冒険者のクラスアップは上がるランクによって条件が変わる。アイアンの場合は依頼難度に応じた依頼数をこなすこと。それができれば試験などせずにアイアンに上がる。いつかは上がれればいいと気長にやっている。はやくランクアップしてベックとミサトリアと仕事がしたいが、最短でも十年と言われているからね。




 南門通りの露店街からわき道を通ってしばらく進む。


 紙とペンの描かれた看板、道具屋アイゼンへと入る。


 扉の開閉で取り付けられたベルが鳴る。


「いらっしゃい。お、また鑑定が必要かいニコラス君?」


 アイゼンが目を糸にして微笑む。目を開かなければ怖がられないのではとアドバイスしたらこうやって微笑むようになったのだ。最近は『糸目の商人』と呼ばれているんだとか。


「うん、今回はこれ。調査中にターゲットが落としたものなんだけど」


 僕はアイゼンに装飾の入った金色のボタンを渡す。


「そろそろ冒険者らしくパーティーでも組んでみたらどうだい? ニコラス君、冒険者じゃなくて凄腕探偵にでもなるのかい?」


「割がいいんだよ、調査依頼って。それに支部長と殴りあった新人って噂が消えなくて人が寄り付かないから……」


「あはは、それなら賭けは私のほうが勝ちそうだね。最近お付き合いする商会も増えてきてね」


「商人仲間は友達とは言わないからだめ」


 僕とアイゼンはこの店が開いてから賭けをしている。賭けの内容は『どちらが早く友達を作れるか』だ。友達ができた時点でその友達を相手に見せる。賭けの報酬は金貨十枚とかなり高い。


「そうかい、それでも私が勝ちそうだけどね、探偵さん。はい、このボタンは政務庁の入館バッチだね。すごく大事なものだから落とすはずはないと思うんだけど、ニコラス君?」


 酒場で脱がれた上着にぶつかってしまい、なぜかそれが落ちただけだ。決して盗んではいない。拾ったはいいがすぐに拾ったのを忘れてしまい返すのを忘れたのだ。心に言い聞かせる。


「落ちてたのを拾ったのは間違いないから。そっか、政務庁の人ね……あんまり首突っ込みたくないなぁ。マルダナ商会にまだ見張られてるしゲールの中枢にはかかわりたくない」


「私も依頼の破棄を勧めるよ。このボタンどうする? こっちで捨てておこうか?」


「お願いするよ。この依頼は中途報告だけして手を引く。ところで鑑定料、次は何をすればいい?」


 どうしてもこの鑑定料の話をするときは苦虫を噛んだ気分になる。なにせ料と言いながら金じゃないのだ。


「そうだね、じゃあ今回の料金も『初心者酒場でパーティーを探す』にしようかな。そろそろ一回でも町を出てみてもいいんじゃないかい?」


 ほらきた。前にも一度、鑑定料としてアイゼンに初心者酒場に連れていかれたことがある。アイゼンと一緒に一杯やりながら僕のパーティーを探したのだ。結果は惨敗、というより僕と相性が合わなかった。


 初心者酒場には僕と同じように駆け出しのブロンズ級冒険者が多い。そのためパーティーも組みやすい。だが僕が支部長室で暴れたのが噂となっていて、子供の冒険者には注意しろと広まってしまった。子供の駆け出し冒険者など僕しかいないのですぐに警戒されてしまう。


 それに相手が警戒とかだけじゃない。僕もあそこにいる人たちは好きじゃない。なんというか、こう、輝いているのだ。これから俺たちは素晴らしい世界を歩むんだという感じで輝いているのだ。それは別にいい。だが話を聞いても夢物語を語りだしたりと、計画性のないプランを堂々と披露するのだ。あとまったくもって強そうじゃない。体は鍛えられていないし、歩き方も素人臭さがにじみ出てるくせして堂々としてる、一緒にいるだけでチンピラにたかられそうなのが嫌だ。もしくは彼らがチンピラに見える。


 彼らと組むくらいなら一人のほうがいい。


 僕が露骨に嫌そうな顔をしても、アイゼンは微笑むだけだ。憎々しい。


「睨んでもだめだよニコラス君。鑑定はしちゃったしね。それとも『どこかのクランに加入』とかにする? 私はそれも面白そうだから構わないんだけど」


「わかったよ、今夜初心者酒場にいってくるよ! ちゃんとボタン処理してね、また来る!」


 僕は言い捨てて店を出た。背中から機嫌のいい声音で『ありがとうございましたー』と聞こえた。アイゼンも友達いないくせに!




