第1話 コア融解事故
「仕事が入ったぞ、みんな」
ツユラが3人を見やり、言った。
手には資料が握られている。
「もうすぐ宇宙馬が引く、馬車に乗って依頼主が迎えに来るそうだが……今回で何度目だろうな」
「ほぼ、毎回お世話になってると言っても過言ではないですよね〜」
ウイトが両掌を上にして深く息を吐く。
呆れているようだ。
そんなに毎回のように壊れているのかとアキヒコは汗を垂らした。
「修理が必要になること多いよな、あそこの都市。蒸気都市の心臓部! なんて豪語せず、ちゃっちゃとそんな壊れやすいのをやめて違うのにしてしまえばいいのによ」
「バカいわないの〜」
「なんだとこの小娘……!」
「なにをこのバカ!」
野犬とリスが身の毛を逆立たせて睨み合っているようだ。
そんなことを想像するとアキヒコは笑えてきた。
笑ったらウイトに殺されると思い、必死で耐える。
「はいはい! そこいがみ合わない」
ツユラが手打ちする。
ウイトとレイメイの二人は舌打ちして互いにそっぽを向いた。
ツユラは苦笑しつつも続ける。
「せっかくのアキヒコの晴れ舞台なんだし、この修理依頼もちゃんとこなしてきましょうね」
「「はーい」」
仲がいいんだか悪いんだか、そんな不思議な二人だった。
「さて。修理の道具はあの都市の長から借りれるんだし、さっさとバングルの他、心の準備もして出かけましょう」
ツユラが立ち上がると、アキヒコ、ウイト、レイメイの3人もそれにならい、外へ出る。
西の空から少しずつ降りてくる青みがかった宇宙馬が荷車のようなものを引いて飛んでくる。
ーーーそれが、激闘へと誘う始まりの合図であることを4人は知る由もなかった。
▶︎▶︎▶︎
5時間後 蒸気都市テレムジア 王核城内部
紅と紫の光を放ち、心臓のように鼓動を続けるコアの近くに音もなく忍び寄る3人組がいた。
コアにはヒビが入っている。
都市全域のガス、電気などのライフラインを担い、常に動き続けるため、メンテナンスをしていても年に一度は必ずコアにヒビが入ってしまう。
それを、彼らは知っていた。
黒い手袋をつけた蒼色のコートを羽織った男は、おもむろに手のひらをつける。
「熱いなあ。まあ、どうせ年一で故障するんだからここで融解させても同じことだ。こんな都市、消え失せればいい」
刹那、右腕ごと溶けた。
その体液のように溶けた『腕だったもの』がヒビ内部に侵入する。
ヒビが大きくなる。
振動も凄まじいものになってきた。
そして膨大な光を放ちーーー都市にコアの熱く燃えたぎり、なにものも残さないような熱の海が津波と化して迫った。
城をまずは破壊する。
王を守ろうとする兵士達もろとも熱にさらされて灰と化していく。
ちりぢりに砕けてその灰すらも洗い流される。
蒸気都市は壊滅の危機に晒されていた。
民衆も逃げ惑うが遅れたものから死んでいく。
皮が焼き剥がれて神経を焼き尽くし、血を吐いても蒸発気化していく。
肉は焦げて露出した骨すらも炭化していく。
女も、子どもも、例外なく死んでいった。
富裕層や小金持ちの家族たちは空飛ぶ車のようなものに乗って難を逃れていた。
しかし、見えない壁に阻まれて蒸気都市自体からは逃げることが叶わない。
「助けてくれ」
そう叫ぶ民衆。
サムライジャンパーズの四人は、避難誘導をしていたが被害が広すぎて焦っていた。
手が足りない。
助けようとしても死ぬものがたくさん出てしまっている。
空から見下ろしたその蒸気都市の様子は、真っ赤な海に沈んだ、地獄をこの世に呼び起こしたかのようだったに違いない。
首謀者の3人は『結界水晶術』からなる透明な板の上に立ってその地獄を、眺めていた。
一人は液体になることができるもの
一人は結界水晶術なるものを使いこなすもの
一人は幻惑と空を飛ぶ術を身につけたもの
その3人は、別世界から来た来訪者だった。
名を、トラベラーズと呼んだ。
その一人が不意に嗤う。
「この世界で動く、奴らーーーサムライジャンパーズを殺す。
都市ごと沈み、灰となれ」




