第60話(幕間):名簿
ヴィタリス王国 名簿
アンリ七世 記す
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王国の民、およそ二十万。
数は日々変わる。ゆえに総数は記さぬ。
ここに記すは、陛下が名を呼ばれた者に限る。陛下は肩書きで人を呼ばれぬゆえ、名を知られた者はそう多くない。
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【一の部 王国の者】
一、アンリ七世 六十五 前国王 現・内政総理
七月二十五日 朝 執務室にて
一、ヴァレリー 五十五 宰相
七月二十五日 朝 議場にて
一、セシル 三十 宮廷魔術師
七月二十五日 朝 塔にて
一、リリーベル 四十七 役目は記さぬ
七月二十五日 朝 場所も記さぬ
陛下には、南へ発ったと申し上げてある
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一、ギヨーム 四十五 東部方面隊長
七月二十日 境にて 胸
一、ユーグ 二十四 ギヨーム隊
七月二十日 境にて 腹
一、ロラン 四十三 東部管区巡察隊長
七月二十日 フェリエ村にて
一、ドニ 三十一 同副長
七月二十日 フェリエ村にて
一、ヴォルフ 四十六 傭兵団長 現・王国雇い
七月 東部山中にて 日は不明
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一、ジャン 四十一 パン屋
七月二十日 フェリエ村にて
一、マルグリット 齢不詳 寡婦 八十は越えると申す
七月六日 フェリエ村にて
一、アラン 三十九 農夫
七月二十日 フェリエ村にて
一、ピエール 十二 アランの子
七月四日 フェリエ村にて
一、ギ 六十八
七月六日 フェリエ村にて
一、マノン 二十二 織女
七月五日 フェリエ村にて
一、(名なし) 生後六月 マノンの子
七月七日 フェリエ村にて
一、リゼット 六 ジャンの娘
七月七日 フェリエ村にて
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一、アガット 五十二 礼拝堂守
七月六日 フェリエ村にて
七月二十日 焼失
一、ベルト 四十九 粉屋ロベールの妻
七月五日 フェリエ村にて
七月二十日 焼失
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上の二名は、名簿より削るべきものである。
削らぬのは、陛下がいまも名を呼ばれるゆえである。
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一、ロベール 五十一 粉屋
七月十日 村を出づ。以後、所在知れず
村を離れし者、二十七名。いずれも所在を確かめておらぬ。
みな、どこかで起き上がっておろう。
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一、トマ 四十四 鍛冶
七月二十日 フェリエ村にて
この者は村を捨て、代官所へ訴え出て、巡察隊を連れて戻った。
陛下はこの者を責められたことがない。
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一、クロエ 三十六 ジャンの妻 リゼットの母
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【二の部 国外の者】
これは職務上の記録ではない。私が個人で書き留めたものである。
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一、コンラート三世 二十八 アイゼンヴァルト国王
十五にて初陣。二十にて即位。以後十三年、負けを知らぬ。
民は「白王」と呼ぶ。
一、ヨナス 二十二 東の中隊副官
十一月、境にて相対す。捕虜十五名を残して退く。
この者の名は、その十五名より知れた。
一、ミカ 十八 東の斥候
十一月、国境の帯にて捕らえる。
陛下の仰せにより帰す。
この者は陛下を見て嘔吐した。名簿にはその旨も残す。
一、ドナート 五十三 南の商人 商い三十年
九月来訪。二日にて発つ。麦、初回二千二百俵。
二度目の荷は、海が荒れて二度延びておる。
一、ベルナール 五十四 教会の使者 司祭四十年
一月来訪。五日にて発つ。
陛下を聖人と認めたしと申し出、断られる。
返答は上へ送ると申した。
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二の部については、書ける者と書けぬ者がある。
書けぬ者は、書かぬ。
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なお、エリアス陛下の項は、いずれの部にも置きかねた。
王国の者として記すべきか、外の者として記すべきか、私には決められぬ。
この一事のみ、判断を後の者に譲る。
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名簿は以上である。
この者たちの名を、陛下はすべて覚えておいでになる。齢も、生まれた村も、親の名も。一人として違えたことがない。
書き取ることは、おできにならぬ。
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右、七月より一月末までの分。
次は春に改める。




