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第4話 四世の狭間より

その影は性別が分からない。


 男なのか

 女なのか


 声すらも機械音声のようで、動作もぜんまいで動かしているかのようにぎこちない。


 けれどその影は、四世の狭間に座していた。


 ゲラゲラと笑う。


 ゲラゲラと笑う。


 その手には刀剣が握られていた。


 その刀剣は光を反射しない暗い色をしていた。


 影の笑みが不意に止まる。


『四世の人柱を集めなければ……』


 そう呟いて。


『百目鬼 明彦、ツユラ、そしてあと2人』


 その声は、四世界の狭間の空間に溶けるように消えていった。


 ▶︎▶︎▶︎


 アキヒコは人影に刺される夢を見た。


 乱雑に首を、腹を、足を刺される。


 血みどろになり、地べたに這いつくばっても誰も助けてくれない。


 そればかりか……視点がなぜか変わり、家のリビングでアキヒコは倒れていた。


 椅子に座り、机に突っ伏すように母が、妹が、父が、首を切られて死んでいる。


 ぽつぽつぽつ、と音を立てて血が滴り落ちる。


 愛していた家族の死体から、現実を突きつけられるかのように。


 机の上には人影が立っていた。


 天井のライトが点滅する。


 点滅するごとに血がまるで水溜まりのように広がっていく。


 気づけば、アキヒコの流す血と家族の流す血がまじわっていた。


 叫ぶ


 喉が掠れ、血を吐くほどに。


 そして、飛び起きた時に衝撃がきた。


 見ると、「いったーーー」と涙目のウイトがそこにうずくまっていた。


「レイメイいないし、ツユラも後処理とかでいないから新人の様子でも見ようと思ったら……うなされてたから添い寝してやろうと思ったのに〜」


 不貞腐れて頬を膨らませている。


 リスみたいだ。


 そう思ったら痛みや夢のことなんて忘れて腹を抱えて笑っていた。


「何を笑っとるか〜! レイメイのようにぶっ飛ばしてもいいんだぞ!」


 冷や汗を滝のように流してアキヒコは手を合わせて神に祈るかのようにウイトを見上げる。


「ああ〜、ごめん! それだけは勘弁してください、ウイトちゃん!」


 しばらくの静寂。

 青筋がいくつもできた気がした。

 何かまずったらしい。

 焦った時には、怒気を含んだ声でこう言われていた。


「ちゃん?????」


「あ、ごめんなさい! ウイト様!」


「よろしい! 今回ばかりは許してやる」


 ちっこい身体で胸を張り、顎を引くウイト。

 やっぱりリスみたいだなと思うが、声に出すと殺されると思い直し。

 低身平頭、土下座するように、


「はは〜!」


 どこの家来だと内心ツッコむが、彼女の気が済むならいいかと少し身を削ったアキヒコだった。


「ほんとに大丈夫か?」


 空気が変わった。

 背に小さい手が乗る。

 小さいのに暖かく、気を許せば泣いてしまいそうだった。

 鼻を啜って、アキヒコは頷く。


「ああ、大丈夫。心配してくれてありがとな。先輩」


 そうやって朗らかに笑った。


「これからこってり絞ってくれよ、依頼ばりばりこなすからさ」


「言ったな〜! 私のしごきはきついぞ、倒れんなよ!」


 ウイトもニカリと笑う。

 男勝りで勝気な少女というより、ほんとうに少年のような笑みだった。


 ウイトの出す拳に、アキヒコも自分の拳を合わせる。


「のぞむところだよ、先輩」


 そうして2人で笑った。


 その笑い声は暗い部屋にこだまして、夜空に吸い込まれるように消えていった。


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