第3話 龍を撃滅せよ 開花
翌日、ツユラに連れてこられたのは古い城。
廃墟だった。
打ち捨てられたようで半壊し、苔とイバラが生い茂っていた。
その古城の上に広がる空だけが雷雲が紫色に輝き、渦を巻く。
そこに時折見えるのが
「あれは……龍?」
「そう。あれを私が一度だけ手本を見せるから、傷を負った龍に、あなたがとどめを刺しなさい」
「は……!?」
「私たちは1人で龍や宇宙人と闘えるだけの戦闘集団でもあるの。何度も言ってる気がするけど、『四世』を回る大役を担ってるしね。あなたがそれに対応できないならどうせ採用しても、死ぬだけ。だからここで開花して有用であること示して欲しい。どお? やってみる気になった?」
「色々言いたいことはあるけど……分かったよ、やればいいんだろ、やれば! その代わりちゃんと見せろよ、あんたの異能」
「ええ、一度しか見せないからちゃんと見てなさいね」
『跳躍起動』
彼女の両脚が燃えるように輝いた。
それは徐々に火柱を生み出していく。
そして
「属性跳躍 ……絶界氷結」
氷へと変化し、やがて世界に亀裂が入る。
時間と空間に干渉するのか、彼女の両脚がノイズを走らせたように見えた。
「あのノイズは……あの色が分からないのは……まさか、ツユラさんが?」
俺を殺した?
「いやいや……そんなまさか。だって……現世に来れるわけな……あ」
彼女は言ったじゃないか
四世を担う大役だと。
それは俺がいた現実世界のことも含まれるのではないのか?
そう思ったら強い吐き気を感じた。
まさか、まさかまさか!
ツユラと会ったのは実は、俺が異世界に来たのを最初に把握してここでいつでも殺せると思わせるため?
けれど、彼女は言ったじゃないか。
異能の刀を扱えるようになるために、ジャンパー跳躍を獲得しろと。
アキヒコは深呼吸して息を整えると、彼女が龍の右半身を空の異常ごと吹き飛ばしているところを見つめた。
龍が堕ちる。
あれだけで致命傷だろうに、凄まじい怒りを感じる。
『殺す殺す殺す殺す殺す、人間風情が、我を!
我の世界にまで踏み込んで荒らした挙句、今度はこの古城まで奪うのか。焼き滅ぼしてくれる!』
憎悪に満ち溢れた眼。
雷を天上より呼び起こし、それを無数の刃としてこちらに向ける。
掠っただけでも死ぬだろうほどの致死量の電流の刃。
それがアキヒコに向いている。
あとはお前がやれというツユラの視線に頷き、アキヒコは一歩前に出る。
なぜか、足が出た。
すくみ上がるかと思ったのに、それがない。
自然と前に出る。
胸の内が熱くなった気がした。
アキヒコは頭を下げる。
「ごめん、それは知らなかった」
『なに?』
「けど、誰がそれをしたとしてもーーーお前が俺たちの脅威になるって言うのなら、戦わないといけない。だから……ごめん」
アキヒコは胸に手を当て、そして次に額の紋様を触る。
瞬間、胸と額の紋様が光り輝いた。
暑い光
まるで太陽の取り込んだかのような燃えたぎるような光
それが異能の刀を呼び起こし、両の脚に力を与える。
アキヒコは叫ぶ
『跳躍起動! 』
刹那ーーー身体が跳び上がった。
高層ビルを飛び越えるほどの高さで跳びあがる。
そしてーーー
両手に握った異能の刀の能力、
『紅炎……!』
太陽の光を、太陽の炎をその剣身に宿す。
目の裏側で、紫の稲光りが走った気がした。
太陽の炎を宿した刀剣を振り翳し、龍の身体を一息に裂く。
血飛沫が舞った。
アキヒコは古城の瓦礫につんのめって倒れる。
歯が折れた気がしたが気にしない。
振り返る。
火葬のように龍はちりぢりに砕けて燃えて、天へとかえっていった。
「安らかにな」
アキヒコはそう呟いて微笑んだ。
ツユラはふらつくアキヒコを支えると、
「お疲れ。入団おめでとう、試験は合格。歓迎するわ、アキヒコ。改めてようこそ、サムライジャンパーズヘ」
そう言って右手を差し出した。




