第4話 忍び寄る影 地獄門が開く時
ナーゲムの指示は的確かつシステムを破壊するその手腕は手早かった。
衛兵の目を掻い潜り、「危険思考探知」によるセンサーが自分らを探知しきる前に潰していく。
粉々に破壊していく。
100個以上のものを、音もなく、ものの数秒で。
「防犯システムはこれで終わりだな。道のりは掴めたか? ハイルド」
「うん、僕の結界術と探知を合わせれば簡単に把握できるよ」
少年ハイルドが指で空中に線をなぞるように動かす。
ぼう……と淡い光が地図を作り出す。
城内地図であり、目標への道のりだ。
それを見たリーンとナーゲムは頷いた。
「あとは守護する衛兵を暗殺し、その勢いのまま、奴ら……ジャンパーズが気づいて目標物に近づく前に破壊しよう」
「今日のうち?」
「当たり前」
「仕方ない、やってやりますか!」
リーンがパンっと拳同士を合わせる。
自分に喝を入れたようだ。
「……何目線なんだ、リーン」
呟くナーゲムを無視してリーンは先に歩き出した。
「さ、行きましょう〜」
ナーゲムとハイルドは互いにため息を吐き、リーンの背に続いた。
コア融合装置前に辿り着く。
隠されていた罠もあったがものの数秒で破壊してことなきを得た。
衛兵は10人ほどで、あの程度なら暗殺も容易い。
そう思ってナーゲム達は薄笑いを浮かべた。
ナーゲムは右腕を液体にし、
ハイルドは結界を、リーンの荊にかけて姿を隠し、
彼らは攻撃に転じた。
衛兵1人が首を音もなく落とされ、崩れ落ちる。
気づくのが一瞬遅れる。
「何が起きた?」
と誰か口にするまでに2人を殺害。
そして「敵襲! 各自武器を手にし、対応……が!?」
言葉は続かない。
衛兵長なる人物も正体不明の液体に巻き込まれ呼吸困難に陥るだけでなく、体の内側から爆散した。
息を飲む音
身体が震える音
まだ新人なのだろうが、女性も男性も関係なく若くても容赦なくナーゲム達はその命を刈り取った。
そしてーーー彼らはコア融合装置の前に辿り着く。
ナーゲムは、おもむろに手のひらをつける。
「熱いなあ。まあ、どうせ年一で故障するんだからここで融解させても同じことだ。こんな都市、消え失せればいい」
刹那、右腕ごと溶けた。
その体液のように溶けた『腕だったもの』がヒビ内部に侵入する。
ヒビが大きくなる。
振動も凄まじいものになってきた。
「なあ、そうだろ? サムライジャンパーズ」
振り返り、ナーゲムは笑う。
ツユラ達は怒りを隠せなかった。
ツユラは血相を変えて怒鳴りつける。
「貴様ら……なにをしている!」
けれどナーゲムは飄々とした態度を取っていた。
「1人見えないが、どうした? リーンがボコボコにされたそうだが」
「おい」
リーンが拳を握りしめている。
青筋が額に滲んでいた。
「ごめんごめん」
両手を前に出して謝るナーゲム。
それがひどく気色悪い。
ツユラは低い声で言った。
「ふざけてるのか?」
「ふざけてなどないよ」
こんなもの日常の延長線じゃないか
そう言うかのように。
当然とでも言うように。
ナーゲムはあっけらかんとした態度そのままにこう続ける。
「遅かったな、サムライ共。地獄門は今しがた、開いたところだ」
「ーーーなに?」
「それは……! コアのヒビを押し広げたのか! なんと言うことを……!」
ツユラの苦しげな声が響く。
「それもこれも貴様らに復讐するためだよ」
「復讐だと……?」
「ああそうさ、四世を混迷に陥れんと画策する奴が、お前らの中にいるって情報を俺たちは掴んでんだよ。ーーーなにせ、俺も人柱だからな」
「ーーー人柱? なんのことだ! 私たちは四世を守る立場にある。それが混迷に陥れるなどあってはならない! むしろ貴様達のほうがしているだろうに!」
「こうやって言い争っていていいのかな? ほら見なよ、コアがついに融解して溢れ出す」
ーーーよくやった
聞き覚えのある声
怖気が走るようなあの声
そうだ あいつだ
あいつがここに……!
アキヒコは、ばっ!と勢いそのままに振り返る。
しかし、この場に奴はいなかった。
ただーーーレイメイが歪の笑みをしていたことを除いて。
「レイメイ?」




