↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

151/173

第151話:大地に留まり世界を正す

 眠れなかった。


 ヌーノは、一晩そこにいた。俺が目を開けるたびに、同じ向きで立ってやがる。


 眠れるわけがない。


     *


 朝、班長だった男が、見張りに向かって言った。


「埋めてやってはもらえないだろうか」


 いい度胸だと思った。縄を打たれた身で頼むことか。


 見張りは、何も答えなかった。


 当たり前だ。埋める死体が、一つもないんだから。


「なら、祈らせてくれ」


 これには返事があった。誰かが走っていって、しばらくして戻ってきた。


「王女殿下がお許しになった」


     *


 白い上着が来た。


 昨日、朝に陣を出ていった一行に混じっていた男だ。やっぱり司祭だった。


 思っていたより歳がいっている。歩き方はしっかりしていた。


 生きてるよな。死んでたら笑えないジョークだ。


 俺たちは座ったまま頭を下げた。縄は解かれない。まあ、そうだろう。


 司祭は俺たちの前に立って、それから少し横を向いた。俺たちを囲んでいる連中のほうを。


「すべては大地より生まれ」


 口が動いた。考えてない。子供の頃から何万回と言わされている。


「大地に帰る」


 声が、揃わなかった。


 最初の何人かで止まって、あとが続かなかった。


 後ろで、誰かが声を上げた。


     *


「帰ってないじゃねぇか」


     *


 あれは、昨日「呪いだ」と言っていた男だな。


 司祭は、怒らなかった。


 男は怒られると思って身構えていたんだろう。拍子抜けした様子だった。


 司祭はゆっくりと歩き出し、ついこないだまで仲間だった死体野郎どもに声をかけ始めた。


「あなたは、苦しんでおられますか」


「苦しくない」


 隣の男にも、同じことを聞いた。


「苦しくないです」


 その隣にも聞いた。片腕が無い男だ。肘から先が、袖ごと無い。


「苦しくありません」


     *


 全員が同じことを言っている。


     *


 司祭が、ヌーノの前まで来た。


 俺は、司祭より先に聞いた。


「ヌーノ」


「なんだ」


「本当か」


 ヌーノは、少し間を置いた。考えているのか、答えを探しているのかは分からない。昔からそういう間を置く男だった。


「痛いのは痛いぞ」


「ああ」


「けど、苦しくはないな」


 俺は、それで済んだ。


 こいつは昔から、都合の悪いことを黙っていられない男だ。飯を余計に食った日でも、自分から白状するような。


     *


 司祭が、俺たちのほうへ戻ってきた。そして、さっきの続きをやった。


「すべては大地より生まれ」


 今度は、誰も言わなかった。


 言えないのだ。囲んでいる連中が、そこに立っているのだから。


 司祭は、待たなかった。自分で続けた。


     *


「大地に留まり世界を正す」


     *


 誰かが、小さく息を吸った。俺も吸った気がする。


 司祭は、もう一度、初めから唱えた。


「すべては大地より生まれ」


「大地に留まり世界を正す」


 声は、揃った。


     *


 ヌーノも、言っていた。


 外を向いたまま、口だけが動いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。