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新たな世界





 翌日の朝、鐘がなる前にリンザスの北門へと着く。


 まだ日が明けたばかりであり、うすら寒い空気が気持ちいい。


 北門を出ると、まだ鐘の音もなっていないというのに、赤髪のアイゼンらしき人物が馬車に背を預けて腕を組み、目をつむっていた。


 背丈は高くも低くもなく、体つきもこれといった特徴がない。


 僕たちの足音に気づいたのか、彼が目を開ける。


 これといった特徴の見受けられない彼だったが、目だけは異様なまでに鋭かった。何か狩人が獲物を値踏みするような目つきだ。やり手の盗賊の眼はあんな感じなのだろうと思う。見たことないけど。


 しかしこれはあれだ、彼がもしアイゼンだとしたら、彼にベックに僕にミサトリア。


 どう見ても人攫い二人と攫われる子供二人である。


 そんな馬鹿なことを考えているとベックが彼に話しかけた。



「よぅアイゼン、早いもんだな。こいつらが俺の旅の同行者、ミサトリアとニコラスだ」



 やはり彼がアイゼンのようだ。盗賊パーティー結成の瞬間である。



「お前がアイゼンか、こえーかおしてんな! 俺がミサトリアだよろしく!」



 ミサトリアが馴れ馴れしく挨拶する。これは僕も自己紹介する流れかな。



「初めましてアイゼンさん。僕がニコラスです。よろしくお願いします」


「ドワーフに目の死んだ子供か、ベックさん、これじゃあんた人攫いに見えるぞ。私はミザリナ商店の次男、アイゼンだ。道中よろしく頼む」



 失礼のような丁寧なような、よくわからない印象だ。だがベックは『恩を売っておいていい』と言っていたのでやり手の商人か何かなのだろう。よくわからないけど。



「うるせぇ、人相の悪さじゃお前も変わんねぇぞ。さて、改めて確認だ。今回は同行だ、旅の連れとして中立都市ゲールまで行く。ゲールまでは順調に行って五日だ。その間俺たちはアイゼンの馬車に乗せてもらい、俺とミサトリアは馬車の護衛をする。この小僧は俺たちの荷物扱い、それで問題ないな?」


「あぁ問題ない、ありがとうベックさん。道中の食事の用意等はこちらでやろう。積み荷は君たちが乗るところ以外は食料が積まれている。つまみ食いはしないでくれよ?」



 つまみ食いなどするわけがない、とは思うが、隣で馬車から流れる匂いを嗅いで鼻を鳴らすミサトリアが心配だ。


 フルーツの香りが漂っている、生ものを持っていくとは思えないので何か加工品だろう。


 というか、僕はどうやらベックたちの荷物扱いのようだ。確かに下手に腫物のように扱われるより、そういった扱いのほうが居心地がいいかもしれない。



「一応俺とミサトリアは御者もできる。疲れたら交代しても構わねぇ。それと互いを敬って変な空気になんのも無しだ。旅の仲間はみな平等、いいな?」



 これは僕に言っているのだろうか。



「いいのか? 見たところそこのニコラスとやらは、めかしてはいるが貴族の出だろう。こちらとしてもありがたい申し出だが道中何があるかわからん。後で不敬だのなんだので文句を付けられるのはな」



 すぐに貴族とばれている、なぜだ。



「それはありえねぇ。坊主はゲールに着いたら貴族じゃなくなる。いまも貴族を隠して俺たちと旅をしているくらいだ。一昨日なんてビール飲んでたぞこいつ」


「貴族がビールを? しかも子供が? ……くくっはっはっはっは。そうかそりゃあいい。君、ニコラスといったな。改めてよろしく頼む」



 そう言ってアイゼンは僕に手を差し出してきた。


 その手を握り返し微笑んでおく。何事も笑顔は円滑に物事を運ぶのだ。



「よろしくお願い、ちがうか、よろしくアイゼン。僕も遠慮しないからアイゼンも遠慮せずに話してね。僕は今平民についていろいろと学ぼうとしているから、そこらへんもいろいろと教えてくれると嬉しい。商人の常識とかも……」


「ほぅ……面白い貴族の子供だ。わかった、道中になるべく君と話すことにしよう。そのほうが楽しい旅になりそうだ」



 目つきは鋭いが、笑った顔のアイゼンはどこか安心感をくれる。


 その後軽く談笑をして、僕たちは馬車に乗ることになった。


 家から乗ってきた馬車よりも少し広い梁馬車だ。僕たちの乗るところ以外は木箱と壺が積んであった。



「坊主、せっかくだ、アイゼンと一緒に御者台に乗れ。どこかのバカと違ってちゃんとした御者を近くで見れる」


「ばかとはなんだばくぁとは! あれは別に……卑怯だぞベック」


「そうかい、ニコラス君こちらに来て少し話そうか」


「わかった」



 僕は荷台に乗るのを止めて御者台に乗る。やっぱり馬のお尻が近くて土をかけられそうだ。が、そうそうかけられることは無いらしい。


 隣にはアイゼンがいる。ミサトリアの時と違ってアイゼンの顔を見ようとすると少し見上げる感じになる。


 アイゼンが僕を見て微笑むが、やっぱり目が怖い。まぁ怖くはないんだが。



「準備はいいかい? 今から出れば夕刻前にはドドガマ渓谷の国境砦マカハトに着くだろう。国境を越え三国中立区域に入ったらそこで一泊、国境砦内の宿が取れたらそこで、取れなかったらその周辺で一泊。それでいいかい?」



