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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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202/209

第202話:数

 向こうが繋がり直した。


 割れた前の半分と、置いていかれた後ろの半分が、日が水に触れるころには一つの塊になっていた。誰かがまとめたんだろう。まとめるのが下手なやつばかりじゃねえ。


 うちの二隻は、繋がる前に押し出された。いまはこっちの右へ戻ってきている。


 繋がると、数が効きはじめる。


 こっちの右にいた三隻を、向こうは倍で見ていた。


 見られた側は、行ける先が減る。減った先へ行けば、そこで待たれる。


「右、下げろ。下げて風上へ立たせろ」


「ハムザ総督。下がるんですか」


「立てって言ってんだ」


 旗が上がって、右の三隻が艫を向けた。向けた背中を、向こうが追った。追えば、向こうの塊から尻が出る。出た尻へ、オレは左を回した。


 当たりに行かせたんじゃねえ。そこにいたほうがいいから、そこへやった。


 それで向こうの動きが、一つ止まる。


 止まっているあいだに、真ん中がまた前へ出てくる。


 数ってのは、そういうやり方をする。こっちが片方を潰しているあいだに、向こうは反対側を前へ置ける。


     *


 舷の擦れる音が、さっきより近くで鳴るようになった。


 煙は低いままだ。風下へ流れて、向こうの並びに掛かっている。


 掛かった先は、こっちから見えねえ。見えねえまま、あっちは押してきている。見えなくても押せるのは、数があるからだ。


 うちの船が列から落ちた。一つは傾いて、もう一つは帆桁を落として、その場から動かなくなった。動かなくなったやつの周りへ、向こうの小さいのが寄っていく。


「拾いに行かせますか」


「行かせるな」


 拾いに行った船は、拾いに行った先で止まる。止まった船は、次から数に入らねえ。


 艫のほうを見た。


     *


 海賊の船が、ロルオーの塊の外側へ伸びていた。


 左から右へ、弓なりに。


 伸びるだけで、噛みに来ねえ。


 あいつらは噛むやつらだ。獲物を見つけたら、風だろうが数だろうが構わずに横っ腹へ突っ込んで、綱を投げて、乗り移る。


 それしかやらねえし、それで足りてきた連中だ。


 その海賊が、距離を測って並んでいる。


 赤い旗の位置が少し変わると、外側の並びも少し動いた。


「総督。赤いのは動きません」


「見えてる」


「いま右の海賊をやれば、後ろが空きます。あいつらが動かねえうちに」


 やれる。数の上ではやれる。


「触るな」


「ですが」


「触るなって言ってんだ」


 言えるだけの理屈があるなら、言ってやる。無いから、言わねえ。


 鼻の奥のイヤなやつは、動いてねえ。近づきもしねえし、遠のきもしねえ。


 ずっと、そこにある。


     *


 上で見張りが喚いた。


「向こう、寄ってきます!真ん中に寄ってます!」


 伸びていた塊が、真ん中へ集まりはじめていた。


 旗と旗のあいだが詰まって、舳が揃って、前が細くなっていく。


 固まってきやがった。


 固まったやつは、曲がらねえ。まとめて突っ込むぶんには、曲がる必要がねえ。


 真ん中を抜きに来る。


 そして背に回る。


 そうすりゃ包囲網の完成だ。


 なら、抜かせなきゃいい。


 左右に開いて、通り道を空けてやる。空けたところへ入ってきた舳を、開いた左右で押さえる。挟むほうが、挟まれるより早い。


 そこまで考えて、後ろを見た。


 弓なりが、まだそこにある。


 オレが左右に開けば、開いた外側は、いまよりもっと外になる。外になった味方の、そのさらに外に、赤い布の言うことを聞く連中がいる。


 伸びるだけで噛まねえ連中が、そのときも伸びるだけでいてくれるとは限らねえ。


 挟むつもりが、挟まれる。


 なら、開かずに引くか。


 引いた先を思った。後ろは陸だ。港がある。船を入れる場所も、直す場所も、ぜんぶそこにしかねえ。ここを通せば、通した先にあるのは港だ。


 引けねえな。


     *


 残るのは、開いて、挟まずに、そのまま左右へ抜ける形だ。


 真ん中は空く。空いた真ん中を通って、向こうは港の前まで行く。こっちは沿岸まで下がって、そこで並び直す。


 船は減らさずに済む。


 港の前を、空ける。


 オレは唇を舐めた。しょっぱかった。


 どれを取っても、後ろの弓なりが動けばやり直しになる。動くか動かねえかを決めるのは、赤い布だ。


 赤い布は、動かねえ。


 どれも、まだ畳み切れてねえ。


「総督!」


 舵の男の声だった。見張りじゃねえ。


 顔を上げた。


 固まったやつが、動き出していた。


 まっすぐ、真ん中へ。


     *


「だから言ったんだ。オレは総督なんて柄じゃねえって」

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