 初心者酒場の前に冒険者ギルドの本館に行く。依頼の中途報告と破棄の申請だ。本来、破棄申請は信用度を減らしてしまうのでランクアップに響くのだが、調査依頼に関しては内容次第で減らされない。たぶん今回も大丈夫だろう。


 昼過ぎなので並ばずに受付嬢に会える。


「あら、ニコラス君じゃない、今日はどうしたの?」


 二十歳くらいの受付嬢、エルベナさんだったか。どうにも支部長室の一件で僕の名前がギルド中に広がってしまったらしく、職員全員が僕の名前を憶えている。おかげで僕も職員の名前を覚える羽目になった。


「こんにちわエルベナさん。依頼の中途報告と破棄申請をしに来ました」


「そう、そうしたら二階の第五会議室で待ってて、担当を呼んでくるわ」


 言われた通り二階の会議室で待つことにする。




 第五会議室は狭い。通称取調室と言われる部屋だ。椅子が二脚ありその間に小さい机が一つ。僕は奥の椅子へ座って待つ。しばらくすると低級調査依頼担当のマーロックが来た。納品所にいた彼だ。メインの仕事は調査依頼系の担当だったらしい。


「久しぶりニコラス、どう? 順調かい?」


 気さくな様子で僕の前の椅子へ座る。マーロックは二つの書類を持ってきていた。僕の今受けている依頼書だろう。


「三日ぶりですマーロックさん。順調だったんですが、また厄介ごとのような気がして、依頼の破棄をしたいんですよ」


「んー了解、どっちの依頼かな?」


「監視調査の方です。ギルド経由報告のです」


 マーロックが書類を確認し眉を顰める。


「ふーん、どこまで調べた?」


「ターゲットの素性ですかね、それとここ最近ターゲットがひいきにしている人物の名前です」


「ここで報告できる内容は?」


「ターゲットは職員でもないのに政務庁に出入りできる資格を持っている、それだけですかね」


 マーロックは顎を掻いて書類とにらめっこをしている。左手の人差し指で机を定間隔でたたいている。考え事をしているときのマーロックの癖だ。


「んじゃここからは個人的に、ひいきにしている人物とは?」


「身のこなしは魔法使い系、ですね。装備から言ってここらへんでは見ない装備をしていました。たぶん偽名か何かだと思いますが『カチャナ』と呼ばれていました」


「そうかい、異国の魔法使いと密会する、政務庁に出入りできる人間ね。こわいわ、厄介ごとの匂いしかしない。上に回そう」


 そういうとマーロックは書類に何かを書き込んでいく。書き終わると僕に告げた。


「破棄申請を受理する。中途報告報酬も用意するので明日以降、納品所まで取りに来てくれ」


「ありがとうございます」


 僕が立ち上がって扉に手を掛けるとマーロックが声を掛けてきた。


「ニコラス、そろそろ討伐依頼の一つでも受けてみたらどうだい? これじゃ冒険者じゃなくて密偵だよ? みんなでニコラスの活躍楽しみにしてるんだけどね。支部長と殴りあえる新人冒険者は期待が高いよ?」


 僕もそれはわかっている。このままじゃ完全に密偵見習いだ。僕が目指した冒険者はこれじゃない。


「仕方ないじゃないですか、どこかの誰かさんが噂を流したせいでパーティーも組めないんですよ?」


 一人で遠出をして魔物を狩るというのは危険行為だ。野営時には見張りを立てられず安易に休めない、探索時も一人で警戒しなければいけないので、パーティー時の三倍は時間がかかる。ほかにも荷物分担ができず所持量が多く体力を使うし、一人で討伐依頼など受けられるはずがない。


「ニコラスなら一人でもなんとかなると思うけどねぇ。噂については自業自得だから諦めな」


「……自業自得なのは不服ですが認めますよ。でもパーティーが組めないのは事実ですから」


 唇を突き出してマーロックに文句を言うと、折られた紙が頭に飛んできた。それを手で受け取り中身を確認する。


「ま、こっちにも責任はあると思ってるからな。そこに書いてある場所に行ってクアルっていう女の子に会ってくれ。夕方に行けば会える。向こうには話を通してあるから。頑張れよ」


 いったい何なのだろうか、それにクアルという名はどこかで聞いたことがある。釈然としない気持ちで僕は部屋を出た。初心者酒場に行かなければならないのだ、早く済ませてしまおう。





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