 これは僕に言っているのだろう。「うん」と答えておく。



「そうか、では行くよ。はッ!」



 掛け声とともに手綱が振られる。気合の入った声にしては馬は並足だ。普通の御者とはこういうものだろう、たぶん。


 比較対象が『ヒャッハー!』しかいないのでこれが普通だと思っておく。


 馬車が進みだして少しするとアイゼンが話しかけてきた。



「ニコラス君、君はどうして旅に出ているんだい? 同行するんだ、少しくらいは聞いてもいいだろう?」



 いきなりそこに触れてくるとは、割と遠慮ない人のようだ。


 だが最低五日間も寝食を共にする人だ、教えておいてもいいだろう。ベックも信頼してるみたいだし。



「僕が貴族なのはもうバレてるんだよね」



 一応確認だ。隠しておきたいという意思も示したい。



「そうだね、といっても普通はバレないから安心するといい。君の変装は完璧だ。私がちょっとしたスキル持ちなだけだからな」



 そういってアイゼンは鋭い目の端をとんとんと指でたたく。


 貴族判定できる目でもあるのだろうか。


 そういえば本で見たことがある。『鑑定』という恩恵のことだ。


 でも確か『鑑定』持ちはみなそれを隠すとか書いてあった。アイゼンがそれをもっている可能性は低いか? わからない。



「そうなんだ。スキル持ちなんてすごいねアイゼン! 鑑定か何かなの?」



 聞くのはただなので聞いておく。実際ただではないが。



「似たようなもの、とだけ」



 はぐらかされた。それならそれでいい、僕の方も詳しく話さない。



「そっか、僕はそうだね……家から出て……新しい世界を見たかった。かな?」


「……新しい世界、か。貴族を捨ててまでかい?」


「うん、貴族を捨ててまで。それに貴族もそんなにいいものじゃないよ。平民のこともまだ知らないけど、それでも今のところは貴族より平民のほうが好きかな。家にいるより楽しい」



 そういうとアイゼンは鋭い目を丸くした。面白い。



「貴族の子供がそんなことを言うとはな……世の中いろいろな貴族がいるものだな」



 丸くした目を今度は細めて遠くを見ている。怖い目のくせして表情豊かな目だ。



「うちの家がちょっとおかしかったってのもあるかもね。僕はいままでそこしかなかったし、そこでいろいろな目にあった。そこから逃げ出してここにいるんだ。今は……新しい世界が、楽しい。リンザスにいただけでも新しいことがたくさんあって面白いんだ」


「そうか、新しくて、面白いか。私は君が面白いよニコラス君。君のような貴族にあったのは初めてだ」



 なんかむずがゆいような心地いいような空気になってしまったので、とりあえず笑っておく。


 アイゼンも笑い返してくれる。



「そういえばニコラス君はビールを飲んだんだって? 知っているかい、あれは貴族の間では『平民の小便』というんだ」



 聞きたくなかった。


 僕がそれを聞いて嫌な顔をしているとアイゼンが声をあげて笑った。



「はっはっはっは、安心するといい、別に悪いものではないし私たちの中では『労働者の黄金』と言うからな。いろいろな見方があるのだよ」



 貴族から見たら小便で、平民から見たら黄金か。



「見る立場によって価値が変わるんだね」


「そうだね、世の中そんなものばかりだ。だからこの眼もそんなに役に立たない。価値観など人それぞれだ」



 お、この人自分の眼のことしゃべりかけたぞ。案外道中に全部教えてくれるかもしれない。



「人それぞれね。貴族はそこらへん、見栄の張れるものが価値が高いくらいしかなかったと思うから新鮮」


「はっはっは、確かに貴族はそうかもな。ただ貴族にもそれぞれの価値観はあると私は思う。ただ貴族よりも平民のほうが数も多いし種類も多い。そういった点で平民の価値観は千差万別、混沌としているといっていいだろう」


「混沌としてる、ね」



 確かにあの酒場は混沌としてたな。でもみんなで笑いあえる混沌だった。それは僕は家で見たことがない。


 平原の遠くに見える山々を見る。きっとあれを越えた先も混沌とした世界が広がっているのだろうか。



「ニコラス君、君にとっての、新たなる世界へようこそ。私は君を歓迎するよ」



 その言葉の意味を僕は測ることができなかった。


 歓迎してくれることは確かなので、うれしかった。





これにて第三章が終了となります。

一区切りついたので私心を描かせていただきます。

私は初めて小説を書き始めて一週間になります。

初めて小説を書くにあたっていろいろなサイトを回って学びました。

どうにもなろう小説というのは当たりはずれがあり、三万時越えても当たらなければ別のものを書くのがPVを伸ばすコツと様々なサイトに書かれていました。

題名というお題があり、そこで読者様に届かなければ読まれることは無い、面白くもないそうです。

私の小説はブックマークも伸びないしPVも増えない、面白くないのではないかと思いました。

私もそれに倣おうかと考えました。

ですが幸い、私の小説はまだブックマークは伸びないものの、最新話を呼んでくれる方々おります。

見ていてくれる人がいるので諦めずこれを書き続けようと思います。

お読みいただきありがとうございます。

今後とも『現地民は異世界転生者に振り回される』をよろしくお願いします。



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