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白王と黒王  作者: ブルースライム
第3章:レーヌ小国群

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150/173

第150話:交代

*ディエゴとヌーノのイメージイラストを後書きに追加しました。

 縄は、手首の前で結ばれていた。


 後ろ手ではない。飯を食わせるつもりがあるということだ。


     *


 俺たちは、陣の隅にまとめて座らされていた。


 鎧は脱がされた。剣も、胴当ても、靴の紐まで取られた。紐は首を括るのに使えると、昔どこかで聞いたことがある。


 風は北から来ていた。昨日と同じ向きだ。


     *


 見張りは、外を向いて立っていた。


 こちらを見ていない。逃げる者が出たら追えばいい、という立ち方だ。


 俺は、そいつらを見ていた。


 兵の見張りには、替えが要る。


 人は立っていると眠くなる。眠くなると座る。座れば寝る。だから半刻か、長くても一刻で替える。俺もやってきた。


 替えが来ないなら、そいつは寝る。寝たところで抜ける。


 朝まで待った。


     *


 誰も替わらなかった。誰も座らなかった。足を組み替えた者も、いなかった。


     *


「ディエゴ」


 隣の男が、小さい声で呼んだ。


「なんだ」


「どう思う」


「そんなのありかよ、ってのが本音だ」


 それきり、二人とも黙った。


     *


 朝早く、陣を出ていく一行を見た。


 多くはない。馬が何頭かと、歩いている者が少し。白い上着も混じっていた。あれは司祭か?


 どこへ行くのかなんて、俺が知りようもない。


     *


 喋るなとは言われていなかったので、流石に小声だが、仲間同士の会話が続いていた。


「呪いだ」


「あれは人じゃない!」


「いや、人だった。俺は顔を見たぞ」


 三人とも、昨日、同じものを見ている。同じものを見て、別のことを言っている。


 別の一人がぼそりと言った。


「俺たちも、ああなるのかな」


 誰も答えられなかった。


     *


 日が傾いてから、北のほうに土煙が上がった。


 戻ってきたのだ。


 けどおかしい。人数がまるで違う。


 朝に出ていったのは、あんな大勢ではなかった。


     *


 列が、続いていた。


 俺は、鎧より先に、歩き方で分かった。


 右の肩が下がる男がいる。荷を担ぐとき右へ寄せる癖で、行軍のたびに笑われていた。


 その男が、列の中ほどを歩いていた。


 ヌーノだ。


 あの細くなったクソみたいな道で、俺より前にいた。そして、俺の目の前で死んだ。


     *


 列は陣の中へ入っていき、そのうちの何人かが、こちらへ回された。


 見張りに、ヌーノが立った。


「ヌーノ」


 思わず声が出た。


 ヌーノはこちらを向いた。


「ディエゴか」


「ああ」


「縄、きついか」


「きつくない」


「そうか」


 いつもの声だった。低くて、少し掠れている。掠れているのは昔からだ。


「お前、それ、痛むのか」


「これか?ああ、痛む」


 ヌーノは、腹のあたりに手をやった。


「けど痛むだけだ。動くぞ」


 こうして普通に会話していることが笑えてきた。夢でももうちょっとマシな内容になるはずだ。


「痛むなら休めよ。次の交代はいつだ」


 それとなくカマをかけてみた。


「交代なんてしないぞ」


     *


 ヌーノは、外のほうへ向き直った。


 セフォーの人使いは荒いらしい。

ディエゴ

挿絵(By みてみん)

ヌーノ

挿絵(By みてみん)

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