第3話 英雄気取り
宇宙馬を繰る使用人が依頼主かと思ったが、実際の依頼主は蒸気都市の城に住まう王様だった。
使用人は扉を開くアキヒコ達を監視するためにいただけとツユラは説明する。
アキヒコは正直信用されてないようで不満だったが、これも防衛策ゆえだと思って飲み込んだ。
通された城内部の2階、そこに王の間があった。
王座に座る王は白髪、白髭を生やしていたものの貫禄があり、王の服も豪華なものだ。
王冠
マント
人差し指の指輪
杖のオーブ
その全てにいずれかの装飾がされていた。
けれど、王座と長机は質素な造りだ。
王様というくらいだから宝石などの装飾がされてるのかと思いきや、そうではない。
木造で造られているだけだ。
傍のローラ妃と名乗る女性が語るには、前任の王がコア融合装置なるものを都市開発と称して整備する際に、莫大な金を払ったせいで、貧乏になったとのことだった。
ローラ妃は分かりやすく苛々していた。
「ーーーこんな英雄気取りどもになぜ毎回頼まなきゃいけないのか」
と時折毒づきながら。
ウイトがいたら殴りかかってそうだなと、アキヒコは思いつつも……ツユラに耳打ちした。
「こっちはわざわざ依頼受けてコアのヒビを治しにきてんのになんでこんな嫌われてんの?」
「いつものことよ。まあ、『神話英雄伝説』に私たちの先祖で、『跳躍能力』を持っていた前任者が描かれていたらしいけど、私たちのような貧民が力を持ってることを、あのお妃様は気に入らないようね。
上級国民らしい差別的思考だわ」
けっ、と吐き捨てるようにツユラはゴミを見る視線でローラ妃を一瞬だけ見た。
「なに!?」
と怒るお妃様を無視して、王様に語りかける。
「大体1週間ほどの滞在でコアのヒビの修繕をしたく思っていますが、その認識で相違ございませんよね?」
「構わぬよ。使用人に器具を持って来させようか?」
「大丈夫です、お気になさらず。我々の器具で対応いたしますので」
「なんて憎たらしいの!?」
「ーーーでは失礼しますね」
そう言ってツユラは身を翻してツカツカと先に歩いて行った。
「ああ、小憎たらしい。あのリーダーを名乗る女、くたばればいいものを」
ローラ妃の小言は、呪いのように響いていた。
それを背に去ると、扉の奥で。
「これ、ローラ。あまりそう言ったことを言うな」
「あなたと父君がそうやって優しくするからつけあがるのよ!」
王様に嗜められても、やはり小言は正さないようだった。
アキヒコは、あれは筋金入りだなと呆れた。
ーーーーーー──
コア融合装置部屋付近の影
「ぼろぼろだな、リーン」
リーダー格の男は、女に声をかけた。
労わるように手を伸ばすと、ばちんっと弾かれる。
「いった……」
「ばっかでえ、リーンが怒りっぽいのはいつものことじゃないか」
黒マントをフードまで被った少年が小馬鹿にしたように笑う。
「うるさいよ」リーダー格の男が肩を落とした。
「あんたもうっさい!」
リーンは2人を怒鳴りつけた。
叫ぶように言う。
「あのドワーフにこんなにされたのよ! なにあいつ、化け物じゃない! くそ……なにが跳躍だ」
リーンは肩を抑えながらもふらつきを隠そうともせず、荊で補強して歩いていた。
目の前の男に悪態を吐く。
「あんな異常な能力持ってて『神話英雄伝説』になんで、英雄って書かれてんのよ、気色悪い」
「俺の眼を見て悪態を吐くなよ……仮にもリーダーなんだぞ」
「とにかく! ナーゲム」
だから呼び捨てじゃなくてリーダーといえといつも言ってるだろ
と呟きつつも、ナーゲムと呼ばれた男は頷いた。
「ああ……俺たちは俺たちのやることをすべきだ」
右腕を黄色に輝く液体に変化させる。
あるはずのない気流に乗るかのように空中で回転するその様相は、不気味にうつっただろう。
ナーゲムは笑う。
「このコア融合装置までの道のり、防犯システム及びセンサーの破壊、装置を守る衛兵の駆逐……やることは多いが、まずは入り込めただけいいな」
リーンは胸を張った。
「私の飛翔能力に感謝することね!」
成果を認めろと言うかのように。
「僕の結界術もだろ〜?」
「それを言うなら液体になれる俺の……もう全員すごいってことで良くないか?」
「良くない!」
「リーン、いい加減その張り合う癖を治せ……まじでやりづらい」
めんどくさいとの態度を、隠そうともせずにナーゲムは言ったが、火に油を注いだようで殴られていた。
しばらくして顔を腫らしたナーゲムは落ち着き払った様子で咳払いすると、
「さてーーーまずはコアを破壊するためにこの防衛システムを破壊しよう」
そう言って笑った。
地獄まで、あと少し。




