幕間・世界を救うために
夜、マラドの森の奥地に淡い光が灯る一角。
広げられた布の上でノイマンとカリファはアリーナだった腑物を調べていた。
「すごかったよなーまさか心臓取り出して残りの体に天使を宿すとかどんな外道が考えるんだよって、しかも心臓のほうはちゃんと再生するし。あらら、やっぱ脳ではないみたいね。神威わからなすぎるよもー!」
そういうとノイマンは手に持った脳を桶に放り投げた。
「あ、一応全部大事なサンプルだから研究所に持って帰るよ。そこの腕も入れといてね」
「お父様、もう桶がいっぱいです。次の桶をお願いします」
「あいよー、あ、脳幹も取れた……すげー! 見ろよカリファ、脳幹が結晶化してる!」
「素晴らしい発見ですねお父様! それで何がわかるんですか?」
「んーなにも」
「そうですか……あぁ、どうやら本体の方も完全に再生したようです。本体もバラしてみますか?」
「カリファ……俺の妹なんだが? 一応お前の叔母にもなるんだぞ、丁寧に扱え」
「いえ、私の家族はお父様だけなので」
「……まあいいか。とりあえずアリーナはちゃんと生かしておくこと。妹が死ぬなんて俺も嫌だね」
結晶化した脳幹を手の中で転がす。
光を失った結晶はひどく脆く、回すだけで角が欠け始めてしまった。
「まずい、カリファ袋! スライム袋出して!」
急いでスライム製の袋に結晶を入れる。
「ふぅ、あぶねえ。脳幹が結晶化してるってことは脊髄あたりもなんかありそうだな。ゲートが見つかるといいんだが……」
体から脊椎を剥がしていく。
「お父様、そのゲートというものは本当にあるのでしょうか」
「さぁな、でもなかったら外部から集めることになるんだけど、外部から神威が集まってくる形跡はなかったろ? そしたらやっぱ中になきゃおかしい」
取り外した脊椎を丁寧にばらしていく。
「脊髄に変化は無し、ただし髄液が見当たらない。脳髄と一緒に結晶化して崩れたか? ないか。いやありえるか。これも別にしといて」
調べ終わった椎骨をカリファに手渡していく。
「これでだいたい終わりか。後調べてないのは心臓だけか……やっぱり心臓がゲートなのかなーでもそしたら天使が神威使ってた理由がわからないしなー」
二人は散らばった肉を桶に詰めていく。
全てを詰め終わると、ノイマンは着ている黒い外套の中にしまっていく。
三つの桶と六つの袋をしまうと、最後に赤く染まった布をくるみ外套の中にしまう。
人一人分の荷をしまったはずだが、外観に変化はない。
「カリファこっちこい、浄化」
ノイマンに近づいたカリファの服と体が一瞬にして清潔なものとなる。
「ありがとうございます。ところでお父様、考えてみたのですが、体全てがゲートだという可能性は無いでしょうか? それでしたら見つからないのも無理はないかと」
「あーその可能性もあるなーでもそしたら調べようがないぞ? せっかく神への手掛かりなのに……そんなつまらないことは俺は認めない」
「そうですか、そうするとやはりアリーナ様を調べるしかないのでは?」
「そうなっちゃうよねーんじゃ心臓説は置いておいて、全身説で帰ったら調べるか。久々にベッドで寝れると思ったんだけどなー」
「それにまだ転移勇者についても調べていませんから」
「あぁー忘れてた。もしかして転移勇者ならゲートがどっかにあるかもな。さっさと勇国も勇者召喚してくれればいいのに」
「たしかもう魔素溜まりは限界を超えているんですよね?」
「うん、ちょいちょい呼ばれて処理してるけど無理だよあれ。俺が生まれるまで五十年も漏れを放置してたんだぞ、あいつら頭悪すぎ。いい加減勇者召喚しないとまじで世界が滅ぶぞ」
「お父様と比べるのは流石に可哀そうかと。彼らはあれでも世界を救っているつもりなのですから」
「でも結局俺につけが回って来てるんだよなー。神聖国は相変わらず『任せる』の一点張りだし。聖国の方も戦争援助ばっかで世界のことなんもわかってないしなーもうみんな危機感無さすぎるよー」
「それだけお父様が偉大だということです。きっといつか世界中の人が理解します」
「え、それはそれでこまるわ。とにかく今は天使の残骸調べて神界への扉を探す。んで見つかんなかったら転移勇者を攫ってばらしてみる。さすがに転移なら神威も後付けだしどっかにあるだろ」
「わかりました。奥様方への連絡はどういたしましょう」
「んー心配させたくないし、まだ忙しいとだけ」
「わかりました」
「はぁー帰ったらまた缶詰か。世界を救うってのも楽じゃないね、地味だし」
ノイマンたちはアリーナを背負い、森の闇に消えた。




