第198話(幕間):月末までに
「ドゥアルテ法官長様。三枚、揃いました」
書記官が、紙を置いた。
関の控え。村の触れ。境の報せ。
置いた順は、届いた順である。
関の控えには、行が二つあった。
行き。司祭一名、供四名。
帰り。司祭一名、供四名、子一名。
そのあいだに、村の触れが入る。司祭様と供一名。
四、一、四と子。
同じ司祭である。名も、同じ字で書いてある。
「関の者は、数えましたか」
「数えた、と控えにございます」
書記官が、控えの端を指した。
「一人ずつ、指で数えて書いた、と」
子一名。
欄には、数だけが書いてある。
境の報せは、短かった。
騎乗二十数名、境にて止まる。横木の先に、ヌオモの兵。その後ろに、セフォーの兵。
紙は、そこで終わっていた。
出したのは、私ではない。
「いかがいたしましょうか」
「いかがとは」
「……いえ。ご放念くださいませ」
書記官は、三枚を揃えた。
揃え終わってからも、手が少し止まっていた。
「書記官。ほかに、御用は」
「ございません」
*
三枚をもう一度置いた。
子は、行きには居ない。帰りに居る。
子は、横木の先へ出た。
月末に、枚数が揃わない。
押し方と、番号と、枚数。どれか合わなければ、突き返される紙である。突き返す側に、こちらは座っている。
別の子に押させることを、考えた。
番号は書ける。手のひらは、書けない。
考えるのを止めた。
答えの分かっていることに考えを巡らせるのは、時間の浪費以外の何物でもない。
あの男には、まだ知らせない。
貴族にも知らせない。
知られた日に、旗が下りる。
旗が下りれば、雇いの船は雇いに戻るだろう。
*
新しい紙を引き寄せた。
恐れながら、と書き出した。
『ヌオモの守りは厚うございます。押すのであれば、船をあと三十と、兵を八千は積み増さねばなりません。積み増した者が、みな戻るとは限りません』
そこまでは、前に申し上げたとおりに書いた。
そのあとに、一行だけ足した。
『それでも、攻めるべきは今かと存じます』
末に、ドゥアルテ・エスカランテ、と書いた。
筆を置いた。
使えるものは使えるうちに。
月末までに、これを陛下の前へ上げる。




